三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第39回:英語が得意な大学生は小中高でどう学んできたか

工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学

2025年10月30日

津久井

みなさま、お久しぶりです。

 

工藤

「Coffee Break」って、2017年に始まったんだね。お互い当時とは所属も変わって、今では二人とも大学で教員をしてるね。

 

津久井

工藤さんはもう長く大学で教えているけれど、私もここ数年、大学の教員として教える中で、語学力を「少ない量で効率よく伸ばす」というのは限界があるなと感じるよ。

 

工藤

そうだね。やっぱり、ある程度「量」がものを言うところもあるよね。今日は、英語が得意な大学生はどんな風に英語を勉強してきたかについて話してみようか。

やっぱり英語力の向上には“絶対量”も重要

工藤

個人的には、英語教育の研究会や教科書、指導要領などで推奨されているような“型通り”の学習をしていなくても、しっかり「量」をこなしている学生は、確実に力がついている気がするよ。

 

津久井

たしかに。「これは力がつく方法です」とか「本当にいい方法です」って紹介された学習法でも、ちょっとやってみてすぐやめてしまうようだと、効果は出ないよね。英語が得意な大学生に聞いてみると、「どっちかの量」をしっかりやっているなと感じるよ。

 

工藤

「どっちかの量」というと?

 

津久井

一つは、従来型の「ひたすら英文を読んで問題を解きまくる」勉強を、大量にこなしてきたタイプ。もう一つは、帰国子女ではなくても海外経験が豊富だったり、洋書を読むのが好きで大量に読んできたタイプ。いずれにしても、「量」が圧倒的なんだよね。

 

工藤

極端な話、「訳読はダメ」という風潮はあるけど、たとえば毎日英文を10ページ読んで訳していれば、それだけ多くの英文に触れて意味を深く考えるわけだから、英語力は確実に伸びるよね。要は、先生と学習者本人が「こうすれば学力が伸びる」と信じている方法で「量」をこなせば、結果的には英語力が伸びるんじゃないかと思うね。

 

津久井

その信頼関係が大事だよね。最近の流行りとしては、「量を少なく・宿題ゼロに」だから、いざ量をやらせようとするとすぐ生徒は「えーっ」って反応する。でも、「少なくともこの先生が言うことは信じてやってみよう」、と思える関係性を築いて、量に取り組ませることは大切だと思う。

 

英語教育は、結局あまり変わっていない…?

津久井

大学生を見ていると、従来型の学習方法でしっかり量を積んでいる学生も多くて、「英語教育ってやっぱりそんなに大きくは変わっていないのかも…」とも思うね。道のりは長い。

 

工藤

でも、小中高の授業を見ていると、我々の世代ではやっていなかったSmall Talkを導入している場面もよく見かけるし、変化はしてるよね。でも授業時間の全部を使っているわけではないから、劇的な変化が起きているわけではないのかもしれない。

 

津久井

小中学校がまず変わって、そのあとに高校・大学が変わっていく流れだよね。小中学校は明らかに変わってきてる印象があるよ。

 

工藤

そうだね。でも思い返してみると、大学生も徐々に変化している気がするな。次回は、大学生の英語学習の変化について、もう少し考えてみようか。

 

※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授

・高校教諭時代に担当した部活動は、陸上部

・カフェでよく注文するのは、カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
群馬大学、「NEW CROWN」編集委員

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在群馬大学共同教育学部講師

・指導のモットーは、固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは、ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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