VISTA
English Series I
東京都立豊島高等学校
福田正治
1.導入
題材の導入にあたっては、学ぶ意義を理解し、興味を持って取り組めるようにする動機づけの意味がまず第一。第二に、知らないことや知る意味の感じられないことを暗号解読的に読むより、知っていること・知りたいことを英文で聞いたり読んだりすることの効果です。ある程度知っている内容が、英語で意図を持って表現されている、それを音声面、文字面、論理の展開の面で見ていく楽しみで、教室には知っていたことに加えて新たな発見がある、気づきに満ちた喜びがほしいと思います。
(1) 題材とそのねらいの導入
題材を取り上げた意図や学ぶ意義の学習全体に占める位置づけは指導書第1分冊『解説と指導』編の「課のねらい」「題材解説」で確認します。自分たちに無縁の話題はなく、遠いと思っていた話題でもすべて実は身近な問題であると思ってもらいたいわけです。
本課は、話題が新エネルギー問題で社会の関心も高く、資料も豊富にあります。映像資料としては、温暖化防止などの国際会議の後、テレビで特集番組が随時組まれます。こうした番組は教室で紹介するにはやや内容が専門的ですが、研修用に活用できます。より一般的なものでは「すてきな宇宙船地球号」(テレビ朝日)のシリーズが本にもなっています。2002年8月には「シリーズ温暖化防止と向きあう
Vol.5 未来への挑戦〜クリーンエネルギーの時代へ」が放映されました。最後にカリフォルニア州、パームスプリングスの風力発電、林立する風車群の映像が映りましたがさすがに壮観でした。日本の風力発電を扱った番組としては、山形県立川町の取り組みを扱った「プロジェクトX
突風平野、風車と戦え!〜執念がエネルギーを生んだ」(2002年2月放映/NHK)などがあります。どのくらいの時間が映像資料の提示にさけるか、事前にどの部分を見せるか考えておく手間の問題などはありますが、映像の持つインパクトは他には代えがたいものがあります。
図書資料等については教授者側の事前の教材研究として指導書第1分冊『解説と指導』編の「題材解説」の末尾にリストを掲げてあります。教室での教材教具としては、図書館の児童書のコーナーに、写真や図版が豊富で、解説も簡にして要を得たものが意外と多いので申し添えます。環境問題を扱った大型本も多くありますが、風力発電について筆者が10年ほど前に扱ったとき、ポプラ社の「これからのエネルギー」シリーズ第5巻『風力エネルギー』(マイク・クロス著、桜井邦明訳)が大きい写真や図版が豊富にあって役立ちました。また、指導書第2分冊『題材資料』編に背景情報、資料、写真がありますので、状況に合わせて適宜コピー、印刷して利用できます。宮古島についてもいろいろなものが入手可能です。春のトライアスロン大会は、テレビでレースの模様が放送され、月刊『トライアスロン』という雑誌もあります。
本課は日々新たな展開を見せる今日的な話題です。身近な新聞記事などの中にも生徒の興味を引き、動機づけに使えるものも数多くあります。新聞の縮刷版も目次をうまく利用すれば求める記事が簡便に得られますし、また毎月全国の主要な新聞から分野別に記事を集めた『切り抜き速報』(ニホン・ミック)という便利な刊行物もあります。
また、関連する他教科の教員と連携して資料教材を融通し合うと、ふしぎと生徒の意識の中に、今学んでいることが「英語科」という教科の枠だけにおさまらない「世界」そのものについて学んでいるのだという知的興奮が生まれてきます。教科科目の枠組みで仮に分節整理されてはいるが結局のところ自分たちは、これから自分たちが生きていく「世界」について学んでいるのだという誇らしい気持ちが生まれてくるのです。
(2) 音声による導入(Oral Introduction)
本書には教科書本体に英語による Introduction はありません。モデルとして指導書第1分冊『解説と指導』編に、Basic
な A 案(70語)と、Advanced な B 案(約100語)とを掲載しています。また、ALT とのTeam-Teaching を想定した
Dialog Introduction が第4分冊『ALT用指導書』にあります。教室の実態に応じて、それぞれ工夫します。
(3) 語彙の導入
本文を読むときに授業の流れが寸断されてしまう要素の一つに語彙におけるつまづきがあります。「昨日、本屋に行って○○の本を買って読んだら△△だった」という文の○○や△△が分からなければ話にならないわけですから、語彙の指導は手が抜けません。これについては第3分冊『授業案集』の中にある
New Words のセクション、第5分冊 『Teacher’s Book 』などがヒントとなります。生徒用ワークブックは各課最初の1ページを
Words & Phrases にあてていますから、これらを利用してあらかじめ新語への馴染みを作っておきます。その際、学習時には音声イメージを伴わないと能率が悪いので必ず発音にも留意させます。また、ただ機械的羅列的に扱うのではなく、各語彙にまつわる文化的背景にも目を配ることもしたい。『英語基本語彙事典−3000語の背景』(中教出版)、『アメリカ日常語辞典』(田崎清忠、講談社)、『基本語義イメージ辞典』(政村秀實、大修館)などが参考になりますし、各種語源辞典などが意外な情報を与えてくれます。また、最近の辞書類は親切ていねいで、例文などもその語の意味が端的に分かるものが多く掲載されています。例えば
windmill は、「風車」で終わりではなく、『ジーニアス英和辞典』(大修館)では「風(wind)による製粉所(mill)」と語の成り立ちを示し、語義欄で「1.風車(小屋)《水の汲み上げ、製粉に利用する.豊饒・収穫の象徴》」とあります。『グローバル英和辞典』(三省堂)は語義に「風車小屋」と並んで「(風力発電用の)風車」、を出しています。英英辞典では語義で
a tall building with sails (=long pieces of wood or metal) that turn in
the wind and produce power to crush grain or produce electricity (Macmillan
English Dictionary, 2002)、例文で Gift shops in Holland are full of wooden
shoes and miniature windmills. (Cambridge International Dictionary of
English, 1995) など楽しいものが載っていて参考になります。さらに、扱う順序は出現順が普通でしょうが、全体を見渡し、既出語を含めて語彙間の関係を示したプリントを用意したり、その課のキーワードを空所に入れさせるようなものも工夫できます。
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