工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学
2026年02月02日
工藤
最近、自分が大学生のときのことを思い出してたんだけど、すごく言語能力が高い同級生がいたんだよね。全国トップレベルの進学校出身で、しかもその中でもトップ層だったらしい。
津久井
どんな勉強してたか気になるな~。
工藤
全員が真似できるわけではないけど、学校教育で「まずはこのレベルまで持っていきたい」っていう指標にもなるかなと思ったから、今日は思い出話も含めて話してみようかな。
「自然に大量に読む」が出来れば言語能力は高まる
工藤
大学に入学してすぐの頃に、国語や英語をどう勉強してきたかを話す機会があって。例のその同級生は「何も勉強してない」って言ったの。でもその人をよく見ていると、すごく難しい文庫本をいつも読んでいて、しかも数日ごとに本が変わってる!中高6年間それをやっていたと考えると、相当な力になるだろうなと思った。
津久井
なるほどね、本人も「どう勉強した」っていう意識がないパターンだ。
工藤
英語も同じで、ニュース週刊誌の英語版を中高生のときから読んでたみたい。そうなると、英語も国語も、入試に出てくる文章は普段読んでるものより短いし、問いがあるからむしろ読みやすいらしい。言語処理能力がかなり高いレベルで身についてるよね。
津久井
国語力や英語力を上げるために読んでたわけじゃなくて、好きで読んでたら自然とすごい量のインプットになってたっていうのが強いね。
工藤
そうそう。一方で、英語の場合、まずある程度の英語力をつけないと自分の知的レベルに合ったものを読めないっていう難しさがあるよね。
津久井
わかる。知的レベルは高いのに、英語力が低いと、いつまでも幼児向けの物語みたいなものしか読めない。そうなると、読む前から話の内容を知ってるからつまらない、あるいは、自分の知的レベルに合わないからつまらない。
工藤
そう考えると、CEFRで言うなら、Bレベルにならないと新聞記事のようなオーセンティックなものにはなかなか対応できないから、なんとかBレベルまでの力をつけるのが大切になってくるね。
津久井
AIを使うとしても、AIが出力する文章や回答を理解するための英語力は必要だもんね。自分の身の周りで起こっていることや身近なことは、それなりの長さの文章を理解できるようになっていないといけない。学校教育で、まずはそのレベルまで責任をもって育てるのは、自分は大事だと思うなあ。
小学校英語が持つ可能性と、中高での工夫
工藤
小学校に英語が入ったから、知的レベルと英語力のギャップは少し埋めやすくなったんじゃないかなと期待もあるよ。中学1年生の知的レベルだと、母語では好きな色の話なんてもうしないかもしれないけど、小学校3年生ならまだしてるかもしれない。“What color do you like?” みたいな話題でも、その学年の知的レベルに合った英語の活動として成立するよね。
津久井
ただ、中学生や高校生になると母語のレベルも急激に高まるから、ギャップをゼロするのはやっぱり難しいとも思う。手を変え品を変えそのギャップに対応していくのが先生の醍醐味かもね。
工藤
津久井さんは高校で授業してたとき、社会的な話題もうまく生徒の英語力に合わせて調整してやってたイメージだけど、あれってどうやってたの?
津久井
そのときの生徒の英語力+αで、かつ、生徒の知的レベルにも合いそうなギリギリのラインはどこか、っていうのを常に考えてたね。どのくらいの英語力があって、何に興味があるかをどのくらい把握できるかが重要。そして、それを授業に反映させる。
工藤
なるほどね。生徒の興味はどうやって見極めてたの?
津久井
授業への意見や改善案についてのアンケートを取るときに、「書いたら授業が変わるな」って生徒に実感させるようにしてた。こういう声があったから今回から授業のここを変えるって宣言して。ちょっとズルい感じもするけど、生徒にもアピールして。伝えても何も変わらないって思われたら、生徒は声を届けようとは思わなくなるから。
工藤
それ大事だよね。あと津久井さんの授業を思い出してみると、生徒がたとえ言いたいことの半分くらいしか言えてなかったとしても、うまく受け止めて広げてあげてた気がする。「あなたがそう言ってくれたから、次につながるね」とか、「次はこんな問いが出てくるね」とか。ポジティブに返して、生徒が授業に貢献してる感覚を持てるようにしてた。
津久井
生徒が話してるときに次は誰にどう振るかを考えたり、あえて強く共感をしたりもしていたな。教科書には社会的な話題が増えてきていて、昔に比べると難しくなってる。でも目の前にあるテキストのレベルは変えられない。ただ、そのテキストのどこをどう取り上げるか、どう切り口を作って生徒に興味を持ってもらうかは、教室にいる先生の腕の見せ所だし、そこは切り口の問題だから、AIや教材任せじゃなくて先生の教材研究の力っていうか、鍛え所だと思うな。
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※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
工藤洋路 くどう・ようじ 東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程 修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授
・趣味はランニング。出張先でのランが好き。大阪城周回、博多大濠公園、神戸みなとのもり公園でのランが特に好き。
・お気に入りのカフェメニューはプリンアラモード。
津久井貴之 つくい・たかゆき 群馬大学、「NEW CROWN」編集委員
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て 、現在群馬大学共同教育学部講師
・趣味は朝の散歩後にレトルトカレーを食べること。
・お気に入りのカフェメニューは、ホットコーヒーとモンブラン。

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