本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2026年01月14日
最後の授業が「入試対策」じゃもったいない!
中学校3年生の3学期、みなさんはどんな活動に取り組んでいますか?高校受験も近づいて(なんなら始まってる子もいるし)どこか落ち着かない時期ではありますが、だからといって授業で「入試対策」みたいなことをやるのも、義務教育最終段階の授業としてもったいないような気もします。
生徒は、中学校で3年間いろんな練習をやってきて、今が一番英語がわかる、表現できる時期のはずです。やっぱり実際に英語を使う喜びを実感してもらいたい。そんな思いで始めたのが、この「ペンタスロン」という活動です。
「ペンタスロン」とはオリンピック競技の「近代五種」のこと。一人でフェンシング・水泳・馬術・レーザーラン(射撃+ラン)と異なる5つの競技をこなし、順位を決める複合競技のことです。そう、これは1時間の中で5つの活動にチャレンジする活動なんです。
活動方法
生徒は5つの班を作り、それぞれの班は違う活動に取り組みます。当時やっていた、割とスタンダードな組み合わせはこんな感じです。この中身は、生徒の実態や先生方のお考えで何でも入れ替え可能です。
| 班 | テーマ | 内容 |
| A | 読解 | 長文読解&TFクイズ |
| B | リスニング | 別室でリスニングテスト(市販のもの) |
| C | 英作文 | お題に沿って英文を書く |
| D | 会話 | ALTとフリートーキング(またはQ&A) |
| E | 語彙 | 単語テストに挑戦する |
生徒はまずは自分の班に割り当てられた活動に取り組みます。教師が教材等をセットし終えたら「1種目目」スタート!そして、8分経ったら一斉に活動をやめて、隣の班の場所に移動します。そして、今度はその机に置いてある次の活動に取り組むわけです。
リーディングや単語テストの班は、答え合わせ(採点)もその8分の中で済ませなければならないので、課題自体は5分程度で終わるものにしておきます。すると8分×5つ=40分で5つの活動に取り組む事ができます。(もちろん慣れてきたら説明はいらなくなるので、9分くらいずつやらせてもいいでしょう)
リスニングも、当時は隣の空き教室に移動してラジカセでCDを再生させたりしていましたが、そうなると移動の管理も大変。今だったらタブレット端末+イヤホンがあれば教室の中で完結できるのですごくいいですね。
活動がやりっぱなしにならないように、記録用紙を持たせて、それぞれの課題でどれだけできたかを記録させておくとよいでしょう。
点数が出るもの(単語テストなど)は点数をそのまま記入。英作文や英会話などの表現系は、書いた英単語数とか話した英文数をメモさせたりしていました。発話数を記録しやすいように、百円ショップでカチカチ数えられるカウンターを6個くらい買ってきて、ALTとの英会話テーブルに置いてました。このへんは、先生方が生徒に何をさせたいかで、記録させるものが変わってよいと思います。
この記録用紙のもうひとつのねらいは、継続していく中で自分の成長を感じられるようにすることです。そう、だから「ペンタスロン」はできれば4回、5回と継続したい。同じ制限時間の中で、「昨日よりたくさん英語が書けた」「ひとつでも多く聞き取れた」「今日はちょっと難しいお題であまり話せなかった」といった気づきも生まれると思います。
おわりに
そして、タイトルで掲げた「入試との両立」の部分ですが、こちらはそれぞれ取り組む課題の中に、「入試対策」みたいなものを混ぜ込むことで実現可能です。例えば読解の素材を入試の過去問題にしたり、入試に役立ちそうな単語テストにしたりすることで、「ちゃんと入試のことも気にしてるよ、応援してるよ!」という教師側の気持ちを示すことができます。この時期は入試が気になっちゃってALTとの会話のような「受験に役立たない(ように見える)活動」に前向きになれない生徒もいるかもしれません。そんな生徒も、安心して参加できる活動になると思います。
この活動のモデルは、私が新任の頃、隣の学校の先生が実践されていた「ダブル・トライアスロン」という活動です。こちらは名前の通り6つの活動をするわけですが、6つだと忙しすぎる感じがしました。1つ1つにもう少しじっくりと取り組ませるために、私は5つにしてみたわけです。
ちなみにオリジナルの先生の実践では「休憩」という班もあって、ALTが持ってきた海外の写真をみんなで眺めて自由に(日本語で)話しているというほのぼのした時間で、あれも素敵だったなぁと今では思います。
この授業、実は授業中の教師のお仕事は少なめです。私は、各班の間を巡回しながら時々支援をして、8分ごとに生徒が移動するのを見守っているだけでした。そのかわり、単語テストや読解の問題を印刷して封筒に入れておいたりと、授業前の準備がちょっとだけ大変でした。でも、それも今であれば、素材をオンラインに保管したりすることで印刷とかの手間も削減できそう。いい時代になりました。
タブレットに全部教材が入っていれば自分の班の席でずっと活動をすることも可能ではあります。それでも、8分ごとに席を移動するという行為が、気持ちのリフレッシュになるので、あえて席移動を組み込むのがよいかなと思います。
みなさんだったら、この5つの中にどんな活動を入れますか?そんなアイデアもどこかで共有していただけたらうれしいです。
ブログ元ネタ:『スーパー・モダン・ペンタスロン』(2007年1月6日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20070106/p1/『ペンタスロンその後』(2007年1月25日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20070125/p1/『ペンタスロンで入試対策と会話練習を両立する』(2013年2月8日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20130208/p1
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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