
2026年02月11日
1.はじめに
「このページどう使うの?」「何のためにこのページはあるの?」と、教科書に関してたくさんの疑問が先生方にあるかと思います。
この度は、そんな皆さんの悩みに少しでも寄り添うために自分の実践を紹介します。Before(あるある失敗談) and After(改善後)という形でまとめていきますので、明日からの授業づくりに2%ほど貢献できればと思います。
※こちらの事例も、ぜひあわせてご覧ください。
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜STEPで「もどる」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜Story Time世界のおはなしってどう使うの?」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜Story Time ケンの冒険は使えば使うほど面白くなる!」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜Panoramaは話すツールとなる!」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜学習者用デジタル教科書ってどう使うの?」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜My Dictionary?」
「明日からの授業づくりに2%! Before and After 〜HOPは子どもたちがHOPするために」
前回までは、「HOP」や「STEP」について紹介をしました。今回は、CROWN Jr.の大きな特徴である「HOP・STEP・JUMP」の「JUMP」について紹介します。
慌ただしい学期末の中でも、「HOP」や「STEP」で蓄えた力を十分に発揮できるようにしたいですね。「JUMP」については、ただ発表させるだけでは、豊かな学びにつながりません。今回もBefore and Afterで考えていきましょう。
2.Before〜ある教室のできごと
ここは5年生のクラスです。「STEP」も終わり、いよいよ「JUMP」に入るところです。ハブ先生も気合いが入っています。
| ハブ:「今日からいよいよJUMPに入るよ!」 ハブ:「ゴールはおすすめの場所とそこでできることを友だちに紹介して、魅力を共有しようです。」 児童:「できるかな〜?」 ハブ:「来週の火曜日を発表会にします。今日は発表するための準備の時間にしましょう。」 〜スライド資料を作ったり、原稿を作ったりしながら準備をしている〜 ハブ:「それでは来週、発表会がんばりましょう!」 |
そして、クラスでの発表会当日。
| ハブ:「それではAさんからどうぞ。」 児A:「This is Nara. It is in Kansai. I want to see many deer. You can eat kakinoha sushi.」 〜ハブ先生が発表後にコメントをつけながら進んでいく〜 児B:「This is Miyajima. It is in Hiroshima. I want to see torii. You can eat momiji manju.」 ハブ:(どの子も似たような発表ばかりだな…) 児C:「え〜っと…、I want to …. えーっと。」 ハブ:(あれ…?まだ難しいのかな??) |
子どもたちはSTEPで学習した表現を使っていますが、どの発表も似たような内容ばかりです。原稿を覚えてスラスラと言う子もいれば、まだ発表も難しい子もいます。ハブ先生は悩みます。
「どうすれば、どの子にとっても発表の活動を意味あるものにすることができるのだろう?」
3.「JUMP」の特徴は?
JUMPのページは、「考える→たしかめる→準備する→本番」という流れになっています。JUMPでのキーワードも、STEPと同様に「もどれる」ことです。
「考えよう」では、HOPのページに「もどる」ことができます。「どんな風に伝えたらいいか分からない!」への対応もできます。
「たしかめよう」では、STEPで学習したことを復習するきっかけを与えてくれます。「あ!この表現使えそう」、「使ってみたい!」につながるはずです。STEP内のLet’s Read & Writeで書いた文を使って、原稿を作ることもできるので、無理なく自分の思いを伝えるための文が完成できます。
JUMPは、このように個人のペースに合わせて「もどる」設計になっています。一人一人の学びに応じて、参照できるヒントが存在しています。STEPである程度、「もどりながら」伝え合う活動に慣れているようであれば、子どもたちが自発的に「振り返りながら」原稿作成や発表練習ができるようになります。
また、学習者用デジタル教科書との相性が良いページですので、教科書の復習だけではなく、モデル文や映像の活用も効果的です。
4.After ハブ先生の実践
ここは、授業づくりを2%ほど変えたハブ先生の教室。JUMPを使って、子どもたちが主体的にコミュニケーションを図ろうとする姿を大切にしようと考えています。
今日の授業のねらいも、「おすすめの場所とそこでできることを友だちに紹介して、魅力を共有する」ことです。子どもたちが、既習表現を活用しながらおすすめの場所について紹介できるような授業をしたいと考えています。
では、ハブ先生の教室をのぞいてみましょう。
| ハブ:「前回の発表会はどうだった?」 児A:「う〜ん、うまくいった!」 児B:「うまくいかなかったな…」 (子どもたちの反応はバラバラです) ハブ:「では、今日はうまくいった人もうまくいかなかった人も、次の発表会で前回よりも良い発表ができるような時間にしよう」 児童:「は〜い!」 ハブ:「みんな、JUMPのページは見たかな?」 ハブ:「良い発表ができるための秘密が隠されているかもしれないよ〜?」 児童:「え〜!」 (それぞれが自分の発表を改善するための時間に入った) |
発表の活動となると、一から作らないといけない、という考えの子どもたちがたくさんいます。今までに学習したことや伝えるための工夫について、意図的に振り返ることができる時間をハブ先生は設定しました。
協働して教科書を見返しているペアの様子を見てみましょう。
