三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第8回:音読指導2「何回?」「何を?」「どうやって?」

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2018年04月02日

「何回」読めば,音読は達成?

工藤
前回(音読指導1)で,音読の目的等についてたくさん話しましたが,今回は音読の実践的な面について話したいなと思います。
前に津久井先生が,「音読は,授業で習ったことの内容理解にも効果がある」って言っていたけど,津久井先生は具体的にどうやって宿題にしているの?

 

津久井
「授業でやったことを3回読んでね」って言っている。これなら,3回やっても6分位で終わるし負担も重くないかなって。ほかのことは授業でやるから何もしなくてもいいんだけど。

 

工藤
その3回の根拠って,何かあるんですか。

 

津久井
それは…なんだろう。まあ,本当はレベルに応じて何回が最適かは違うのだろうけど。
自分の場合は,学習時間の長さかなぁ。家庭学習として,音読が10分超えるとちょっと,と思っていて。

 

工藤
そうなんだよね。本来的には,回数が目的になるのは違うのだろうけど。
でも,じゃあ回数を指標としないで,「覚えるまで読め」っていうのも生徒の自己判断になっちゃうし,覚えればそれでいいのかっていうのも少し違うかなって思っている部分もあって。音読の課し方については,いつも歯切れが悪い感じに自分はなっちゃうんで,津久井先生はどうしてるのかなって,聞いてみたんだよね。

 

津久井
その問題意識は,自分にもある。1回目は授業を思い出して,2回目は内容を思い浮かべて読めないところをCDで確認して,3回目で仕上げの読み,みたいになればなあ,というイメージはあるけれど。

 

工藤
回数っていうのは,教師にとってはわかりやすくて,自分も高校で教えていたときも今も,「3回読んで」とか「5回読んで」っていう指示は比較的出しちゃっているんだけどね。

 

津久井
あと,音読そのものの目的や効果とは少し離れるのだけど,音読をマラソンみたいにしていて「マークを5つ塗りつぶして,5回読めた!」,っていう達成感がある生徒がいることも考えなくちゃなとは思う。そんな生徒には,「じゃあ次は5回じゃなくてもいいから,登場人物の感情が伝わるような読み方を3回してごらん」って,少しずつレベルアップさせてあげることもできるし。

音読の意義を伝え,効果が実感できる活動の設定を

津久井
まあ,ただ,現状いろんな学校を見ても思うことは,驚くほど高校生・中学生は音読してない

 

工藤
恥ずかしい,とかがあるのかな?

 

津久井
あとね,たぶん,何でやっているか意味がわからないんだと思うだから,そこをきちっと伝えていかないと。「read and look upをするとチャンクや文構造などを身に着けるのに効果がある」,「shadowingをすると,音読と違うけどリスニングのスキルにつながる」とか。

 

工藤
自分にどんな力がつくか伝えるってことだね。

 

津久井
そうそう。音読の向かう先の方向を示して,自分で力が足りないと思うところがあるならこういう方法があるよね,って話してあげたい。なので,その前提として,いろいろな種類の音読を,授業でちょっとやっておくってことって大事な気がする。

 

工藤
うん,いろいろな種類を見せてあげることも大切なんだけど,きっと,多くの先生が一番やっているのは,”Repeat after me.”っていう,教科書のchorus reading。これも,先生方ちゃんと意図を持ってできているかな。

 

津久井
たしかに,以前ある調査をしたときも,それはほとんどの先生が実践してるって結果だった。

 

工藤
そうなんだけど…最近よく見る授業は,先生方が音読の様々な指導技術を勉強されたことで色々な手法を実践しているのだけど,最初のchorus readingがすごくさらっとしていて,read and look upやshadowingなど高度な音読活動にどんどん行ってしまっている授業。chorus readingをちゃんと行っていないと,個人レベルで見るときちんと読めていない生徒も結構いたりする。また,shadowingも,本来は聞こえてくる音声を瞬間的に処理して,同じ英語をすぐに音で発してみる,という活動のはずだけど,教室で一斉にやっているので,流れる音声が聞こえにくくなっていて,結局生徒は頭の中にある覚えた英語に1回アクセスして,それを発声しているということになっていたりする。これだと,本来のshadowingの意義はなくなってしまっているかな。

 

津久井
なるほど。

 

工藤
あと気になるのは,”Repeat after me.”って言って,先生が読み終わったあと,生徒がリピートしているんだけど,先生が次の文を見ているから,生徒の音を拾おうって感じが全然ないっていう。それはたぶんダメな指導で,ちゃんと生徒が声を出しているかを確認しなきゃいけないし,40人クラスにいたら20人がけっこう大きな声で読んだらそれなりに読めている感じになるんだと思うんだけど,本当は残り20人は読めていないはずで,そこをちゃんと見抜かなくちゃいけない。半分読めてなかったら危険ですよね,本当は。
口がちゃんと開いているか見るために,教科書を前に持たせて読ませるっていうのは,意識している先生ならではの実践だよね。

 

津久井
手法を広げるにしても,基本のchorus readingをしっかりやってからでないと,ってことか。

 

工藤
さっき津久井先生が音読の意義を説明するって話してたんですけど,それも本当に大事で,でも,自分は説明だけじゃなくて実感を伴わせることも大事だと思っていて
音読のあとに,その効果がわかるような活動を設定して,「ほらさっきがんばって読んだからスラスラできるようになったじゃん」とか「自分のことも,単語を入れ替えたらできるじゃん」っていう活動がないと,たぶんただやらされているだけってなってしまう。

 

津久井
なるほどね。

 

工藤
音読はあくまで言語活動ではないのだけど,音読の次にくる活動のベースであって,活動の助走として捉えないといけないと思うよ。そうすると,最後にやる言語活動から逆算して,「どのへんを注意して音読しようかな」とか,「どんなバリエーションでやろうかな」っていう思考になると思うし。音読で授業終わっていたらちょっと残念だし,効果が感じられなくて,生徒も音読しなくていいやって思っちゃうとしたら,すごく怖いと思うんだ。

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

 

 

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

『NEW CROWN』の詳細はこちら

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