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英語教育リレーコラム
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発達段階に応じた活動を探る─教師の目で見た高校生と彼らの活動のサポート

福田正治(都立豊島高等学校)

 高校ではオーラル・コミュニケーション、ライティングなど、4技能の一つに特化した科目が登場してくるが、ここでは英語 I・II、リーディングなど、「読む」ことを中心にした科目について考えることにする。

1.高校生の発達段階の特徴
(1) 多様な生徒、多様な進路
 高校生になると社会に出るときが間近に迫ってくる。高校には普通科、職業科などいろいろな種類の学校があり、生徒たちはさまざまな進路に応じて大きく「輪切り」にされてそれぞれの学校に行く。同じ種類の学校の間でさえも「輪切り」が徹底していて学校間格差が生じている。(例えば、教師にとってA校で培った授業の工夫がB校ではまったく意味をなさないということが多い。教師は異動するたびに授業のやり方をゼロから工夫し直さなくてはならない。)さらに、高校生ともなると、一つの学校内でも生徒の学習スタイルはすでに確立していて多様である。英語学習に対する動機づけも進路に応じて異なり、生徒一人ひとり具体的かつ個性的である。

(2) 自分を考え、世界を考える
 高校の年代の生徒は、自意識が強く多感で、将来の自己決定にも迫られ、進路の実現のために自分とは何者であるかについて深く考える。と同時に、自分が生きていく世界全体を抽象的、理想的に考える青年らしさをもっている。自分を磨き、人の役に立つ存在になろうとする過程で高校生は案外と「純粋」で「健全」である。またchorus readingなど学年を追うごとに生徒の口は重くなる。一方、言語のもつ法則性など、理屈に興味をもつ生徒もふえる。

(3) 中学までと高校卒業以降へのギャップ
 中学生が大学生になるまでの間の時期、または社会に役立つ職業人になるまでの時期が高校だが、特に進学校では、新指導要領下の中学を卒業した生徒が短期間で大学の入試問題に取り組めるまでにするため、教師はそのギャップを埋めることに苦労し、大学等の入試の対応に追われることが多い。

2.高等学校の英語の学習活動に求められていること
 読解を中心にした学習活動において、彼らの知的好奇心に応えるべく読むに値する題材が選ばれた上で、どの学校のどの生徒もが取り組む学習項目は、依然として語彙、文法・文型、内容理解(日本語訳ではなく)である。
 学力面でも多様であり、学習動機の面でも具体的で個性的な生徒に対し、自己の在り方、世界での生き方という彼らの切実な関心に応えられる題材を選ぶことが必要だ。さらに進学校においては、短期間で大学入試に耐えられるだけのレベルにまで学力を引き上げることが生徒の学習活動に求められる。

(1) 語彙
 その日読む文章に出てくる新出語、重要語、連語等は、読解の流れを寸断しないためにも授業の冒頭などでまとめて学習する。発音と綴り字、接辞、派生語といった語の内部の説明も他に応用できることは学習の対象となる。英語と日本語との意味のずれ、文化的背景なども生徒の関心をひく。さらに、動詞・形容詞などの中で、語法面でぜひ習得しておくべき事柄の多い基本語彙にも注目する。入念に選んだ例文や、ちょっとした作業を通じ、これらを学べるようなプリントを準備することも多い。

(2) 文法・文型
 多くの教科書が、各課ごとにその課で学ぶべき文法項目をいくつか用意して編集してある。授業では生徒の実態に合わせ、簡潔で端的な説明をこころがけて(深入りしすぎず、例外などあまり細かいことは言わずに)少しでも生徒たちの直感に訴えるように、視覚的にも工夫する。

(3) 内容理解
 生徒たちの「日本語訳」への執念には並々ならぬものがある。そのこだわりを一概に否定せず安心を与えながらも、文を左から右へ順々に読んで理解していく術を身につけさせる。文ごとの理解をした上で、文と文の関係に注意をしながら筆者の意図をくみ取る「段落の読み」の段階に入る。
 すでに知っていることの上に知らなかったことを積み上げていく発見の喜びを授業の核にするために、題材の背景となるもろもろの事柄は極力生徒にプリント等で提供する。これから読もうとするものに対する興味を引き出すことで、内容の理解も深まる。

 クラブ活動などで多忙な彼らに、家庭学習の時間を確保させるのは至難の業だ。毎日きめ細かく宿題を課すことも減る傾向にあるので、学習に対する彼ら一人ひとりの主体的な姿勢がいっそう重要になる。
 手段としての学習ではなく、知ることそのものの楽しさに動機づけられた学習を構築し、高校生の年代のメンタリティーにふさわしい方法論で、高校教育全体の中における外国語学習の位置づけをさらに探っていくことが求められている。

福田 正治 (ふくだ  まさはる)

東京都立豊島高等学校教諭。都立保谷高等学校、都立第四商業高等学校を経験。高等学校英語教科書『VISTA English Series』(三省堂)ほか、学習参考書の執筆も。

英語教育リレーコラム第3回
発達段階に応じた活動を探る
発達段階に応じた活動を探る─小学生だからこそできる活動 三浦邦子 (2005年7月12日更新)
発達段階に応じた活動を探る─中学校で行うべき活動とは 竹内 理 (2005年8月5日更新)
発達段階に応じた活動を探る─教師の目で見た高校生と彼らの活動のサポート 福田正治 (2005年9月13日更新)

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