八木 陽子 ファイナンシャルプランナー
2023年12月19日
「投資」と聞いたら、どのようなイメージを抱くでしょうか。
昨年夏、親子のお金講座を開催した際に、保護者約80名にアンケートをとってみました。投資のイメージはどんなものかという、自由記述スタイルです。その回答をみると、ネガティブなものが多く、唖然としました。
・危険なリスクがあるのではないのか、わからないから怖い
・失敗してお金を失うイメージ
・借金とかの悪い意味だと思った!
・リスクの大きいもの。お金に余裕がある人がやるイメージ
・始めてみたいが、どれがよいかわからない
・難しくて怖いイメージで、素人は手を出さないほうがいいもの
「子供にお金の知識を身につけてほしい」と親子マネー講座に積極的に参加されている保護者が、投資についてマイナスイメージを抱いているのです。お金とは何か、投資はそんなに悪いものなのか、としみじみと考えさせられるできごとでした。
そもそも投資とは何かというと、辞書に掲載されている定義では、「将来的に資本(生産能力)を増加させるため、現在の資本を投じる活動を指す」とあります。「自己研鑽や人間関係においても使われる」とも書かれており、決して悪いイメージを喚起させる言葉ではありません。むしろ、投資とは、成長を期待させる言葉といってもよいのではないでしょうか。
では、なぜ、日本社会では、投資が悪いイメージを抱くものに変わったのかというと、私は「お金」について話さない文化が一因ではないかと思います。普段余り話題にしないテーマでも、事件が勃発したときだけ話題になります。投資詐欺にあった、儲け話が嘘だった、借金が増えたといったニュースには、「堅実に資産を増やした」という事実よりもはるかにメディアも飛びつきやすいです。投資そのものをよく知らないまま、悪いイメージをもっていないでしょうか。
投資とは、成長に期待するもの。私は、子供たちに株式投資を教える際は、「日本の将来のために、応援したい会社を選んで、成長してもらおう。」と話しています。子供たちは、身のまわりの大好きな会社名をありったけ教えてくれます。お菓子の会社、文房具の会社、アイスクリームの会社、回転寿司の会社……。その応援したい会社は、本当に、自分たちの大切なお金を預けるに値する経営をしてくれるかな? その会社が成長したならば、自分たちにも利益があるけれど、社会全体も豊かにしてくれる。それが、本来の株式投資だと伝えています。
投資や資産形成が必要となってくるこれからの時代、大人たちの意識を変えていくことが、日本という国が成長できるキーワードかもしれません。
(『ことばの学び』No.18 2023年9月発行より転載)
八木 陽子 やぎ・ようこ ファイナンシャルプランナー
株式会社イー・カンパニー代表取締役。キッズ・マネー・ステーションを主宰し、さまざまな学校で講演や授業を行う。監修した書籍に『10歳から知っておきたいお金の心得』(えほんの杜、2019)など。NHK「あさイチ」「ウワサの保護者会」などメディア出演も多数。
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