三省堂のWebコラム

奥住桂のTips for Teaching English 2.0

本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。

No. 1 3ステップで英語の歌をマスター!

奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

2025年06月10日

はじめに

みなさん、こんにちは。埼玉大学の奥住桂と申します。

 

このたびは、三省堂の教育Webコラムにおいて、連載をさせていただくことになりました。この連載では、私が中学校教諭時代にanfieldroad名義で綴っていた『英語教育2.0』というブログから、当時特に人気だった記事を今の教室現場に合わせてアップデートして、お届けしていきます。隙間時間にお気軽に読んでいただいて、少しでも明日の授業のヒントになることがあれば嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

授業で英語の歌を扱っているという先生は多いと思いますが、実際どれくらい時間をかけていますか?

せっかくやるんだったら「聞かせるだけ」じゃもったいない!

でも「歌えー!」って言っただけでは歌えるようにはなりません。

 

メロディに魅力があれば、それだけで「歌いたい!」って気持ちになるけど、歌詞が読めなかったり、リズムについていけないと「でも歌えない」ってやる気をなくしちゃったりします。そういう意味では選曲も大事なのですが、私は3段階で「みんなが歌える」状態に持っていくようにしています。

ステップ1 まずは読み方を “Repeat after me.”

さて、第1段階は「読み方の確認」です。

 

いわゆる “Repeat after me.” をしながら、必要な人はフリガナをふります。ただし、“Let it be.” なら「レリビー」のように、聞こえたとおりにフリガナをふることが条件です。私は時間短縮のため、新出単語には予めフリガナをふっておきます。(ただし同じ単語には2回目以降ふりません)

ステップ2 フレーズレベルで “Repeat after me.”

第2段階はリズムに乗って “Repeat after me.” です。

 

英文の意味的なモノではなく、あくまで歌の音としての切れ目までを一括りとして読んでみます。このとき、音程は無視して、ラップのように譜割りだけを意識して読みます。

 

例えば、NEW CROWN の3年生に登場する Bruno Mars の Just the Way You Are(巻末資料 p.5)だったら、こんな感じです。

 

Oh, her eyes, her eyes

Make the stars look like they’re not shining

Her hair, her hair

Falls perfectly without her trying

 

(Just the Way You Are : Lyrics and Music by Bruno Mars, Philip Lawrence, Ari Levine, Khalil Walton, Khari Cain)

 

ここでのポイントは、手拍子をしたときに拍が入る単語(音節)に印をつけてあげることです。この歌は、この部分はちょっとリズムが取りにくい歌なんですが、例えば手拍子をしながら(あるいは曲を流しながら)、

 

……… eyes ……… eyes ……… look ……… shin ………

……… hair ……… hair ……… ly ……… try ………

 

と印のついたところだけ拍に合わせて歌わせます。やってみるとわかると思いますが、これが不思議と一緒に歌えた錯覚に陥るんです。そして、この感覚が大事です。

 

これができたら、この拍の間に、さっき歌わなかった歌詞を入れ込んでいくだけです。この手順を踏むことで、同じ拍の間なのに、“her” と一単語だけ入るときと、“Make the stars” のようにフレーズが入るときがあることを、体感的に学ぶことができます。

 

その意味では、歌詞をできるだけ拍の数で合わせて改行してあげたハンドアウトを作ってあげるのもよいでしょう。

ステップ3 最後は “Sing after me.”

そして第3段階。 “Sing after me.” といって、さっきの切れ目を単位としてアカペラで歌います。

 

生徒はそのあとから歌います。特に難しいところはさらに分解しながら歌います。一人で歌うのはちょっと恥ずかしいですが、すぐ慣れちゃうから大丈夫です。合唱指導しているような錯覚に陥ることもありますけど。歌に自信のない方は、フレーズ単位で一時停止しながらリピートさせてもいいかもしれません。もっとも、ステップ2までやってあげるだけでもずいぶん違うと思います。

 

結局このステップ2、ステップ3をやるかやらないかで、生徒が歌えるようになるまでに大きな差が出てくると思います。「英語が読める」ということがそのまま「英語で歌える」にはならないわけです。合唱指導をするような気持ちで、音程を覚えさせていくと、歌えるようになるのも早いです。

おわりに

というわけで、私はこんな風に歌を導入していました。(あ、今も大学の授業で歌を扱うときは、こんな風にやっています。)だから1回目だけは20分くらいとって、ゆっくりと仕上げていきます。これを1回やっておけば、次からは5分くらいずつでも大丈夫です。時間と質を気にしながら、楽しく英語の歌を授業で活用してみましよう。

ブログ元ネタ:「3ステップで英語の歌をマスター!」(2006年7月13日)

https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20060713/p1

プロフィール

奥住 桂    おくずみ・けい

・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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No. 1 3ステップで英語の歌をマスター!

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