本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2026年02月06日
くり返しを楽しく、したいけど…
「知識・技能」の定着を支えるのは、やっぱり基本フレーズの徹底したくり返し。何度も何度もくり返すことで、あとで何かの折に自然と口から出てくるようになるんじゃないかと期待して、「練習」を授業に組み込みます。
でも、中学生なんかは、ただくり返すだけじゃ、どうしても飽きちゃいますよね。だから、「ゲーム性」をうまく活用したいものです。
「10回読みなさい」と言っても楽しくないから、どっちが先に10回読めるかとか、10回を何秒で読めるか、みたいな「競争」にしてみたりするんだけど、ゲームに勝つことだけに目が向いてしまうと、肝心の英語の質がおろそかになってしまうから、さじ加減が難しい。
ゲーム性を使って活動に生徒を取り込みつつ、発する英語の中身や質にもちゃんと目を向けさせる、そんな活動があればいいなぁと思っていたら、かつて中学3年生の「現在完了(継続用法)」のページでやっていた練習をふと思い出したのでご紹介。
活動方法
やり方はシンプルです。
この時は「現在完了(継続用法)」の疑問文を練習させたくて “How long have you lived in Saitama?” という疑問文を何度も使わせたかったんです。この質問に対する答えは “For 2 years.” から “For 15 years.” まで生徒によって様々。そこで、教室内でフリーに会話をさせて、相手が答えた年数をメモさせて、「合計で 50 になるように質問してみよう」というミッションにしてみました。
生徒は様々な生徒とお互いに質問をし合いながら、ぴったり 50 になるように、くり返し、くり返し英文を発話していました。
3〜4分でストップさせると、クラスで1〜2人が「ぴったり賞」。ここで「ニアピン賞」なども確認すると盛り上がります。
この時は、ある程度活動をした段階で、「 50 を超えた人は次に質問したときに得た答えの分を引き算してよい」「ただし、次は “have lived in Saitama” 以外の質問でもよい」という追加ルールにして、活動に変化を加えてみました。早く終わってしまった人は次に 100 を目指す、という指示を出すこともできますね。
ゴルフで誰が一番ピンの近くにボールを寄せられるかを競う「ニアピン賞」(Closest to the Pin)のような活動ですね。
意味あるパターン・プラクティス
とても盛り上がる活動ですが、やっていることはただのパターン・プラクティスだと思います。ただ、前述の機械的な練習と、何かちょっと違うんです。
最初はなんとなく近くの人と会話していた生徒たちも、ある程度数が積み上がってくると、期間の短い(と思われる)人を探して質問するようになっていきました。「〇〇くんは転入生だから」と、話す相手の情報を思い浮かべているわけです。これって、とても面白いことですよね。
この活動は、ペアを固定していろんな質問を組み合わせて 50 になるまで質問する、というアレンジもできます。そうすると “How many comic books do you have?” とか “How often do you go to juku every week?” なんて質問もアリになります。この際も、「相手が3って答えてくれるのはどんな質問だろう」というふうに、「相手のこと」と「それを聞くための英語の形式」を必死に考えているわけです。
私はこういう活動を「意味あるパターン・プラクティス」と呼んでいます。ゲーム性を取り入れつつも、言葉を言葉として使うような活動が、もっといろいろ増えていくといいなと思っています。
ブログ元ネタ:『Closest to the Pin』(2017年6月22日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20170622/p1
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

先生向け会員サイト「三省堂プラス」の
リニューアルのお知らせと会員再登録のお願い
平素より「三省堂 教科書・教材サイト」をご利用いただき、誠にありがとうございます。
サービス向上のため、2018年10月24日にサイトリニューアルいたしました。
教科書サポートのほか、各種機関誌(教育情報)の最新号から過去の号のものを掲載いたしました。
ぜひご利用ください。