工藤洋路,津久井貴之
玉川大学,お茶の水女子大学附属高等学校
2017年12月04日
工藤
今回のテーマは,「教員自身の英語力UP」ということで…,
中高の先生に求められる英語スキルが英検準1級,と言われてしばらくたちますが,教員自身に求められる英語スキルについては,どう思われますか? 毎日英語を聞いたり,英会話学校行ったり…などできると良いとは思いますが,現実にはなかなか…。
津久井
厳しい話になってしまうかもしれないけど,でも,基本中学校の教科書に載っているレベルのことを自分の英語力でこなせないといけないよね。
例えば,NCのProjectやUSE-Speakでもいいんだけど,例えば日本のふろしきを紹介するようなときに,モデルたり得ないものを見せるようなのはアウトだし,生徒には「即興でやるんだ」と言いながら実は先生は事前に一生懸命スクリプトを用意してやらないとできない英語力っていうのは,本来的にはまずいと思う。
工藤
モデル文を見せるために,先生が事前に5~6文しっかり覚えてくるのはいいとしても,それを生徒に示すときに余裕があるように見えないというか,「覚えてきました!」という感じだと,とくに即興スピーキングのモデルとしては適切だとは言えないよね。
津久井
生徒が「ああなってみたいな」と思えるかどうか。
工藤
もちろん,準備なしで適当に授業してしまっていたら,もっともっとリスペクトされなくなってしまうので,準備すること自体はまったく悪いことではない。
津久井
でも,本当,先生は場数だからね。最初は苦しくても,何度もやるうちにね…。
工藤
そうそう,自分のときのことを考えてもそうだったし…初任のときなんかは,英語で行うところはやっぱり実習生と同じで,原稿を書いて覚えて臨んでいたけど,覚えたはずの原稿を忘れてしまったときはグダグダになったり…。準備したスピーチを生徒が行うときも同じかもしれないけど,焦って思い出そうとして変な間ができてしまって。本当は,その場で英文を作れるスキルを持っていなくちゃいけないんだけどね。逆に,英語の先生がその場で作れないような難しい英語なら,それを生徒に向けて話しても意味が無いわけで。
津久井
実習生なんかには,模擬授業やカラ授業やれ,なんていうけど,先生になってからだってそういうのやっていいと思うし,自分でもやらなくちゃいけないなと思っています。
驚くほど簡単な,教師の英語力UP術
工藤
津久井先生自身はどうしてる? 自分の授業力UP,というか,英語力UP,というか…。
津久井
研修会でも言っていることだけど,NHKのラジオ講座をやってみて,自分のやった授業はやっぱり聞かなくちゃだめだと思った。
工藤
うん。自分で聞いてみると…あーちょっとまずかったな…とか気付くもんね。
津久井
聞かない限り,気付かないよ。先生方も,それは絶対やったほうがいいよね。教師の英語力UPって簡単だと思いますよ。自分の英語を聞けば,いやでも自己嫌悪に陥りますから。ちょっとやばいな,やらないと,と思うから。周囲に言われてやるよりも,自分で気付くと行動につながるのは,生徒の学習と一緒じゃないかな。
工藤
そうだね。
津久井
生徒の反応は気にしているけど,自分が話した英語がどうかって意外と注意がいかない。「みんな笑ってた! よかった!」で済ましちゃうことが多いけど,実際は何に対して笑っているのかって,怪しいなって。ジェスチャーが面白かったかも,トピックが面白かったのかも…。
工藤
別途英会話スクールに通うのが大変なら,授業を録ればいい。50分毎回録って全部聞くのは大変だから,最初の1分だけでいい。最初の1分録って聞くだけで,英語は変わると思う。
津久井
自分も実際,授業の冒頭だけ録っているときありますよ。
工藤
1分の中でも気付くよね,絶対。
津久井
気付く,気付く。
工藤
声の大きさだったり,トーンだったり,生徒とのインタラクションだったり…。気付いたとしても一気には直せないから,逆に1分くらいでよくて,次の授業で改善してやってみてどうなるか,また1分録ってみる。
津久井
講演会で,よく「教師自身の英語力UPどうしたらいいですか」って質問もらって,毎回「ICレコーダーで録ってください」って言っているけど,やっていただいているのだろうか。あんまり「やっています!」という声は聞かない気が…。
理由は,自分の英語を聞くのが嫌だから。でも,一番手っ取り早く効率的にできる方法は間違いなくこれ。
工藤
別途何もしなくていいから。ただ,いつもやる授業を録る,それだけ。
津久井
生徒にやりとりして相互評価をしよう,自分の英語を振り返って自己評価をしよう,と課しているのに,教師自身が自分の英語力を振り返らないのはまずいなって,自分は思ってて。
さらに言うなら,自分なんかちょっとずるくて,「先生だってこうやって自分の英語を確認しながら勉強しているんだよ」なんていうと,生徒だって「先生も言うだけあって,自分もちゃんとしてるんだな」って思ってくれる。こんな効果だってある。
工藤
本当はね,学校で教員同士見合って他人の意見を聞くっていうのが一番いいけど,現実的には難しいから。
※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
(掲載:2017年12月4日)
工藤洋路
くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授
・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部
・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース
津久井貴之
つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭
・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく
・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー
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