三省堂 発行書籍
先生のための入門書 ―著作権教育の第一歩

著作権教育をわかりやすく! 新学習指導要領の実施に伴い、迫られる各教科での著作権指導。はじめて取り組む教師に向けた平易で丁寧な解説と 小・中・高等学校における実践モデルを多数収録した最新入門書。

  • 監修=川瀬 真、編者:大和 淳・野中陽一・山本 光
  • 2013年 2月 15日 発行
  • 定価 2,090円(本体1,900円+税10%)
  • B5判  144頁  ISBNコード 978-4-385-36498-8
  • 対象 小・中・高

目次

<理論>
  理論1 著作権教育の第一歩を踏み出そう
  理論2 引用から著作権を学ぶ
  理論3 小学生と学級担任の著作権に関する意識の実態―著作権に関する意識調査の結果から―
  理論4 高校生,大学生の著作権に関する意識の実態―著作権に関する意識調査の結果から―
  理論5 著作権教育の課題

  Column1 「肖像権」は著作権制度の一部?
  Column2 歌詞やメロディは,何小節までならOK?
  Column3 出典を明示すればいいんでしょ?
  Column4 告訴されなければ大丈夫なの?

 <実践モデル>
  モデル1 著作権に気を付けた情報発信(小)
  モデル2 作品を大切にするとはどういうことか考えよう(小)
  モデル3 著作物を尊重する態度を育てよう(小)
  モデル4 中学校における「引用」の授業(中)
  モデル5 問題事例から学ぶ著作権教育(中)
  モデル6 著作権を意識して「私たちの「まち」をデジタルストーリーで発信しよう」(高)
  モデル7 リーフレットによる著作権教育(高)

 <資料>
  「小学校学習指導要領」における著作権等の記述
  「中学校学習指導要領」における著作権等の記述

 おわりに
 執筆者一覧

はじめに

内閣府の消費動向調査(2012年3月)によれば、一般世帯におけるパソコンの普及率は77.3%、携帯電話の普及率は94.5%となっており、総務省の通信利用動向調査(2011年12月)によれば、過去1年間に世帯で少なくとも1人はインターネットを利用したことがあると回答した世帯の割合は86.0%となっている。このように私たちの日常生活において情報通信機器の利用は確実に定着している。文部科学省の委託調査「子どもの携帯電話等の利用に関する調査」(2009年5月)でも、携帯電話やパソコンを使って様々な目的でインターネットを利用している子どもたちの割合が、小学生から学校段階を追うにつれて増えている状況がわかる。

 一方、ファイル共有ソフトや動画投稿サイトを利用するうちに、音楽、コミック、動画などの他人が創作したコンテンツのファイルをアップロードした結果、法的責任を問われる者が、未成年者の中にも見られるようになってしまっている。

 最近の著作権法の制度的な変更の主なものを拾いあげてみると、2003年の改正により、授業の過程で使用するための著作物の複製について、授業を受ける子どもたちにより行うことについても許諾不要とするなど教育活動に関連する例外規定が整備された。その後、2009年の改正により、違法にアップロードされたコンテンツを、それが違法なものであることを知りながらダウンロードすることについては、たとえ私的使用の目的であっても無断で行えば民事的な責任を負うこととされている。さらに、このたび2012年の改正により、CDやDVDとして販売されている音楽や映画、あるいは有料配信されている音楽や映画などの作品が違法にアップロードされている場合、それが違法なものであることを知りながらダウンロードすることについて、私的使用の目的であっても無断で行えば刑事罰も科されることになった。この改正では、附則において「国及び地方公共団体は、未成年者があらゆる機会を通じて特定侵害行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、学校その他の様々な場を通じて特定侵害行為の防止に関する教育の充実を図らなければならない」と規定されている。

 このように学校教育では、子どもたちに著作権について正しく理解させるための指導の充実が期待されている。
また、子どもたちに対する教育とは別に、学校ではその教育活動に関する情報を保護者や地域に対して積極的に発信していくことが求められており、ホームページや学校だより(プリント)などを通じた広報活動が活発になってきている。その際、内容の一部に文章、図、写真などで教職員が作成したもの以外のものを利用することもあり得るが、このような場面での著作権の取扱いも適切に行う必要がある。

 学校には教科書、図書館資料、視聴覚教材、子どもたちの作品などがあふれ、「著作物の宝庫」ともいわれるだけに、それらの著作物の取扱いも多様である。それに加えて冒頭に紹介したような社会全体の情報化という大きな流れがあり、学校関係者の中では、情報モラル教育の中でも著作権に関する課題が注目されるようになってきている。

 近年、著作権教育に関する先進的な取組を進めている学校も見られるようになってきたが、全国的にみると、子どもたちに対するもの、または教員に対するもののいずれについても著作権教育はまだ緒に就いたばかりではないだろうか。どのような場で何をどう教えるかについて、様々な学校で実践上の試行錯誤が重ねられ始めており、それらが収斂されて効果的な指導法などが確立していくものと思われる。

 このたび、一般社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)からの支援を得て、とくにこれから著作権教育に取り組もうと考えている学校の関係者に向けて、著作権教育に関する理論と実践事例を紹介することを目的とした書籍の刊行が実現した。

 とかく難解なものと考えられがちな著作権制度について、どのような視点で取り組めばよいのか、具体的にどのような先行事例があるのかという現場の教員の素朴な疑問に対し、執筆者一同、少しでも応えることができればと考えている。そして、これを通じて著作権教育のネットワークがさらに一層広がることを願っている。
2013年2月
執筆者代表 大和 淳

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