三省堂のWebコラム

スペシャルトーク

アクティブ・ラーニングで授業を楽しく演出しよう

安河内 哲也 東進ハイスクール講師

2017年05月24日

アクティブ・ラーニングで授業を楽しく演出しよう

編集部 今日は,予備校英語講師であり,文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」委員もなされ,アクティブ・ラーニング(以下AL)の第一人者の安河内哲也先生をお招きして,英語のAL型授業について教えていただきたいと考えております。まずいま,なぜALの授業なのか,時代背景とともに教えていただけますか。

 

安河内 従来の日本の英語学習は,外国の知識や技術を吸収して外国に追いつけ追い越せという国是があったので,その目的には,文法を理解して,文献を読み,それらを訳すことが重視され,そのことで一定の役割は果たしてきたという歴史があります。

 

しかし,いまやスカイプを通じて,外国の人たちと会議をする時代です。英語を英語のまま理解して,英語で考えたことをそのまま英語で伝え合う時代です。社会がそうなってきている以上,英語の学習のしかたも変わっていかなくてはなりません。

 

そこで,AL型授業となるわけですが,ALとは何かという定義があいまいで,口が動いていればAL型授業なのか,いや頭が動いているのが(つまり考えているのが)AL型授業なのか,ペアやグループでやるとAL型授業なのか,人によって考え方は違うと思います。しかし,そのようにAL型授業のとらえ方に幅があろうとも,英語はそれらに十分対応できる教科と言えます。そもそも英語はAL型授業でなくてはならない教科だったと思います。それが時代の要請で,文法訳読式や講義型の授業だったりしていたのですが,それがいまの時代になって,ようやく本来の形が浮かび上がってきたといったところです。

 

私は予備校の講師で,以前は講義型の授業をしていました。自分のトークで生徒を惹き付けることにエネルギーを注いでいました。しかし,内心,こういうのは,本来の語学の学習ではないだろうとは思っていました。文科省の諮問委員の仕事をいただいたのをきっかけに,それまでの授業スタイルをガラッと変えました。日本語を主,英語を従で進めていたのを逆転させ,講義型の授業から生徒中心の授業にしたのです。そうしたら,生徒が変わりました。講義型のときは,どんなにおもしろい話であっても退屈そうにしている生徒がいたのですが,生徒中心の授業では,そのような生徒がいなくなりました。

 

編集部 先生は都内の私立学校である麹町学園女子中学校・高校の英語教育のアドバイザーとなっておられて,AL型の授業を推進していらっしゃいますね。この学校の取り組みを例に,英語のAL型授業の一端を教えていただけますか。

安河内 インプット部分では,音声を中心にした授業をこころがけ,教科書の本文の音読を重視しています。デジタル教科書の音声を使いながら,文字あり,文字なし,リピート,サイトトランスレーション,シャドーイング,オーバーラッピング,穴埋め音読など,Listening とReadingをふんだんに行います。注意したいのは,字面だけを追った音読にならないように,活動の後に,内容の理解度を自己評価でチェックします。

 

アウトプットに関しては,読んだ内容について,1分間程度のスピーチをさせたり,短いエッセーを書かせたりします。内容によっては,賛成か反対か,その理由についてevidenceを示しながら,意見を述べるような課題を与えることもあります。それらのことを,まず自分のメモをとらせ,次にペアまたはグループでスピーチをしあい,グループ代表がスピーチをクラスに向けて発表,最後は各自がエッセーを書く,といった流れで,個→小グループ→クラス全体→個のようにさまざまな形態を織り交ぜながら,アウトプットの活動に取り組ませます。

 

文法の解説や本文の構造的な分析,日本語訳などは,プリントを渡してしまって,自力で学ばせるようにしています。自分のわからない部分はどこかを認識して,プリントで確認したり,調べたりする,これも一種のALだと思うんですね。そして,授業では,生徒が大勢いることを活かした活動をするようにしています。

 

評価についてですが,定期試験は授業が教科書を徹底的になめつくすようにやっているので,教科書からしか出題しません。ただし,範囲はいままでやったところ全部としていて,学期や学年が進むにつれて,範囲が広くなっていく,という具合です。積み重ねがいかに大事か,生徒は骨身に感じています。

