本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2025年11月18日
はじめに
たまには “Repeat after me” をやめてみませんか?
教師のモデル音声に続けてリピートする音読練習は、英語授業の基本の1つだと思います。大きな声が教室に響くと、教師が先導して授業を進めている実感も得られます。でも、あんなに大きな声で読めていたはずなのに、一人一人指名して読ませてみたら全然読めない、みたいなことありませんか?
“Repeat after me” って、実は英文そのものをちゃんと見ていない生徒でもそれなりに参加できちゃいますよね。極端な話、窓の外を眺めながらでも聞こえてきた声をなんとなく繰り返すことはできるわけで、やっぱり生徒がきちんと文字と音をつなげられるようにする仕掛けが必要です。
活動手順
そこで “I will repeat after you” です。
一通りリピートをさせてみたら、今度は生徒に先に読ませます。①生徒 → ②教師 → ③生徒 → ④教師、の順でリピートしてみるわけです。
実際にやってみると、文字と音がつながっていない生徒は教師役となる ① で急に声のトーンが落ちます。しかしその後(②)で教師が正しい発音で読んであげることで、不安なポイントを確認でき、2回目(③)は自信を持って読むことが出来るようになります。
ですので、この活動は2回ずつ読んでもらう(読ませる)と効果的です。
別の方法としては、①の生徒たちの発音・イントネーションなどに課題がある際は、②でわざと大げさに間違えて読んであげたり、「先生ー!もう一回読んでくださーい!」なんて言ってあげたりして、やり直しの際のポイントを明示するのもよいでしょう。 (その上で、ちゃんとできていれば④できちんと読んであげると「評価」が伝えられます)
おわりに
この活動の目的は、マンネリ化しがちな “Repeat after me” にアクセントを加えることにあります。ですので、リピートの代わりの活動としていきなり使うのはどうかと思います。あくまで教師の適切なモデル音声を土台に、しっかりと練習させてあげることが大事になります。
生徒たちとしては、ちょっとした「教師気分」を味わえるのも楽しいようです。「教師役」を列とか、班とか、個人とか、少人数にしてもより責任が重くなって(緊張感が出るので)おもしろいですね。
最近は、タブレット端末などを使った個人練習を取り入れる授業も多いですが、それらの「個別化」された活動の成果を「一斉授業」の中できちんと見取る、あるいは共有する意味で使用するのもアリでしょう。
ブログ元ネタ:たまには “I will repeat after you”(2005年11月23日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20051123/1132737357
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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