三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第12回:新しい「個別の知識やスキル」の学び方

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2018年08月06日

「個別の知識やスキル」は見えづらくなったけど,「必要じゃない」わけじゃない

工藤
はい,津久井&工藤の「English Coffee Break」,第12回は,前回に引き続き大学入試改革に関して話をしていこうと思います。
前回は,「出題傾向が知識・技能を統合した形へ移行する!」というアプローチをしたので,今回は逆に,ボトムアップというか,この変化の中で語彙や文法といった個別の知識,リーディングなどの個別のスキルはどう学習していくか,という側面に注目したいと思います。

 

津久井
「思考・判断・表現」というキーワードで語られると,これまで大事にしてきた「語彙」「文法」「精読」は,もういらなくなってしまうのではないか…と思われる方もいらっしゃるかもしれないけど,そうじゃないですよね。

 

工藤
うん,「思考・判断・表現」を大切にすると言っても,これまで大切にされてきたことに価値がなくなるわけじゃないね。

 

津久井
自分も共通テストにじっくり取り組んでみたけど,リーディングなんかけっこう量が多くて。ここ何年か言われている,わからないところをうまく飛ばして曖昧さに耐えるっていう読み方も必要だけど,実際問題を解いてみると,しっかり精読をしなくちゃ解けない問題もたくさんあったよ。さらっと一回読んだだけでは詳細は頭に入らないから,もう一回しっかり意味を取りながら読みにいかなくちゃいけない場合も。

 

工藤
そうだね。
全体をスキミングみたいにざっと読んで把握するばかりじゃ解けない問題もあるね。

 

津久井
だからね,ちゃんと意味を理解しながら読むっていうやり方も絶対に必要だし,難しい文構造のところでは,文法の知識を使って読み解くことももちろん必要

 

工藤
この前も言ったけど,「統合されている」っていうのは,分解すれば個別の知識やスキルが同時に問われているっていうことだよね。見た目上,「文法の問題」「発音の問題」には見えなくなっているけど,それらの知識がなくて解ける問題では決してないし,ある程度の語彙力がないと,いくらわからないところを飛ばしながら読んだとしても,内容は頭に入ってこない。英文は,分解すれば一つ一つの語彙で出来ているわけだから。

 

津久井
だから,個別の知識の部分が求められない,ってことでは決してないんだよね。

「個別の知識やスキル」の学習は,「そのままでいい」わけでもない

津久井
でもね,ボトムアップの考え方というか,細かい読みの「上に」全体の読みがあるっていう,一方通行の考え方だと苦しいと思う。

 

工藤
全部訳しながら読まなくちゃいけない,とか,一語一句聞き取れなくちゃいけない,とかのことだね。うん,一方通行じゃなくて,複数の読み方を柔軟に使い分けるイメージがいいっていうのは,自分も賛成。

 

津久井
どうしても受験期になると,一点でも落としたくないから,一文一文を分析しながら精読して,その結果,英文のインプット量ががくんと落ちたり,読むスピードが落ちちゃったりしている生徒をよく見る気がする。「内容を正確に捉えるために一文一文を丁寧に読む」っていうのは,その通りなんだけど,全文が完璧でなければメインポイントが捉えられないわけではないから。やっぱり,両方できるように,両方向からの読みを練習させてあげないと。

 

工藤
単語も,まず膨大な量を暗記することがマストかと問われれば,難しいところだよね。
確かに,ある一語の意味を知らないと英文の全体の意味が取れないっていうことは,ままある。でも,例えば,1000語のリストがあるとして,1000語全部がそういう必要があるかと言われれば,そうでないという気もする。

 

津久井
そうなんだよ。
どの単語が英文のキーワードとして出されるかなんてもちろんわからないから,生徒たちは膨大な量の語に対して一律のエネルギーをかけてしまうんだよね。
でも,自分は,その1000の中から10出るか出ないかわからないものに莫大なエネルギーをかけるのであれば,英文をまず読んで,わからなかったときに調べてみたりして,意味や構文の発見があるほうが健全な気がする。単語は単語帳丸暗記だけで対応っていうのは,本当に記憶力が高い子だけが吸収できるような学習法な気がしてしまうんだよね。

 

工藤
それもさ,さっきのリーディングの話と一緒だよね。
「英文を一文一文読むことが必要な問題も依然あるけれど,その方法だけじゃスピードも落ちる」「単語をリストにして語彙を積み上げていく方法もあるけど,それだと必要な時間のわりに効果が薄いかもしれない」。
やっぱり,個別の知識やスキルをボトムアップで積み上げていくルートと,実際に統合された問題に出会って,そこから必要とされる知識やスキルに戻っていく,二つの方法を意識して学習ができるといいよね。

 

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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