工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学
2025年11月14日
津久井
前回、英語が得意な大学生がどんな風に勉強してきたかを見ていったら、小中学校から少しずつ始まった変化が、大学生にも影響を与えていることに気づいたよね。
工藤
小学校で英語が正式に教科化されたのは2020年だけど、それ以前からいろいろと助走的な取り組みが始まっていたから、今の大学生にも「小学校の授業で英語をやっていました」と言う学生がけっこう多いんだよね。
津久井
今日はそうした背景を踏まえて、最近の大学生を見ていて「変わってきたな」と感じる点を整理してみようか。
大学生も活動量UP
津久井
まず感じるのは、「活動慣れ」している学生が増えたということかな。小中学校ではもちろん言語活動をたくさん経験しているし、高校でも活動を取り入れる授業が増えてきている。だから、大学生もグループワークは手慣れてる。
工藤
それはあるね。
津久井
自分が大学生だった頃を思い返すと、そもそもグループワークなんてほとんどなかったし、教室の構造自体がそんなことをするようにはなってなかった気がする。
大学入試の変化がもたらす変化
工藤
それと、最近は大学入試でもスピーキングテストを実施しているところが、まだ少ないけれど、いくつかあるよね。入試にスピーキングを取り入れている大学だと、それに向けてスピーキングの対策をやった学生も増えているかもしれない。正式な調査を見たことがあるわけではないけど、感覚的にはそう感じるよ。
津久井
まだ高校で指導していたときのことを思い出すと、スピーキングを課す大学を目指す生徒は、共通テストが終わってからきっちり対策をしてたね。
実情としては高1・高2のときからバランスよくスピーキングの対策をしているっていうわけではなかったけど、その間に旧来型の英語力をきちっとつけておけば、高3になって志望校が決まった段階でスピーキングの対策をしっかりすれば、現状の入試に対応できるくらいの力は十分つけられていた気がする。
工藤
私立大学とかだと、新入生の大半を推薦で確保しているパターンも増えているから、いわゆる英語のペーパーテストを経験していない学生も増えてきているね。
そうなると、試験対策を経てきていないから、高校での指導方法がダイレクトに英語力に影響を与えているわけで…。スピーキングもやっているし、訳読もやっているし、いろんなことをやってはいるけど、中途半端になってる感じはする。
津久井
中途半端っていうと、どういう感じ?
工藤
たとえば、高校でスピーキングに取り組んできた影響か、訳読も「やったことはある」と言うけど、ちゃんとやり込んでいない印象がある。文法の明示的な知識がしっかりあるかというとそうでもなくて、文法を説明する言葉を知らない学生もいる。もちろん、昔の学生にはその明示的知識があったからといって英語がバリバリ使えたかっていうとそういうわけでもないけどね。
でも今の学生は、スピーキングも訳読も経験はしているけど、どちらも“それなり”で終わっている可能性がある。
津久井
たしかに、「じっくり読む」経験が不足しているのかなと感じる場面はあるね。大学の授業で英語の指導法についての本を黙読させようとすると、ちょっとどんよりした空気になる。
工藤
共通テストの対策とかでは、それなりに読む経験はしてきてるはずだけどね。ただ、あれは答えを探すために読んでいるわけであって、理解確認のための問いがない状況で、それなりに長い英文を頭からしっかり読み進める力とはまた別なんだろうね。
津久井
そうそう、何のために読むかという目的はわかっていても、問いがないと難しいって感じる学生が多いんだよね。
工藤
一定の分量の英文を読んできて、次の授業でその内容について要約をしたり、ディスカッションをしたり、そこに書いてある知識を覚えたりするような力は、すぐには身につかないからね。訳読の時代に戻ってほしいわけではないけど、高校の段階で、「英文を頭から読む」トレーニングはもう少し積ませてほしいなと思うよ。
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※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
工藤洋路
くどう・ようじ
東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授
・高校教諭時代に担当した部活動は、陸上部
・カフェでよく注文するのは、カプチーノやフルーツジュース
津久井貴之
つくい・たかゆき
群馬大学、「NEW CROWN」編集委員
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在群馬大学共同教育学部講師
・指導のモットーは、固定観念にとらわれずにチャレンジしていく
・カフェでよく注文するのは、ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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