高須 伸吾 (愛知県立豊橋商業高等学校)
2025年09月16日
1.はじめに
単元の目標に合った言語活動の設定が、授業作りにおいて大切である。本稿では「自分の考えが的確に伝わるよう、自分の立場や考えを明確にするとともに、相手の反応を予想して論理の展開を考えるなど、話の構成や展開を工夫することができる」(A話すこと・聞くこと(1)のイ)ことを単元の目標とした。そこで、「スマートフォンを持ち始める中学生に、メディア・リテラシーについて考えてもらうためのスピーチを行う」というパフォーマンス課題(言語活動)を設定した。
観点別学習状況の評価の三つの観点のうち「思考・判断・表現」については、単元の目標を踏まえて「話の構成」に焦点を当ててルーブリックを定め、スピーチ原稿を提出させることで評価することとした。「主体的に学習に取り込む態度」については、グループ内で行うスピーチの様子を評価することとした。この際、粘り強さの側面と学習の調整の側面を分けて評価を行った。
2.学習活動の実際
単元の始めに、パフォーマンス課題として「スマートフォンを持ち始める中学生に、メディア・リテラシーについて考えてもらうためのスピーチを行う」と明示した。アウトプットを目標とすることで、生徒は単元全体において能動的に取り組んでいた。第1時限において「情報はつくられる」ことを積極的に理解しようとした。第2・3時限においてはスピーチの型(構成)を意識しながら話す練習をした。この時間では、シンキングツール「ピラミッドチャート」を用いて思考の整理をした。生徒の中には、授業時間ではスピーチの型(構成)をつくることができず、うまく話すことができなかった者がいた。そのような生徒には「この時間で構成を意識したスピーチができなくてもよい。単元の終わりで行うパフォーマンス課題までに、構成を工夫したスピーチができるようにしよう」と声をかけた。
スピーチ原稿の作成について、ICTを活用して行ったところ、ほとんどの生徒が、スピーチの型(構成)を工夫した原稿をつくることができた。また、インターネットでさまざまな情報を検索して、調べた情報を原稿作成に生かしていた。スピーチに説得力を持たせるには、情報の引用元を明示するとよいとアドバイスを送った。
第6時限にて、グループでスピーチを行い、その後、自分のスピーチ原稿を振り返り改善点を考えた。改善点を書き、提出させたワークシートに「引用した内容を言う前に、『総務省の公式サイトから引用しました。』と入れればよかった」という記述があった。教員による一斉指導では「適切な引用」法の理解ができなかった生徒が、他者の意見を参考にして学習の調整をしようとする姿が見られた。
3.ICTを用いた成果
(1)「思考力・判断力・表現力等」について
パフォーマンス課題はロイロノートで提出をさせた。提出状況が把握しやすく作品の比較が容易にできた。また、評価に悩む課題はMicrosoft Teamsのチャット機能を使ってデータを共有し、教員間で随時すり合わせを行った。そうすることで「評価のズレ」を最小限に止め、公平性を保つことができた
(2)「聞くこと」の留意について
単元の最後に、スピーチの相互評価を行う機会を設ける。特に、「話し手の考えが伝わったかどうか」を重視して評価するように指導を行う。相互評価はMicrosoft Formsを用いた。従来の紙で行う評価と違い、収集や整理を即時に行うことができた。
(3)「主体的に学習に取り組む態度」について
「主体的に学習に取り組む態度」の二つの側面を分けることで、評価のポイントが見やすくなり、評価で悩むことが少なくなった。「粘り強さ」の側面はグループワークの態度で評価した。このため、授業中に評価を終えることができ、授業外で評価に費やす時間を削減できた。「学習の調整」の側面を評価するワークシートは、パフォーマンス課題と同じようにロイロノートで提出させた。課題の提出をさせる際にICTを活用することで、評価を効率的に行うことができ、時間が短縮されると強く実感している。
4.おわりに
教材文を教えるのではなく、教材文を基に単元の目標に合った言語活動を行うことが、授業のポイントだと考える。三省堂『新 現代の国語』は各単元において、言語活動例が示されている。さらに、一つの単元に一つの領域というつくりで、指導事項が明確になる。現場の教員からすると大変ありがたい。ゼロベースから言語活動を考えるとなると労力がかかる。しかし、三省堂『新 現代の国語』のように指導事項に合った言語活動例が示されていると、それをベースに単元案を考えればよいので、かなり負担が減る。このような教科書を作られた三省堂の編集者に感謝の意を送るとともに、今後も、現場の教員を支える教科書を発行していただけることを願ってやまない。
高須 伸吾 たかす・しんご (愛知県立豊橋商業高等学校)
愛知県立学校教諭。現在(令和7年度)は県立豊橋商業高等学校に勤務。令和4年度より令和7年度まで、県立高等学校課題研究(国語)の研究員。生徒を巻き込む「結婚式」型の授業を目指して、日々授業研究に努める。
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