三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第7回:音読指導1「何のために?」「何を?」

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2018年03月05日

音読は,「意味がわかってから」が基本!?

工藤
それでは今回も,津久井・工藤のEnglish Coffee Breakはじめていきたいと思います。
さて,今回は「音読」を取り上げてみようかな,と思います。
というのも,先日,学生の指導案を見ていて,音読について気になることがあって…。実習生に多い傾向なんだけど,出てくる指導案を見ると,いつもかなり早めのタイミングに音読があるんだよね。「音読は意味がわかってからが基本」みたいな話は何度もしているんだけど…。

 

津久井
自分が担当した実習生もそうでしたよ。
「まず読んでから」っていう中高での自分の体験が染み付いているのか,「とりあえず音読」という授業はまだまだあるような気がするね。

 

工藤
2015年にベネッセが行った『中高の英語指導に関する実態調査2015』(※)を見ても,「授業において行う指導方法・活動」の一位は音読で,つまり, ほとんどの先生がやっているってことだよね。ってことは,逆に目的とか方法もバラエティーがたくさんあるっていうことで。
だから,授業のウォーミングアップというか,「みんなの声がそろって出て,余韻が教室に響くのが気持ちいい」っていう感覚を目的に音読している先生には,「意味を理解して」みたいなアプローチは筋違いになってしまうんだけど…。
(※)http://berd.benesse.jp/up_images/research/03_Eigo_Shido.pdf 

 

津久井
でも,やっぱりね,基本的に何だろう…。
先生の説明を聞いたり,自分たちで意味をとったりして理解した内容を音声化するっていうのは,すごく大事なことだと思うよ

 

工藤
うん,そうだよね。

 

津久井
音読って,理想的には「自分で読んでいる音に意味がのっかること」や「意味と音がマッチングすること」に効果があると信じているというか信じたいし。まぁ,最初は大事な単語を強く読むとか,驚く場面ではその感情がわかるような感じで読む,とかのレベルなのかもしれないけど。

 

工藤
言語は意味を伝えるための道具であり,その言語の基本は「音声」と考えれば,「意味と音のマッチング」を行うことは,授業でも重要な作業ってことですよね。なので,話は戻りますが,意味の確認ができていないのに,音読するのはやはりおかしいかと…

 

津久井
あと,授業で学習した内容の定着って考えたときにも,音読っていいなと思っていて。
英語にすごく意欲的な一部の集団を除いて,その手前にいる生徒たちには,教科書ガイド見て和訳写したり,発音もわからない単語をたくさん練習したり,問題集を解いてわからないからと答えを写すような学習をするんだったら,一番安くて効果的とは言い切れないかもしれないけど,よっぽど音読をしたほうが,内容の確認や定着はできる気がするよ。

「何」を音読させるべき?

工藤
ちなみにいま,津久井先生は学校で何の単元を教えている?

 

津久井
今年は1年生も教えていて,いまは「Roots and Shoots」(※)教えているよ。チンパンジーの話。
(※)CROWN English CommunicationⅠの単元。

 

工藤
ってことは,生徒はチンパンジーの内容を音読しますよね。

 

津久井
してる。

 

工藤
つまり,チンパンジーの内容を音読して,チンパンジーの内容を覚えるってことですよね。

 

津久井
うーん,暗記目的ばかりではないけど…まあそうとも言えるよね。

 

工藤
そこなんですよ!
この前,海外の研究者に「日本人は,なぜ自分の考えや経験などではない,givenの内容を音読するのか」って聞かれたときに,答えが難しくって…
だって,いまチンパンジーの内容の英文を覚えても,将来生徒がチンパンジーの話を英語ですることはたぶんほとんどないじゃないですか。って考えたら,「なぜgivenの内容を音読するのか」って言われたときに答えるのが自分も含めていつも難しくて。

 

津久井
まあ…たしかに,内容に関してはそうだね。

 

工藤
津久井先生が言うように,やっぱり音読すると,文字を音声化できるようになったり,いい発音ができるようになったり,文構造がだんだん身についていくんじゃないかってそのときにちょっと言ったんだけど,結局,今後,英語を実際に使う場面を考えたときに,ほとんど言うことがない内容をたくさん音読して意味はあるのかって言われたときに,うーん,難しいな,と思ってしまった。

 

津久井
なんだろ,確かに,最終的に自分が言いたいことを話すためには,まずは自分の言いたい内容が英語にならなきゃいけないよね。

 

工藤
そうだね。

 

津久井
そうなんだけど,たとえ,それをやってみたとしても,文構造を持たない非常にプレーンなものを繰り返すことになって,もちろん,日常会話よりちょっと上くらいのレベルはそれによって効果があるとは思うのだけど…。
ただ,それを繰り返していったとしても,日常会話よりもワンランク上の環境問題のこととか,そういうのをあなたはどう思うって言われたときのことを考えると,自然にレベルアップをさせるのって,結構難しい。

 

工藤
自分の言える内容だけを話し続けていると,なかなか上へもっていくことは難しいよね。

 

津久井
そうそう。
だから,ちょっと高級なテーマを,いい意味で教科書のコントロールされた語彙と文構造で読むっていうのは,それなりになんだろう,外国語学習っていう環境においては必要な気がする。データをとって検証しているわけじゃないけど,そんな気がする。

 

工藤
もちろん,自分の言いたいこと音読してっていうのがベストとは思うけど,そのステップとして,内容的な深みや英文の高度さなどを教科書音読を通じて学んでいくって考えるのがいいかもしれないね。

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

『NEW CROWN』の詳細はこちら

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