| 児C:「魅力を伝えるには…写真を使うかな?」 児D:「いいね!何て英語で言うの?」 児C:「This is okonomiyaki.」 児D:「え〜っと、どこ?Where?」 児C:「Hiroshima.」 児D:「終わり?それだけだと、魅力が伝わらないよ?お好み焼きだけ?」 (児C・D、JUMPのページをもとに該当表現や語句を探し始める) 児D:「88ページは?」 (児C・D、福井県の恐竜博物館を紹介する音声を何度も聞きながら、原稿を修正している) 児C:「クイズみたいにしようかな? In Hiroshima, you can eat okonomiyaki. It is very delicious. You can eat…?」 児D:「もみじまんじゅう?」 児C:「That’s right!」 |
一人の児童のための原稿作成や発表への練習をしているように見えますが、協働の中でそれぞれの気づきがそれぞれの学びや改善案につながっていきます。「発表は一人でするから、個人作業」と決めてしまわずに、それぞれの学びの状況に応じて、場を設定することも大切です。
もう一つのペアの様子を、ハブ先生と一緒に見てみましょう。このペアはどちらも原稿作成が終わっていて、少し手持ち無沙汰のようです。
| ハブ:「どうした〜?」 児E:「全部終わった!することない!」 ハブ:「すごいな〜! JUMPの『さあ、本番!』のところは見た?」 児F:「見たよ! 写真の使い方も工夫してみたよ。」 ハブ:「素晴らしい! 質問はどう?」 児E:「そこはまだ。」 (児童E・F、JUMPのページを開いて、質問表現や語句を考え始める) ハブ:「Eさんの発表に質問をしてみたら?」 (児童F、Eさんの発表に関して簡単な質問をいくつかする) 児F:「Where is it? 簡単すぎるかな。」 (What can you do? や、What food can you eat? などの質問が出てくる) ハブ:「いろんな質問ができたね。Eさんは質問を受けてどう思った?」 児E:「質問されると緊張するから、原稿の中で先に発表しようかな。」 児F:「聞いている人に質問するのはどう?質問しながら発表するとか!」 ハブ:「良いアイディアだね!」 (児童E・F、2人でやり取りをしながら原稿作成と発表の練習が進んでいく) |
STEPに引き続き、JUMPのページも子どもたちが「もどって」学べるような配置の工夫がされていることに、ハブ先生は気づいたようです。「もどる」工夫によって、子どもたちが自分に合った学びを見つけて、取り組もうとする姿がみられました。
5.プラスアルファ「見方・考え方」を生かした単元づくり
JUMPのページでは、「見方・考え方」を生かす必要があります。「見方・考え方」については、以下のような記述が学習指導要領解説にあります。
| 「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは,外国語によるコミュニケーションの中で,どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのかという,物事を捉える視点や考え方であり,「外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」であると考えられる。(下線部は筆者によるもの) |
ここで大切なのは、下線部の「社会や世界,他者との関わりに着目して捉え」であると考えます。主体的にコミュニケーションを図ろうとするには、JUMPで行う活動はもちろんですが、普段の活動でも「誰に」という相手意識をもつことが重要です。
今回のハブ先生の実践では、クラスの友達やALTにおすすめの場所を紹介することでした。もちろん、それだけでも単元の構成としては機能します。ただ、活動を重ねる度に「ただ発話しているだけ」の状態に陥る可能性もあります。単元の終盤に相手を変えることも「見方・考え方」を働かすきっかけになります(例:保護者や遠くに住む同年代の子どもたちなど)。
「相手が変わっているけど、同じ言葉でも大丈夫かな?」
兵庫県には「自然学校」という野外活動があります。School camp, nature school, Shizen-Gakko,いろいろな表現がありますが、相手の背景にある文化を捉えて言葉を選ぶことが大切です。
「ALTの○○先生は何年も日本で先生をしているから、School campで通じるかも!」
「兵庫県以外では通じないから、Shizen-Gakkoと伝えてから補足の説明を付け加えよう」
このように、相手や状況に応じて言葉を選び直す経験を通して、「見方・考え方」は働いていきます。その過程で、子どもたちは自分だけの言葉ではなく、他者との関係の中で言葉を創り出していきます。JUMPにおける目的・場面・状況や相手意識を意識化する働きかけは、子どもたちの発話を「活動」から「コミュニケーション」へと転換させるカギになります。
6.まとめ〜発表するだけじゃ足りない〜
「JUMP」は、子どもたちがこれまでの学びを統合し、自分の言葉で伝えようとする段階です。しかし、ただ「発表する」だけでは、学びの成果が十分に発揮されないこともあります。大切なのは、これまでの学びに「もどりながら」、自分なりの表現を創り出すことです。
授業づくりの中で「もどる」ことを意識することで、子どもたちは過去の学びを再構成し、自分の意図に合わせて活用する力を高めていきます。それは単なる復習ではなく、「自分の言葉で伝えたい」という思いを形にする自己調整の場でもあります。
また、JUMPでは相手を意識した発表や、文化の違いに応じた言葉選びを通して、「見方・考え方」を働かせながら伝え合う経験を積むことができます。こうした積み重ねこそが、子どもたちの「主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を育む基盤になります。
HOP・STEP・JUMPは、段階的な活動でありながら、常に往還できる構造をもっています。教師が意図的に「もどる場」をデザインすることで、子どもたちの学びはより深く、柔軟になります。小さな工夫=授業づくりの2%の変化が、子どもたちの表現の質を大きく変えるはずです。
参考文献
文部科学省 (2018). 『小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編』
羽渕 弘毅 はぶち・こうき (西宮市立総合教育センター 指導主事)
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科学博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。

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