三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第10回:英語が得意な生徒への処方箋

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2018年06月04日

英語が得意な生徒への処方箋

工藤
前回は,個別指導をテーマとして,「クラスの1人1人が何をしているかを把握しよう」という話をしました。では,把握したところでどうすればいいの?という話を引き続き今回はしていきたいと思います。
いろいろな先生方の指導案を見ているけど,「生徒観」のところに,「英語が得意な生徒への指導案」を書いている人って驚くほど少ない。そうじゃない?津久井先生。

 

津久井
前回も話したけど,現場の先生方の認識は,「個別指導=英語があまり得意でない生徒への指導」になっていることが多いよね。

 

工藤
謙遜というか,自分が「できる生徒を育ててしまった」というのを言いづらいっていうのもあるのかもしれないけどね。

 

津久井
英語が得意な生徒の指導は,別に手取り足取りじゃなくてもいいわけだから。「次はこういう活動をやろうね」とか,「こういう場合はこうやったらいいよ」っていうのを言う程度でもいいのかもしれない。
自分の場合は,たとえば,授業で音読を3ステップくらい用意しておいて,早く終わった生徒は先に行けるように全部を黒板に書いておく,とかをしているかな。

 

工藤
3ステップ全部を,最初から生徒に提示してあげるんですか。

 

津久井
提示しちゃう。あとは途中で追記するっていうこともある,最近。「展開がちょっと早いぞ」と思ったときは,ステップ4を足す。

 

工藤
生徒の反応見ながら,指示を変えていくってことだよね。

 

津久井
そうそう。

 

工藤
自分は,高校で教えていたとき,英語の得意な生徒たちがタスクをすばやく終えて塾の問題集をやったりっていうのを見て,工夫しなくちゃなって感じたのを覚えている。そのときにやっていたのは,たとえばディクテーションなんかの活動に使うプリントをA面・B面って二種類作って。A面のほうが空欄が多くて,B面のほうが空欄が少ないとかって少しレベル差をつけるんだよね。まあ,今考えるとたいしたアイディアではないんだけど,まあ…。
見た目は同じことをやってるけど,ちょっとレベル差があるような出し方をする,というようなことができるといいよね。

 

津久井
面白いね,それ。

最終的には,「次の課題」を自分で見つけてほしい

工藤
でね,「A面かB面か,どちらでも好きなほうを選んでいいよ」って言うと,苦手な生徒は当然楽なほうに行って,得意な生徒も最初は楽なほうを選ぶんですよ。でもね,そこでこっちがあんまり言わないほうがいいの。自分も最初は「お前はこっちだろ」とか言ってたんだけど,そうすると活動の入りが鈍くなったりして…。でもね,本人が選んだほうをやらせていくと,生徒たちはバカじゃないから,当然簡単なほうをやってても意味がないってわかってくるわけですよ

 

津久井
つまんないって思うんだね。

 

工藤
そう,つまんないし,「どうせやらなきゃならないんだったら,チャレンジングな方をやって鍛えたほうがいい」という発想に普通は大体の人は何回かやるとなってくるから。それでよくて,そのときに「気づいたじゃん」とか言ってあげればいいのね,そこで。
要は,最初にやるほうを指示するんじゃなくて,やっぱ待つことが大事なんだよね。

 

津久井
今工藤先生が言ったことはすごい大事で,本当そうなんだよね。「自由にやっていいよ」とか,「選んで良いよ」といって結局選ばせないんだったら,最初から選ばせないほうがいい。

 

工藤
選択肢をあげて選ばせたってことで責任持たせてるわけだから。まあ,でも,口を出したくなるよね。

 

津久井
本当,なるよ。
自分も,最近は生徒に「教師が指示した以上のことをやっていることに一番価値がある」って言っちゃったから。でも,口出ししないって難しいんだよね。「指示した以上のこと」って言ってるけど,本当はなんでもいいわけではなくて,ある程度望ましい方向には沿っていてほしいっていう思いもあるんだよね。

 

工藤
レールの中でのはみだし,レールの中で先に行くのはいいけど,違う電車に乗ってほしくないんだよね。

 

津久井
こんなことを最近考えていると,単元計画ってやっぱり大事だなあと思うようになって。それは,やっぱり1時間じゃなくって,まあ理想的には1レッスン分,少なくとも2~3時間先までは見通しておく必要があって,そうじゃないと早くタスクが終わっている生徒に何か課題を与えようしたときに,脈絡がなくなる。でも,単元が見通せていれば,次の時間に役立つことをさせよう,とか,そんな観点で課題を渡せるから

 

工藤
そこに行き着くよね。

 

津久井
本当は,自由になんでもいいよって言ってあげると,生徒は本当に想定外のいろんなことをやるから…。それを見て,認めてからにしないと,収束のさせ方もわからなくて,俺がこう言ったのはこうやるっていう意味だぞってしちゃうと,やっぱその何て言うかな,先生の指導のバリエーションとか個別支援のバリエーションが減っちゃう気がして。
そんなステップを踏んで初めて,生徒も教師も「じゃあこういうふうにやろう」とか,「こういうふうに声をかけよう」とかってわかってくるんだけど…一朝一夕には難しいよね。指導や支援の柔軟さっていうか,多様性みたいなことは,いまでも自分もよく考えるテーマだよ。

 

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

 

 

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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