2022年04月13日
1. この授業について
書き手の目的や意図が伝わる文章の構成のあり方について、主題との関わりを通して意味づけをおこなうことができることをねらいとした。
教科書教材と絵本を読み比べる学習活動を通して、前半のエピソードの有無における効果を考えさせる授業を仕組むこととした。
2. 評価規準 (1年生)
【知識・技能】比較や分類、関係づけなどの情報の整理の仕方、引用の仕方について理解を深め、それらを使っている。(⑵イ)
【思考・判断・表現】「読むこと」において、文章の構成や展開について根拠を明確にして考えている。(Cエ)
【主体的に学習に取り組む態度】二つの作品を読み比べ、作品に込めた書き手の考えを効果的に読み手に伝えることができる文章構成のあり方について根拠をもとに自分の考えを整理し、文章にまとめようとしている。
3. 授業の流れ (全5時間/本時は第4時)
①絵本の範読を聴き、文章構成の違いを確認する。
・教科書教材(エピソード…2つ)
❶日頃の父親の姿と離れて暮らす書き手に宛てた父親からの手紙に関わるエピソード
❷妹の疎開に際し、取り交わされた「字のない葉書」に関わるエピソード
・絵本(エピソード…1つ) *ここでは『字のないはがき』(小学館、2019)を用いた。
❶妹の疎開に際し、取り交わされた「字のない葉書」に関わるエピソード
②前時に確認した主題をもとに、教科書教材にのみ掲載の「日頃の父親の姿と、離れて暮らす書き手に宛てた父親からの手紙の場面」が必要であるかを検討する。
・前時に確認した主題…父の愛情
③意見交流をした後、自分の考えを再構築する。
・同じ考えの生徒でグループを作り、意見交流をさせる(ロイロノートで交流)。
・友達の意見で納得できるものは「カード」に線を引くよう指示したうえで、自分の考えを再構築する際、必要であれば引用してよいことを伝える。
④次時は、前半必要派と不必要派に分かれて、ミニディスカッションをすることを伝える。
論破が目的ではなく、相手がどのような点を根拠に自分と異なる意見をもつことになったのかを聞き取るよう指示する。
4. 授業のまとめ
○絵本と比較をしたことで、作品の主題をもとに前半のエピソードの必要性の有無について、描写を根拠として考えを深めさせることができた。
○ 必要派と不必要派とに分かれて交流させたことで複眼的に文章を読むことの必要性に気づかせることができた。
○ 必要・不必要の立場にとどまらず、書き手の言及等の資料を提示するなどの手だてを講じることで、絵本と教科書教材それぞれに書き手の目的と意図があることを捉えさせることができるようにしたい。
■生徒の振り返り
・僕は不必要派で妹の疎開の話に出てくる父の行動で妹への愛情が伝わると考えていたけど、必要派の意見を聞いて、父の日頃の家族への嫌な態度が書かれているから妹が帰ってきたときの父の涙に大きな意味があると考えることができた。もしかしたら、全て必要なのかもしれないと思った。
5. ICT活用のヒント
意見交流にロイロノート・スクールを活用しよう
ロイロノート・スクール(以下、ロイロノート)では、クラウド上で教師と生徒、または生徒間でお互いにデータを共有し、閲覧することができる。
展開2の意見交流の場面では、ロイロノートを活用し、意見交流を行った。
「カード」と呼ばれるテキストボックスに、あらかじめ前半部分「必要派」か「不必要派」か、入力できるように教師が設定しておき、タブレット上で意見を入力させた。それをクラウド上で共有し、交流した。
クラウド上で回答の共有を行うことにより、クラス全体での意見の集約が瞬時に行え、確認することができる。また、送信したい相手を選択して「カード」を送ることができるため、グループ学習で意見を交流する際にも有効である。
永野 恵美 ながの・えみ (那珂川市立那珂川中学校)
那珂川市立那珂川中学校指導教諭(元福岡県教育庁南筑後教育事務所指導主事)。
生徒の学ぶ意欲を喚起し、思考する授業展開を目指し、日々実践中である。今後は、マルチモーダル・テクストを活用した授業に挑戦したいと考えている。
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