三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第2回:言語活動の最大の壁「場面設定」は,絶対必要?

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2017年10月02日

工藤:

はい,自由気ままに対談するEnglish Coffee Break,今回は「場面設定」をテーマに進めていきたいと思います。

「場面設定」とは,言語活動をするときに,コミュニケーションの相手・目的などを意識した活動を行うために,実際に起こり得るコミュニケーション場面を明確に設定することですね。でも,かなり準備に時間がかかる一方で,作りこむと逆に不自然になる…など,悩みを抱える先生も多いそうです。

 

津久井:

「すべてにおいて場面設定が必要か」というのは,非常に痛い質問ですよね。うーん…。

Write to Learnか,Learn to Writeか

工藤:

ひとつ,言語活動の目的,というところから考えてみると,「何のために」言語活動をしているかっていったら,常に「相手や目的」を意識したものばかりではないよね。「語彙や文法を定着させるために」,ライティングの手段を借りているっていうこともあるじゃないですか。

 

津久井:

そうだね。

1つ1つの文法を理解するために,実際の活動を通じてその中で学習する,というのはよくあること。

 

工藤:

これは,自分自身の言葉ではないけど,例えばライティングでよく言われているのは,Write to Learnなのか,Learn to Writeなのか。

 

津久井:

うまいね,それ。

 

工藤:

そうそう。わかりやすい。

だから,それでいう,Write to learnの考え方で,コミュニケーションやライティング自体を目的にしていないような場合は,「あまり場面設定しなくてもいい」って考えている先生も多いよね。その目的のためには,「誰に書くの」や「何の目的で」のようなものがあると逆にやりづらいっていう。

 

津久井:

おっしゃるとおり。

いま工藤先生がおっしゃったように,本当にすべてに設定しないと学習の効果がないか,というと,そんなことはない。実際,中学校では言語材料もそろっていないので,厳密に場面設定して実践しようとすると,やりづらいことは事実。もちろん,生徒たちにとって身近でオーセンティックな場面設定が出来れば,その方がいいとは思うのだけれど。

本当に言いたいこと・書きたいことを表現しようとすると,未習の語彙・文法が必要になってきてしまうこともよくあるので…。

 

工藤:

高校ではどうしているの?

 

津久井:

高校だと,大学の前段としてのトレーニングって思うと考えやすい。大学に行けば,本当に身近に留学生がいて,その人に日本の文化を紹介しなくちゃいけないっていうのがイメージしやすいから,高校生も「確かに,大学に行ったら,こういうシチュエーションありそう。日本の文化紹介してって言われて困るのが嫌だから,じゃあいま練習しておこう」というマインドになりやすい。

 

工藤:

実践の場面が近い将来にあるかもしれないから,動機が生まれる。

 

津久井:

そうそう。だからやりやすい。

中学では,言語材料もそろっていなくて将来も遠いから,たくさんの労力をはらってALTの先生に来ていただいたり,高校よりだいぶ入念に準備をされている印象がある。

けど,どんな言語活動でも全部にそれを準備する必要があるかっていうと,難しいなあと思っちゃう。

一方で,「場面設定」のメリットとは

工藤:

現実的に,すべての活動で入念な準備をして…というのは時間もかかるし難しい。

ただ,NCでいうProjectのような取り組みは,定期的にはあったほうが絶対に,いい。

 

 

津久井:

「ああ,こういう場面で実際に使うんだ」っていう気づきは大切だよね。

準備するのはすごく大変だけど,ちゃんとネイティブの人に通じたり,手紙の返信が来たり,ほんの一瞬でもスカイプが通じたり…そういうことから得られる絶大な波及効果はあるから。これは,逆に中学生の方がインパクトは大きいと思う。

全部の活動に場面設定を作りこむのは難しいとしても,何ヶ月に1回かは確実にやるべきなんだよね,大変でも。

 

工藤:

「やると決めたら絶対にやる」みたいに考えすぎないほうがいいのかも。そういう風に思いすぎちゃうと,「全部やるのは無理⇒やらない」みたいなことになってしまうともったいない。0か100かというよりも,いい意味でおおらかさみたいなものがあるといいのかもしれないですね。

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,

 工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

(掲載:2017年10月2日)

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

『NEW CROWN』の詳細はこちら

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