 

ライティングの評価ですが,文法やスペルなどのチェックはALTにもお願いします。英語科の教員は,統一のルーブリックを作り,生徒と共有します。そして,それに基づいて作文のパフォーマンスを観ていきます。

AL型授業に取り組むようになって,成果が目に見えて表れてきています。資格試験等のスコアや合格数が一気に伸びました。

 

編集部 AL型授業をすすめるにあたって,コツやTipsを教えてください。まず,教科書はどう扱うかなどについて。

 

安河内 まず,教科書のレベルは生徒のレベルにあった適正なものを選ぶ必要があります。高めのレベルのものの長文読解をしていっぱいいっぱいになるのではなく,4技能型の授業ができるようなものを選びたいところです。それ以上のものを望む生徒がいるとすれば,それは個別に対応して,自力で学ばせるようにして,多くの生徒がその教科書が目指すレベルに達成させるのが,学校の役割だと思います。いま,麹町学園では標準レベルの教科書MY WAY English Communication(三省堂)を使っていますが,これをしっかりやれば,センター試験や準難関までの受験は全く問題がありません。単語集も付属しており,ALには最適です。おすすめの教科書です。

 

編集部 英語で授業ということについては何かサジェスチョンはありますか。

安河内 AL型授業では,教師は自分が話すのではなく,生徒に話させる,生徒に汗をかかせるようにしかけるのが仕事です。「しゃべり屋」から「しゃべらせ屋」になるように意識してほしいです。余談ですが,テレビの語学系バラエティ番組の司会をやっているのですが,乃木坂48のみなさんに英語のアクティビティをやってもらっています。司会としては,自分が目立つのではなく,彼女たちにいかに活躍してもらうかを意識して声掛けしたり,動いたりしなくてはならず,とても勉強になります。授業での教師と生徒との関係もそんなことではないでしょうか。

 

それと教師は授業をうまくやることをめざすのであって,英語をうまく話すことが目的ではないはずです。英語は発音や文法の間違いを気にしていては,話せません。ハードルを下げて,生徒のレベルに合わせて,でもどんどん使う,というつもりで取り組まれたらどうでしょうか。授業で話すのに慣れてくれば,おのずと英語を話すのが上達していきます。

 

編集部 学習環境についてはどうでしょうか。

 

安河内 AL型授業で欠かせないのは,ICTツールです。昔ながらのチョーク&トークから一歩でて下さい。これらを使うことで一気に授業に立体感が生まれます。プロジェクターで投影すれば,板書の時間が省け,生徒の顔が上を向き出します。さらに,教師の英語もよいのですが,やはりネイティブの音声を聞かせたいですよね。デジタルテキストを使えば,絵,文字,音が一体となって提示できます。

 

編集部 最後に,いままでの授業から一歩踏み出したいと思っている先生がたに,先生からメッセージをお願いします。

安河内 先生がたには,授業を楽しんでもらいたいです。授業の準備をすること,そして授業を実践することを楽しみましょう。先生が楽しめば,生徒も楽しく英語に取り組みます。授業が楽しければ,彼らは,授業外でも英語を使うことを楽しむはずです。

先生がたを応援する意味で,次の3つの言葉を贈りたいと思います。

 

Enjoy making mistakes.(間違えを楽しもう)

Be more self-confident.(もっと自信を持とう)

Speak in a loud voice.(大きな声を出そう)

(「高校英語教育2017年夏号 別冊」教科書を使ったアクティブ・ラーニング 2017/6発行より転載)

プロフィール

安河内 哲也    やすこうち・てつや 東進ハイスクール講師

東進ハイスクール講師。学習参考書の執筆,講演のほか,英語教育記事のサイト『えいごism』の運営やスピーキングテストE-CATの開発など,英語学習者のために精力的な活動を展開。

高等学校英語のトップはこちら

バックナンバー

    

アクティブ・ラーニングで授業を楽しく演出しよう

2017年05月24日
安河内 哲也

詳細はこちら

    

ページトップ