VISTA
English Series I
東京都立豊島高等学校
福田正治
2.本文理解の活動
これは従来も授業のもっとも中心的な位置を占めてきた活動です。実践的コミュニケーション能力の重視、という観点から見た場合、従来の Reading
活動も、発信者の意図を正しくくみ取りながら主体的に読むという活動がコミュニケーション活動の基礎であるわけですから、当然授業の中心になってきます。
(1) 言語の使用場面と働きの理解
この課の言語の使用場面と働きの設定は架空のもので、スピーチの主体たる友子は、8課の加納沖さんや10課の忍足亜希子さんのように実在するインパクトのある
speaker ではありません。しかし、本課の文章があくまでも友子の視点に貫かれた言語表現であるという前提は理解の背景にきちんと据えておきたい。言語表現の背景に必ず人間の存在があるということは、実は小さくない事柄だろうと考えるからです。
また本書には予習ノート的なものはありません。事前の題材背景の説明と、語彙指導にもとづいて、教室で本文を読み、どのような内容がどのような意図でどのような表現になっているか、生徒の発見を促すことになります。つまり、何を言っているかはもちろん、なぜ、いかに述べているかまでもくみ取らせたいものです
(2) Listeningによる理解
本文理解の第一ステップは Listening です。予備知識と語彙に対する馴染みのできた段階で、本文を聞くわけですが、テキストを音声化されたものとして聞くことにより、フレーズのまとまり、文と文のつながり、全体の音調などを聞き取ると、文章全体の言わんとするところがより分かりやすくなってくるはずです。聞きながら重要だと思う箇所に丸をつけさせる作業を伴うのもいいでしょう。
(3) Readingによる理解
そしていよいよ本文理解本体の作業に入っていきます。この作業はいわゆる訳読ではなく、聞いて理解する、読んで理解する、という作業で、学習の関心の比重は、個々の文の正確な理解もさることながら、文章としての文と文のつながり、論旨の展開の仕方、筆者の主張はどこにあるか、などに置かれ、それらを読み取る発見が授業を活性化するようにもっていきたいものです。
留意点は、this, that, it など指示語や代用表現の指すものの正確な把握、too,
also, even, only, (an)other など、文脈で意味が決定される形容詞・副詞等の正しい理解、but その他接続を表すことばの文脈的意味、語のつながりや内容のつながりなど、前後の文同士の間に必ず存在する表現上のつながり、等々です。この点、指導書の本文解説もそうですが、第5分冊の『Teacher’s
Book』の編集が本文そのままの組み方で、文章の構造がビジュアルに把握できるかと思います。部分がただ集まっても全体にはならないわけですから、部分と部分の関係、部分の全体の中での位置づけに留意します。
(4) 理解の伴った音読
次に、内容が分かった段階での音読の活動。個々の文の正しいフレージング、適切なプロミネンス、意味のブロック化などに意識を向けさせ、意味内容と文章構造を関連させた理解を反映した読みが求められます。そのためにはまとまった分量の英文を読むように促したいので、多くの生徒を当てるために、一人一文ずつで交替していく方式とのジレンマに悩むところです。
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