今西 竜也 (京都教育大学附属京都小中学校)
2021年11月26日
GIGAスクール構想を受けて、本校でも一人一端末を持って学習することが可能になりました。私たち教師が子どものころにはなかったものですので、どう使っていけばいいものなのかと悩んでいる先生方も多いことと思います。本校も同じく頭を抱えつつではありますが、せっかくの良い道具ですのでよい学習につながるようにと考えています。ただ、使うことばかり考えていると学びの本質がずれないかと心配ですから、本校の英語科では文房具がひとつ増えたような感覚で、学習が少し楽しくなればいいかなという視点でとらえています。本校では学習者用デジタル教科書(教材)を使って学習していますが、その中のいくつかをご紹介します。
2.パノラマを使った活動①
学習者用デジタル教科書(教材)には、教科書の画面にいろいろな太さや色で書き込める機能(書き込み機能)がついています。指を使って書き込むことができ、本校の児童は自分で操作して書き込んだり印をつけたりすることが気に入っています。
指導者用デジタル教科書(教材)には、Lessonのパノラマ(Panorama)の場面や状況を描写した音声“パノラマトーク(Panorama Talk)”を収録していますので、児童はこの書き込み機能を使って、パノラマトークで聞こえた人物や物を探して、丸を付ける活動をしています。
例えば6年生のLesson 3では、パノラマトークの音声からは、an aloha shirt, her sketch book, a computer, a penholder, a photo frame, an animal keychainなどが聞こえてきます。何度か聞いた後、隣の児童と互いのタブレットを見せ合って、同じところに丸がついているか確認します。
その後今度は、教師が指導者用デジタル教科書(教材)を用い、音声を途中で止めながら電子黒板の画面に丸を付けながら確認していきます。
3.パノラマを使った活動②
パノラマトークは何度か聞いていると内容を覚えてしまうので、本校ではオリジナルでパノラマ内の人物のセリフを考え、どの人物が話しているのかを考える活動もしています。
例えば教師が、“Black. What do you have in your hand? Circle with black. Red. You have a great robot! Circle with red. Blue. Can you show me your homework? Circle with blue”と話します。児童はそれぞれを聞いて分かったら、指定された色を使って人物に丸をします。
知っている表現も、まだ習っていない表現も使いながら行うので、正解にたどり着くのに時間のかかる児童もいますが、わからないことにも挑戦する姿勢が大切だと思っています。児童が将来実際に英語でコミュニケーションをする場合には、知らない表現や語彙と出会うことがあると思います。しかしそこであきらめていては話が通じないままですが、わからなくても当たり前、とにかく自分の知っている情報や知識を総動員して挑戦する態度が必要だと思います。また、どうしてその人物が話していると思ったのかという理由をクラスメイトと共有することでも、英語への探究が深まるきっかけになればと考えています。
4.マスクの機能を使ったミッシング・ゲームの活動
本校ではどの学年でもミッシング・ゲーム(missing game)に人気があります。教師が行う場合は、英単語のカードを黒板に張り付けてそれぞれの意味を確認、音声の指導をした後、児童が見ていない状態でひとつまたはいくつかのカードを裏返します。児童は何が裏返ったのかを考えて当てる活動です。これを学習者用デジタル教科書(教材)のマスクの機能を使って行うことができます。教科書のワードチャント(Word Chant)などのページを使って、児童がペアになって互いに問題を出し合います。
黒板で行うと考える間もなく他のクラスメイトが答えてしまったり、児童を前に出して行うと小人数しか問題を出す役割をすることができなかったりします。一人一端末持っているからこそ、ペアで互いに問題を出し合い、じっくり考える時間を確保できます。
5.おわりに
児童が自分自身で音声を流したり、書き込んだりすることで、学習がより活発になります。特にマスクを使ったミッシング・ゲームを楽しみながら取り組んでいます。もちろん正確な発音や使う場面等は人間の指導者が必要ですが、全体のバランスも考えながら、教師が児童全員一人一人と対峙して指導するのが難しい場面でタブレット端末が活躍しています。また、本校では保護者が家で学習を助ける場面でも役立っているようで、家の端末でログインして、学習したページの音声を聞きつつ、学校でやった活動を家でもやりながら学習の手助けをしている家庭もあるようです。
時代の流れが急に加速したように感じられるGIGAスクール構想で、慣れないものには手を出したくないという気持ちもありましたが少しずつ使い慣れてくると、どの場面で使えるかなとアイデアを巡らすようになってきました。もちろん最初は四苦八苦しましたが、考えているより、やってみた方が早く慣れるという印象を持ちました。児童は私たち教師よりもものすごく飲み込みが早いので、最初は電源を入れたりログインしたりするのに時間がかかっていましたが、今になってはチャイムが鳴るまでに準備を完了できる児童がほとんどです。準備ができた児童が自分でいろいろなページを開いて音声を流したりいろいろな機能を使ったりしているのを見ると、英語を学習する姿勢がより強くなったと感じます。まだまだ使いこなせてない部分もありますが、どんどん使って児童と一緒に成長していきたいと思います。
今西 竜也 いまにし・たつや (京都教育大学附属京都小中学校)
16歳で渡米し1年間カリフォルニアとミシガンで英語を習得。京都教育大学教育学部英文学科卒。京都教育大学大学院教育学研究科修了。2006年より京都教育大学附属京都中学校で教員として勤務を開始。京都市立中学校教諭を経て現職。「英語で楽しいことしよう」をモットーに未だ修行中。英語の歌や映画、海外のニュース、オーラル・インタープリテーションなどを使った指導に取り組んでいる。
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