渡邊 克也
2021年08月30日
高校生の小論文を指導するとき、四段落構成について生徒たちが理解できなくて困ったことがあると思います。私自身も長い高校教師生活でどのように説明しようかと悩むことがたくさんありました。「起承転結」の説明をしても生徒たちにイメージが上手く伝わらないのです。そこで身近な話題に置き換えて説明することにしたのが今回の「美味しい卵焼きの作り方」です。
2.起承転結を「美味しい卵焼きの作り方」で説明する
漢詩における「起承転結」それぞれの意味は 「起」…ある内容を言い起す 「承」…「起」を承けてその内容を発展させ起承二句でひとつの意味をなす 「転」…「起」「承」の内容を一転させる 「結」…「起」「承」「転」を受けて一貫した意向で結ぶ |
このままでは生徒たちにはよく意味が分からないままになってしまいます。そこで以下のようなシートを用意します。
「桃太郎」「アナと雪の女王」の説明をすると起承転結をイメージで理解できるようになります。「ラブストーリー」最後の「結」の部分を生徒たちに考えさせるとどんな答えになると思いますか?私は昭和40年の生まれなので「カップル」と書きましたが今は「リア充になった」とか「付き合った」という答えがほとんどです。でも、その答えが出れば四段落構成の最後に結論を書くということは分かったと言えます。問題はどこで小論文を個性的にするかということです。
「美味しい卵焼きの作り方」で説明するポイントは「どこで自分流の美味しい卵焼きを作り出すか」という所です。実際に以下のようなシートを配り生徒たちに考えさせます。初めて小論文を学ぶ生徒たちのときは四段落構成で考えさせるようにします。説明せずに「書きましょう!」と言っても高校生は戸惑ってしまいます。そこで、「起は卵を割る→承はかき混ぜる→転は○○を加える→結は焼く」というようなヒントを出してから書かせます。
次に近くの生徒同士で読み合います。相手の文章のどこがいいか、そしてどこが印象に残ったかを考えてアンダーラインを引かせます。こうすることでお互いに自分と違った卵焼きの作り方に気がつくのです。
その後、それぞれのペアでどんな美味しい卵焼きになったか発表させます。すると「砂糖」のほかに「塩」「醤油」「ハム」「チーズ」などの入った卵焼きが紹介されます。そこで、起承転結で個性が出る、重要な部分は「転」の部分だと伝えると生徒たちは一様に頷きます。これが「美味しい卵焼きの作り方」で起承転結を説明する手順になります。
=生徒の感想=
(起)卵を割る (承)かき混ぜる (転)砂糖の他にチーズやパセリを入れる (結)フライパンで焼いたら出来上がり 「転」がめっちゃ重要だって最初、全く分からなかったけど なんとなく分かったような気がする笑 |
もちろん、「起」「承」の部分で個性を出すことも出来ます。しかし、結論の「美味しい卵焼き」にするためには「転」の部分で個性をいかに発揮するかが重要だと印象づけるのです。以前にある進学校でこの説明を使って大学入試の小論文の添削をしたことがあります。その時の生徒は飲み込みも早く、関東の難関国公立に合格できました。
以上が今回の記事になります。ほかにも実践例はたくさんありますのでいつかまたご紹介できればと思います。
渡邊 克也 わたなべ・かつや
教育コンサルタント、進路講演会講師、小説家。福島県で32年間(令和3年8月現在)、県立高校の高校の国語教師として勤務。令和2年3月退職。その後、神奈川県で塾の講師を経て、現在、福島県立高校で常勤講師として勤務。
受験指導から小論文対策・アクテイブラーニングの授業方法など電子書籍で出版する傍ら、小説家としても活動している。
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