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三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > 英語教育リレーコラム > [2] 「中学校の英語教育への提言」(小学) | ||||||||||||||||
はじめに ― たくましく英語を学んでいく子どもたち 小学校で英語を教え始めて、もう20年以上になる。大学でも教えているが、私にとって教えることの醍醐味を強烈に感じるのは、子どもと相対するときである。かれらが外国語(英語)を学んでいく姿が実にたのもしいからである。2点、例を挙げよう。 まず、子どもは英語らしいリズム・イントネーションを真似ることが大変上手である。小学校を卒業する頃には、子どもの音のほうが、自分の音よりずっとうまくなっていると感じることもしばしばである。
次に、大人と異なり、子どもは英語の音のかたまりにたじろぐことがない。年齢が低ければ低いほど、わからないことばにこだわらずに、先生の話に興味津々と耳を傾け、既知のことばを頼りにしてなんとか自分で情報を処理して対応しようとする。本当のことを話しあっているので、イントネーションも自然に聞こえる。“Yes!” “No!”
を言うときも真剣そのものである。本当に「ことばを使って」いるという手応えを感じる。 先生と心の通う英語の授業を! 授業の始めに先生の発する挨拶が、コミュニケーションの第一歩。時折ぶっきらぼうで、いかにもおざなりの感じがする挨拶に遭遇すると、「こんなはずでは?」という思いがよぎる。ほとんどの生徒にとって、教室だけが唯一の英語で行うコミュニケーションの場であることを考えれば、授業中は先生ができるだけ英語を使うように心がけて、教室の中に「英語を使う」雰囲気を作ってほしい。先生にとって、その態度を貫いていくことは相当な覚悟が必要であるにちがいない。しかし、「生きたことば」のやり取りを通して、生徒は「ことば」を学んでいく。「英語を使っている」という実感がわかない授業であれば、英語の勉強に対する興味も意欲も半減してしまうであろうし、本当の英語力もついていかない。 文法は大切。楽しく学ぼう! 英文を書かせてみると語順さえおぼつかない大学生が少なくない現状では、中学校で基礎学力をしっかり身に付けさせたい。小学校の高学年の授業では、情報量が多くストーリー性のある楽しい絵事典を使って、狙いとする表現(例えば進行形の構文)を繰り返し聞かせてインタラクションを楽しんでいる。小学校でこのような口頭練習をしていれば、同じ表現を中学校で扱うときには、中学生の知的レベルにふさわしい題材を使って、もっと中味の濃い言語活動にすることができるのではないか。単なる機械的なドリルでなく、意味のある(meaningful)楽しい文型練習にしたいものである。 英語らしいリズム・イントネーションで、音読や暗誦をしよう! 子どものときに培った英語のリズム感を生かして音読練習を楽しませてほしい。文字に書かれたことばも、ただ棒読みするだけであれば「生きたことば」とはほど遠い。例えば、テキストに載っている母親と子どもの対話文を「お父さんに指輪をプレゼントされてうきうきしているお母さんの声でやってみよう」と促すと、生き生きした楽しい音読になるだろう。生徒は英語らしく上手に音読できるようになると楽しくなり、何度も練習中の英文を口ずさむようになる。 音声とともに多読を楽しもう! 指導法を工夫すれば、小学校6年生までにCDを聞きながら簡単な英文を読みくだしていくことができるようになっている。中学生であれば、臨場感のある音声テープ(CD)を聞きながら絵本のページをめくっていくと、少々長いお話しであっても、あっという間に読んでしまうだろう。「中学生に絵本?」と思われるかもしれないが、絵本もばかにできない。図書館に音源付きの英語の本を備えておくとよいと思う。1語1語を日本語に直すことなく音の流れのままに大意を把握していく「直読直解」の習慣がつけば、読解力も向上する。 おわりに 音声に裏打ちされた外国語(英語)の学習でなければ、本当に英語を使えるようにはならない。英語らしい音を作ること、自然な英語をたくさん聞くこと、授業の中で生きたことばのやり取りをしながら文法を学んでいくこと、それは外国語(英語)を学ぶ上で最も大切な学習ストラテジーである。その下地を小学校で作っておけば、中学校ではその学習ストラテジーを活用して、今より質の高い英語教育を実践できるのではないだろうか。
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