三省堂のWebコラム

奥住桂のTips for Teaching English 2.0

本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。

No. 13 シンクロナイズド・リーディング

奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

2026年03月17日

はじめに

前回の「落語家トレーニング」に続いて、今回も「音読」にまつわる練習方法のご紹介です。
 
 
授業中は教科書をとにかくたくさん読ませたい。だから、1回目は前を向いて読んで、2回目は横を向いて、と方向を変えながら読ませる「四方読み」なんかにも取り組んだこともありますが、こういう練習はあまりやりすぎると、決められた回数を読むことだけが目標になっちゃう。
 
もっと、繰り返していく中で生徒自身が上達を実感できるような練習方法があればいいのに、と感じていました。
 
その時、注目したのは「読むスピード」でした。単純に、文字を音声化するのが苦手な生徒は、1行読むのにも時間がかかります。ある程度のスピードで読めるようになるには、
 
①文字を見たら音声がパッと思い浮かぶ
②リンキングやリダクション(脱落)などができる
 
という技能面での2段階のスキルアップが必要です。だから、ある程度でのスピードで読めるようにすることは、音読スキルの基礎レベルを突破するのにキーになるのではないかと考えました。
 
そこでやってみたのが、「シンクロナイズド・リーディング」です。

シンクロナイズド・リーディング

このネーミングから世代がバレてしまいますが(笑)、元ネタは「シンクロナイズド・スイミング」です。今は「アーティスティック・スイミング」と呼ばれている、水中でペアやグループで動きをそろえて演技する競技ですね。でも、今回の活動の肝は「シンクロナイズド」という言葉だと思うので、この記事ではあえてそちらを使ってご紹介しています。

活動方法

 やり方は簡単です。単純に「せーのっ」でペアで同時に教科書のあるページを読み始めて、同時に読み終わるか、というだけ。ただのコーラス音読なんだけど、お互いの声を聞きながら読まないといけないし、何より相手に読めない文があったりすると大変。事前のペア練習の時間には、お互いに教え合う(確認し合う)姿があちこちで見られました。
 
私の授業では、ソシオメトリーを活用して編成した英語授業用のペアごとに席に座っていました。そのため、こういう活動は比較的気の知れた2人組でやっているので、よい雰囲気で取り組めます。ペア編成は必須ではありませんが、「ペアの相手がやってくれない」「遅い」みたいな不満を生まないためにも、ある程度考慮した方がよいかなと思います。
 
さて、この活動の目的は、もちろん「2人が完璧にそろえて英文を読む」ことではありません。そこを目指す過程で、
 
 ・何度も教科書を読もうとする  
 ・わからない部分をお互いに確認する  
 ・息継ぎの場所や強弱を確認し合う
 
ということを「勝手にやってくれる」ところがポイントです。休み時間までやってくれたら言うことなしですよね。たくさん練習したペアだったら、応用編として「黙読でも同時に読み終わるか」なんて無茶な課題も可能かもしれません。

「25秒ぴったりで読め」

スピードを意識させる、という意味であれば、別にペア活動にこだわる必要はありません。大学での実践になりますが、コロナ禍の頃、大学生に音読の練習・発表をさせるのに、何かいい方法はないものか考えていた時に思い浮かんだのは、「このページの英文を25秒ぴったりで読んで」という課題でした。
 
大学生でしたので、25秒ぴったりで読んだ音声をスマホで録音してデータを提出させていました。この場合、25秒というのはその題材によって変動します。だから教師が事前にやってみて、学生(生徒)がある程度練習をしないと達成できないようなタイム設定にすることが重要です。
 
大学生も、まずはそのスピードで読めるように何度も練習します。当然リンキングなどのスキルも求められます。そして、自分でタイムを測りながら録音してみると「27秒、惜しい!」「今度は24秒か!」と、勝手に悔しがりながら25秒が出るまで何度も読んでくれます。この録音の過程も「練習」になるわけです。
 
そうして提出されたファイルを私はチェックするのですが、そのスピードで読めていれば、それなりにしっかり読めている音声ばかりなので、こちらからのダメ出しはだいぶ減ります。もちろん、中にはリンキングなどの技術ではなく、ただ早口に読むことで25秒に詰め込んでくる学生もいるので、そこには指導をします。
 
それぞれの学生の抱えている課題が可視化されるので、コロナ禍が明けた後も重宝しています。今なら録音機能のあるタブレット端末などがあるので小中学校の教室でも実践可能だと思います。
 
ということで、一連の練習・評価は、きちんとした音声指導とセットで考えるべきものです。何も指導しないまま、ただ「速く読め」と言ってしまうと、悪い波及効果が出てしまうのでくれぐれもご注意を。

ブログ元ネタ:『シンクロナイズド・リーディング』(2007年10月10日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20071010/p1

プロフィール

奥住 桂    おくずみ・けい

・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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