本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2026年03月04日
「音読」を「話す」につなげたい
教科書には対話文のページがたくさんありますが、みなさんは音読の練習をどうされていますか?
中学校教員時代の私は、個人でたくさん練習した後、ペアでスキット風に実演する、みたいなのをゴールにしていましたが、個人練習がただ文字を音声化することにとどまってしまい、その後のペア練習にうまくつながらないと感じていました。しかも、音読の技量にもそれぞれ差があるので、片方の生徒の習熟が十分でないと、なかなかペアでの活動に移行できない、なんて場面もよくありました。
なんとか個人で対話文の練習ができないものかと思案していた時に、長野県のK先生から教わったのが、こちらの「落語家トレーニング」です。
これ、実際に落語家さんが行っているトレーニングらしいのですが、鉛筆を両手に持って、机の両サイドあたりに立てるように持ち、それぞれを対話文の登場人物に見立てて話をする、というものです。
活動方法
ある程度、文字を音声化する音読練習に取り組んだら、両手に1本ずつペンを持って、机の両端で立てて持ちます。
例えば左側のペンが Ms. Brown、右側のペンが Riku ということにしましょう。
Ms. Brown のセリフは右側のペンを見ながら(そのペンを陸だと思って)、 “This is my brother, Peter. He studies music at university ….” と話しかけます。
そしたら今度は、左側のペン(Ms. Brown)の方を見て、陸になりきって “Oh, is he a guitarist?” と応答します。
落語家さんって、ちょっとした首の動きだけで、まるで2人の人が話しているように感じさせちゃうワザがありますが、実はその基本はとってもシンプルですね。もちろん、慣れないとなかなか自然にはできませんが、これができるようになるために、と何度も何度も教科書の文を音読してくれるので、そんな仕掛けとしても効果的です。
そして、当然ながら、相手であるペンの方を見ながら言うことになるので、その瞬間は教科書から目が離れます。自動的に Read and Look-up のような練習になりますし、「誰かに向かって話す」という「look-up する意味(必然性)」があるぶん、ただの Read and Look-up より「話す」につながる練習になっていると思います。
アレンジ案
こちらは元々、当時の教科書にあった「Aさん、こちらがBさんです。Bさん、こちらがAさんです」と、2人の友人をつなぐ(紹介し合う)対話文ページの練習のために導入した方法なんです。
なので、音読に限らず、中1の最初くらいに This is … の表現を使って同様の友人紹介を練習する場面でも活用できるかと思います。(詳しくは元記事をご参照ください。)
いずれにしても、ペンを持たせるだけで、顔の向きを考えながら誰に語るのかを考えることができる練習です。
「読む」から「話す」になるためには、まずはこの「聞き手」の存在が一番大きいでしょうから、自然にその人のほうを向けるような動きが身についてくれるといいなぁ、と思います。
ブログ元ネタ:『落語家トレーニングで「読む」から「話す」へ』(2016年9月7日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20160907/p1
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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