三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第27回:頭の中はアクティブに

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,大妻中学高等学校

2020年05月12日

工藤

今月も,English Coffee Break,始めていきましょう。前回は,クラス全体を授業に参加させるためにはどうするか,ということについて話しました。

 

津久井

授業参加へのハードルを下げることや,先生の英語に対する姿勢を意識することが大事っていう話だったね。

 

工藤

今回も,前回に引き続き,生徒が授業に参加するために,というテーマについて考えていきたいと思います。

「逃げ」のshare

津久井

授業の中で生徒が主体となって動く活動の1つに,ペアワークやグループワークがあるよね。

 

工藤

最近は,“OK, let’s share!” や ”It’s sharing time.” とか言って,お互いが考えたことをshareする時間を取っている授業,よく見かけるよ。

 

津久井

個人作業だけじゃなくて,スピーキングやライティングのアウトプットが重視されるようになってきているし,先生がたもそれに合わせて授業スタイルを変えていってるよね。でも,授業を見ていると,発問からペアワークを始めるまでが早すぎるなって思うことがあって。

 

工藤

あるある。生徒が1人でしっかり考えた結果行き詰まった時に,ペアワークやグループワークで他の人の意見を取り入れるのは,いいことなんだけどね。

 

津久井

そうじゃなくて,生徒がちょっと困ってるような動きを見せたら,すぐペアワークに移ってしまうパターン。これは,違うんじゃないかと思って。

 

工藤

生徒がまず1人で考える時間が十分与えられていなくて準備が足りていない場合,相手に伝える情報はまだないのに,そのままペアワークに突入してしまう生徒もいるってことだよね。それはshareとはいえないんじゃないかな。なんだろう,逃げのshareっていうか。

 

津久井

生徒が困っていたらすぐにペアワークをさせることは,生徒がとりあえずは話してくれるから先生としては安心できるけど,どちらかの生徒が持っている答えを渡すだけの作業になってしまうのは,よいペアワークとはいえないね。2人とも何を言えばいいのかわかっていない場合は,日本語で「何すればいいんだろうね…」って言ってたりするし。あるいはお互い間違ったことを確認し合ってることだってあるし。

 

工藤

津久井さんが言ったような状況だと,頭が働かないペアワークになってしまってるんだよね…。本来のアウトプットとはかけ離れてしまってる。

頭の中をアクティブにしよう

工藤

まず前提として,なぜアウトプットが大切なのかというと,頭の中で自分の言いたいことを整理するプロセスがあるからなんだけど。つまり,声に出すといってもただの音読じゃなくて,頭を働かせて考えることがアウトプットの第一歩なんだよね。そう考えると,「話そうとしていることを頭の中に用意できていれば,それを音声化しなかったとしても,スピーキングの最初のプロセスはクリアしてる」っていう発想にもなるし。

 

津久井

さっきのケースだと,この第一歩を踏み出せないまま,いきなり話してるっていう状況なのか。それは生徒にとって難しいよね…。

 

工藤

そういうこと。クラス全員の頭がしっかり働いて,アクティブな状態になることが第一。ペアワークやグループワークは,その次にあるものだからね。

ほかにも,生徒を指名してから,先生が質問をするのではなく,先生が質問してから指名するべきだって,当たり前のことだけど,よく言われてるよね。これも理由は同じで,質問する前に指名しちゃうと,指名された生徒しか答えを考えない。他の生徒は,答えを考えようとしないから,頭を働かせる機会を与えられてないことと同じになってしまうでしょ?

大事なのは,先生が質問したらいったんポーズを置いて,生徒全員が,こんな英語を言おうかなって頭の中で組み立てることだから。その後に,指名された生徒が言った英語と自分が用意した英語を比べてみたり,正しい言い方はこうだよって先生が言ってあげたりすれば,そこで学習が促されるよね。

 

津久井

この場合は,生徒が考えている間の静かな時間に,先生が耐えることも大事なのかもしれないね。間をつなごうと英語で喋ってしまったり,日本語で解説を入れてしまったりすると,生徒の思考の邪魔になることもあるから。英語で授業をすることに慣れている先生ほど,ついついシンキングタイムに話してしまいがちな気がする。

 

工藤

そうだね。先生が英語で話してインプットを与えるのはとてもよいことなんだけど,たまには,じっくり考える時間も取ってあげたいね。自分も間に耐えられないタイプなので,余計なことを言わないように気をつけてる。

 

津久井

先生の言ってることは,生徒からすると良くも悪くも気になっちゃうからね。

 

工藤

もちろん生徒が質問してきたら答えるけど,何も聞かれなければいったん黙って,生徒の思考を見守ることも必要だと思う。英語の授業だから,生徒同士で話してもらわないといけないのは確かなんだけど,話させなきゃということばかり考えて,静かな状態を徹底的に避けようとは捉えない方がいいのかもね。

 

津久井

全く同感だね。後は当たり前だけど,生徒がアウトプットをすることで,表現上の誤りがよく聞こえてくるはずだから,英語自体の学習として表現や文法,語彙の復習をタイミングよく行うことも大切にしたいね。

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
大妻中学高等学校,「NEW CROWN」編集委員

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在大妻中学高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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