三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第45回:中1の1学期は、「教える」より「見取る」

工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学

2026年04月01日

工藤

いよいよ、新年度ですね。学校現場では、新入生を迎え入れる準備が進んでいる頃でしょうか。

 

津久井

群馬県も、日中は暖かい日がずいぶん増えてきて、今まさに桜が満開です!

 

工藤

英語教育も時代に応じて少しずつ変わってきているから、私たちが教えられたとおりに教えようとすると、違和感が出る場面も増えてきたよね。

 

津久井

そうだね。今日は、新年度1回めということで、改めてそのことについて考えてみたいなと思うよ。

教科書より先に、生徒はもう使っている

工藤

2020年に小学校での英語が本格スタートしたことを踏まえると、2026年はついに、中学1年生から3年生まで全員が「小学校で英語を学んできた世代」になるんだよね。つまり、文法的なルールを明示的に教わるのではなく、活動の中で使いながら学んできた子どもたちだね。

 

津久井

中学1年生の4月の時点で、「自己紹介してみて」って言うと、できちゃう子も多いもんね。一昔前までは、最初に学ぶ文法はbe動詞で、教科書も当然のようにbe動詞だけしか使ってない自己紹介から始まってたよね。でも今の小学生は、「be動詞」とか「一般動詞」とか明示的には教わっていないけど、どっちも使ってきている。だから「be動詞だけで自己紹介して!」なんて言うと、それこそ小学生のときよりもつまらない自己紹介になりかねないよね。

 

工藤

そうそう、たとえばNEW CROWNでも、Lesson1の本文にbe動詞と一般動詞が同時に使われていて、そのことに違和感を覚える先生もまだ一部にはいるみたい。でも、両方とも小学校で習ってるから、中学1年生の自己紹介には両方が出てくるのが自然なんだよね。

 

津久井

昔は中学1年生の1学期から、かなり頑張ってひとつずつ教えていかないといけなかったけど、今は中学1年生の1学期を「小学校での学習履歴を確認する期間」として使えるのがとてもいいし、貴重な時間だと思う。

 

工藤

教科書も、子どもの実態に合わせて使ってもらえるといいよね。be動詞と一般動詞が同時に使われているからといって、「いきなり両方を明示的に教えてください」という意図ではないもんね。まず自己紹介をやらせてみて、be動詞の文はどれくらい使えているかな?足りない知識はないかな?一般動詞はどうかな?というのを先生が見取って、今後の指導計画を立ててもらえるといいよね。

 

津久井

「そんなふうに1学期を使うのはもったいない!どんどん先を教えたい!」という先生もいるかもしれないけど、小学校でやってきたような活動をやらせながら、「ここは中学校だとね…」と要所で中学校らしさをうまく入れ込んでる先生もいるよね。

「教わった順=教える順」ではない

工藤

まだ自分が学生だった頃に、若林 俊輔先生が「自分が教わったように教えるのが最善とは限らない」とおっしゃっていたのを、今でも思い出すことがあるよ。若林先生は、「中学校の教科書の最初の文法は、現在進行形にしたいんだ!」と言っていた。

 

津久井

おお~、尖ってるねー!

 

工藤

ちゃんと理由はあって、教科書は一般的に現在形から始まっているけど、「今はやっていないけど普段やっていること」を表す現在形は、概念としてはわかりにくい。言語学習のスタートはHere and Now、つまり「その場で見えること」から入るほうがよい。現在進行形は、形がやや複雑でも、その場で目に見えることを表せるから、学習者にとっては概念がわかりやすい。そもそも形が複雑だというのも教員の固定観念であって、学習者からしたら問題ないんだ、っておっしゃってた。

 

津久井

たしかに現在進行形は、概念はわかりやすいもんね。でも、英文法を「積み上げ式」で教えていくイメージが強い先生がまだ多いんじゃないかなと思うよ。ひとつずつ教えて、完璧にして、またひとつ教えて、完璧にして、って。

 

工藤

レンガみたいにしっかりひとつひとつを固めていかないと、次をのせられない、っていう感覚なんだろうね。でも今は、小学校でこれまでとは違う学び方をしてきた生徒たちが入ってくる。だから「一度で完璧」を目指すより、繰り返し使わせながら様子を見て、少しずつ整えていく、という発想も大事だと思う。

 

津久井

中学1年生の1学期は、「生徒が何をどのくらいできるのかを確認する時間にする」、「英語によるコミュニケーションをどんなふうに楽しんできたのかを見てみる」くらいの気持ちで授業を組み立てられたらいいのかもしれないね。

 

※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

 

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ 東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程 修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授

・趣味はランニング。出張先でのランが好き。大阪城周回、博多大濠公園、神戸みなとのもり公園でのランが特に好き。

・お気に入りのカフェメニューはプリンアラモード。

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき 群馬大学、「NEW CROWN」編集委員

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て 、現在群馬大学共同教育学部講師

・趣味は朝の散歩後にレトルトカレーを食べること。

・お気に入りのカフェメニューは、ホットコーヒーとモンブラン。

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