本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2025年08月22日
さて、前回は「2S1Q」(トゥー・エス・ワン・キュー)というカードを使ったペアでの会話練習をご紹介しました。
そちらはお題や形式を固定して、ある程度の発話を引き出す、やや機械的な活動でしたが、今回はその発展形で「2S3Q」です。「トゥー・エス・サンキュー」と読みます。(スリーキューって言いにくいし…そもそもスリーキューズだろうし…)
活動手順
2S3Qはもちろん “2 Sentences and 3 Questions” を意味します。今回はペアではなく、4人組で取り組みます。
ジャンケンで順番を決めたら、1番手の生徒(スピーカー)は立ち上がって、与えられたトピックについて、まず2つの英文で語ります。(この際、「2S1Q」で使ったカードを用いるのもアリですね)
例)テーマ:Yesterday
スピーカー:I went to Tokyo yesterday with my family. We visited Asakusa.
その後、残った3人(質問者1, 2, 3)が1人ずつ英語で質問をして、スピーカーはそれぞれに英語で答えます。質問は順番を決めず思いついた人からでいいと思います。
質問者1:What did you do in Asakusa?
スピーカー:We visited Hana-yashiki.
質問者2:How was it?
スピーカー:It was exciting.
質問者3:How did you go there?
スピーカー:We went there by train.
制限時間を設定し(例えば1分30秒)、時間内に3人が質問して、すべてに答えることができたらスピーカーは座ります。これで、このグループはミッションをクリアしたことになります。つまり、グループで協力して立っている生徒を座らせてあげる活動です。
これを、スピーカーを交替しながら4回繰り返します。私は1人終わるごとにワンポイントアドバイスをしていました。「昨日のことを語るときは過去形だぞ〜」とか「動詞に-edつけるんだよ〜」とか。そうすると、2人目以降の発話の質が向上していきます。
アレンジ案
慣れてきたらスピーカーごとにトピックを変えるのも面白いですね。
「過去形アドバイス」を活かすなら、1人目は「yesterday」、2人目は「last weekend」など、似たようなトピックにすると、継続性が生まれます。
また、毎回1人ずつスピーカーを務める形で、4回1ローテで帯活動として取り組むのもアリですね。それなら毎回3分くらいでできるので、気軽に取り入れやすいかと思います。
時間を長くして、質問者が複数の質問をすることを課すのも面白いですね。質問者にペンを3本持たせ、1回質問したらペンを机の上に置くというルールにして、その人が何問質問できているかを可視化すると、質問ができていない生徒にフォローができるのでおすすめです。
スピーカーは本来、質問に対して1文で答えるのではなく、関連することを付け加えて話せるといいと思いますが、このゲーム形式だと、そういう「豊かな雑談」には向かいません。あくまで発話や質問を引き出すトレーニングとして用いていただいて、この先に、練習を活かした本当のコミュニケーション活動が設定されていくことが大事だと思います。
ブログ元ネタ:『2S3Q(トゥーエスサンキュー)』(2006年2月21日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20060221/1140509787
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き
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