三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第6回:話し手の「即興力」,でもその前に。

工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校

2018年02月06日

話し手の「即興力」,でもその前に聞き手の「姿勢」

工藤

前回,『生徒の「即興力」,でもその前に』で,教師の即興力がすごく大事っていう話をしたよね。

あのあと少し考えていて,スピーキング指導って,半分はリスナー,聞いているほうをどう指導するかという観点もすごく大事なんじゃないかって思っていて

たとえば,生徒に評価シートを配って相互評価しあう場合でも,結局シートを埋めながら聞いているから,リスナーの顔ってほとんど下を向いているんだよね。自分がスピーカーだったらさ,絶対話したくないよね,そんな人に向かって。

 

津久井

顔が下を向いていることに加えて,「いま自分が評価されている」って思うと…。

 

工藤

そうそうそう。まずリスナーとしてちゃんと聞いているっていう姿勢を作らなければならなくて,評価はやるにしてもその次っていうか。

 

津久井

あと,必ずルーブリックまで用意するか…とか。総合評価っていうのもありなんじゃないかと。観点別に評価しようとすると,リスナーとしての姿勢がどうしても。

 

工藤

個人的には,ルーブリック,いらないね。

 

津久井

ちょっと気づいたことを言ってあげるとか,聞いている最中はメモをとる程度でいいんじゃないかな。ルーブリックを用意されても,それを全部評価するって,特に中学生には無理だと思う。

 

工藤

ルーブリックの観点,全部評価をつけられたら,それは相当な英語力があるっていうことだよね。

 

津久井

それだったら内容に集中させて,「きちっと聞いている」「わからないことは日本語でもいいから質問する」「発表者のすごいなと思ったことを言う」「もっとわかりやすくするには,ジェスチャーも入れてみたら」,とか,それくらいでもいいと思うんだよね。

 

工藤

誰かの話を聞きながら,聞き手は何をすべきか,というのは,どこかでしっかり考えたほうが良いかも。聞きながらメモを取るにしても,全員が書記みたいにメモを取ったら,さっき言ったように話し手は話を続けたくないし。何らかのメモを取らせるにしても,話し手の言った要点をメモするのか,自分が次に質問したり話したりする内容をメモするのかでも聞き方も変わってくるしね。特に,聞きながら自分が次に話すことをメモするっていうのは,スピーキングのプロセスの一部で,準備段階としてとても大事なステップになっているよね。まだ話していない段階だけど,スピーキングに入り込んだ第一歩ということ。

 

津久井

「言いたいこと」を考えるのは,スピーキングの第一歩だね。

 

工藤

リスナーの役割のときに,「次に自分は何を質問するか」とか,「自分だったらそれにどう答えるか」みたいな発想で聞いてないと,いざ即興で話すときに,ただ単に相手が言っている情報をキャッチしているだけで自分はリアクションできないから,なんかこう,あんまりこう有機的なダイアログにならなくなっちゃうんだよ。

悪循環を断ち切り,アクティブリスナーの育成を

津久井

スピーカー側の視点から言ってもね,リスナーが育っていない環境では聞き手に向かって話しているんじゃないんだよね,先生にやれって言われてるから何か言うっていう。しょうがないから話していて,だから平気で聞こえない大きさの声で話しているんだよね。

これって実は,自分がスピーカーにまわったときの安心感につながっていて,小さい声で話したとしても,誰も何も言わないっていうのは,ある意味ストレスフリーでナーバスにならなくて済むんだと思う。

 

工藤

小さい声で話してもOKという安心感って生徒にとっては必要だったりして…。

 

 

津久井

そう。だけど,そういうアクティブリスナーが育ってない集団って本当はすごく怖いんですよね。そもそも声小さいし,しかも英語の発音は恥ずかしいしってさらに声がどんどん小さくなっていって,聞いている方も別に聞こえてなくてもいいやみたいな,もう,完全に悪循環。リスナーを育てるって,本当はスピーカーの前にやることかもしれないね。授業中の英語がことばとして行き交うかどうかの分かれ目だね。

 

工藤

そうだよね。これは自分が高校で教師をしていたときに,やっていた単純な実践なんだけど,

What did you do yesterday?とか,たとえば,前に座っているSato-sanに聞くじゃないですか。

 

津久井

うん。

 

工藤

そう,そうすると,Sato-sanは,教師の自分に向かって答えるんだよね。前のほうの生徒を指名しちゃったら,教師に聞こえるだけの音量でしゃべるから,近くにいる生徒は聞こえるけど,遠くの人は聞こえない。

これだと教室でやっている意味がないから,たとえば教室の右前に座っているSato-sanを指したら,この生徒の対角線で一番離れているところに座っている生徒に,What did Sato-san do yesterday?ってレポートさせるような活動をやっていたなぁ。

これを続けていくと,結局次の人がリポートできない音量でしゃべったら伝わらないって,話し手も自覚するし,はじめに指名されなかった生徒も,次自分がレポートするかもしれないって,内容を聞き取りにいくような循環が作れていたんじゃないかな。

 

津久井

まさに,アクティブリスナー育成の実践だね。

 

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

 

 

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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