三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2005年 夏号 3ラウンドシステムの提案(1) | ||||||||||||||||
限られた時間の中で量を読ませる。 正確に読ませる。 読んだ内容について主体的に考えさせる。
1. 読解力を過小評価してはいけない 私たちの分析した資料から一部を紹介する(共同研究「大学入試問題(英語)におけるライティング能力の測定方法」)。
上の表にまとめた調査は、2003年度に行われた200以上の大学学部の英語試験の中から、任意に抽出された43国立大学、63私立大学および大学入試センター試験の問題を、どういうskillが調査されたかという観点から分析しまとめたものである。表をご覧いただくとわかるように、読解力の項目数は1,754で全体の59.58%、すなわち全試験項目の中でおよそ60%を占めている。このことは生徒に読解力をつけることなくして、彼らが大学入試に成功することはほぼ不可能であるということを示している。 読解力の重要性は大学入試のみに限られたことではない。私たちはややもすれば、実践的コミュニケーション能力と言われると、口頭でやり取りすることだと考えがちである。しかしながら現実には、インターネットの普及により、送られてくる英語の文章の中身を素早く正確に読み取るという必要性が、どんどん増えているのである。読解力は過小評価できないのだということをここで強調しておきたい。 2. 高校生の読解力では何が問題なのか 読解力のスピードが遅すぎる。それが大きな問題である。私たちがやってきた分析から一部を紹介しよう(The Influence of the Test Taking Strategies on the Reliability of Test Items in English Tests 全国英語教育学会紀要Vol.14)。 この調査を始めるにあたっては、受験生諸君の読解力のスピードが遅すぎるのではないかという問題意識があった。話をわかりやすくするために、センター試験に絞って考えてみよう。センター試験に寄せられる批判の一つは、問題量に対して解答時間が少ないため、受験生はテスト後半ではでたらめな推測に基づいて解答する。そのためにテストの信頼性を低くしている、というものである。その後半にあたるセンター試験の大問6は、長めの文章の読解力を問う問題である。この問題に関しては、設問が後に行くほど誤答が増えている。IRTで、各設問の識別力と困難度と当て推量の値を求めた。その結果大問6の当てずっぽう曲線の値が高くなっていた。生徒がよく考えないで、でたらめに解答する。その率が高くなっているということである。テスト項目の質の検討をひとまず置いて考えるとしても、受験生が「時間がないから適当に答えておく」という傾向に走っていることは否定できない。その結果として「問題の量が多すぎる」または「解答時間が短すぎる」という声が出てくるのである。 しかしこの批判は当たっているようで当たっていない。センター試験の出題は、決められた時間の中では「この程度の英文の量を読めなければならない」というメッセージを送っているのである。受験生の力のレベルに合わせて、問題の難易度を調整することは大切なことではある。それと同時に大切なことは、「このレベルの問題には答えられるようになってほしい」という水準を示すことが、標準的テストの大きな役割の一つだということである。受験生の力が要求されるレベルに達していないということができる。早い話が、英文を一文一文日本語に訳して、その日本語訳の是非を問う、というようなことを延々とやっていたのでは、「現代に求められている読解のスピードの習得はできません」ということになってくる。 そこで読解力のレベルを高めるためには、現在よりももう少し早く英文を読める高校生を育てることが必要だということになる。そのためにまずの対策から始める。 |
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