三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第41回:英語の勉強方法がわかりません

工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学

2025年12月01日

工藤

研修会に行くと、「Coffee Break読んでます!」とお声掛けいただくことがあるよ。講師紹介に「工藤先生の好きな飲み物はフルーツジュースです」って付け加えてくれたり。プロフィールに、研修会後に食べたいものでも書いておこうかな(笑)

 

津久井

見てくれてる人はいるんだね。ニューヨークチーズケーキが出てきたことはないけど(笑)

 

工藤

最近「英語の勉強方法がわからない」って生徒が増えてるって聞いたから、その原因について考えてみようかな。

やることが多すぎて、何が効いているのかわからない

工藤

以前私も関わった高校3年生対象の調査があるんだけど、その調査によると、英語が得意と言っている生徒でも「英語の勉強方法がわからない」って答えてるらしいんだよね。

 

津久井

英語ができる生徒って、どんな勉強してるんだろうね。

 

工藤

いろんなことやってるよ。アクティビティもやってるけど、伝統的な学習も。でも、いろんなことをやっているがゆえに、何が自分の英語力の向上に寄与してるかがわからなくなってるんじゃないかな。

 

津久井

我々の世代は訳読だけだったから、それ以外の方法を知らなかったよね。

 

工藤

中学生も同じような状況で、まじめに英語を勉強している生徒でも、目標を持って自分で工夫しているわけではなくて、学校の先生がこうやりなさいって言った勉強をやっているみたい。訳を書きなさいと言われたら訳を書くけど、それをすごくいいと思っているわけでも、ダメだと思っているわけでもない。先生がやれっていうことをやっているから、先生の指示がなくなったら何をすればいいかがわからなくなる。

 

津久井

授業の予習復習に限定した勉強法だけが伝わっていて、「英語の勉強法」って言われるとわからないんだね。

英語力を伸ばすためには、家庭学習が肝要

工藤

大学生でも、夏休みで何の課題もない数か月間、一度も英語に触れていない学生がけっこういたりする。おそらくその期間で英語力は下がっているんだろうけど、そういった学生でも、TOEICで800点~900点くらい持っている学生だと、秋学期になって授業が始まってまた英語を勉強すれば、英語力は戻る。でも戻すだけではなくさらに伸ばすにはかなり勉強しないといけない。そうなると、授業だけで英語力を「伸ばす」のは難しいよね。

 

津久井

高校でも言語活動が増えてはいるけど、言語活動が入ったことによって英語力が伸びるというよりは、授業の前に単語を確認してくるとか、授業後に間違ったことを書きだして調べてみるとか、活動プラスアルファで伸びていくんだと思うんだよね。

 

工藤

そうそう。週に4回か5回の授業だけでは足りないから、中高生の頃から家庭学習のやり方を一緒に寄り添って考えてあげる必要があるかもね。

 

津久井

家庭学習って、先生が「これをやりなさい」って言っても続かないことが多いよね。やらされている感があると、どうしても受け身になっちゃう。

 

工藤

他の教科の勉強もしているから、英語に対してしっかりした目標がないと、後回しになって、結局はあまりやらないことになってしまう。なので、とりあえず何でもいいから、英語を勉強するための目標や理由をうまく作ることが大事かも。

 

津久井

目標があると、勉強が自分ごとになるもんね。先生が設定したゴールじゃなくて、自分で見つけたゴール。

 

工藤

そう。あと、勉強のやり方も「先生に言われたから」じゃなくて、「自分にはこの方法が合っている」と感じられると強い。単語一つ覚えるにしても、伝統的な自作のカードでやるのがいい人もいれば、単語帳がいい人もいる。

 

津久井

中高生のうちは、そういう“自分のやり方”を試す期間でもあるよね。失敗してもいいから、いろんな勉強法にチャレンジしてみる。で、そのためにはいろんな学び方があることを知って、自分に合った方法を探していく必要があるね。

 

工藤

それをサポートするのが先生の役割だと思う。英語を教えるのが英語の先生のメインの役割だけど、英語の学び方を一緒に考えたり、時には具体的な方法を教えてあげたりするのも必要だね。最終的には、生徒が自分で方法を選べるようになるのが理想。

 

津久井

結局、英語力が伸びる生徒って、授業の外でどれだけ英語と触れ合っているかだよね。家庭学習がうまく回ると、授業ももっと楽しくなる。

 

工藤

そうだね。授業と家庭学習がつながる仕組みをどう作るか。これからの英語教育の鍵はそこにあると思うな。

 

津久井

そして生徒のモチベーションを保つために、例えば先生が毎週担当を決めて、「今週のちょっと気になった英語」みたいなものをクラスで紹介するとか、学習を共有する場があって、クラスメイトが反応してくれたりすると、またやってみようかなって気持ちにもなるよね。「英語を使って楽しかった」、「難しかったけど通じた」とかの記憶は、長くモチベーションを支えてくれる気がするよ。教室っていう学習環境だって、何もしなくてもそこに「あるもの」じゃなくて「先生と生徒でつくるもの」っていう感じで、先生と生徒が一緒になってやる気を持続させる環境をつくっていくことが大事だね。

 

※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授

・高校教諭時代に担当した部活動は、陸上部

・カフェでよく注文するのは、カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
群馬大学、「NEW CROWN」編集委員

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在群馬大学共同教育学部講師

・指導のモットーは、固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは、ニューヨークチーズケーキとコーヒー

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