6.指導上の留意点
(1)文章の難易度と背景知識
文章の難易度を測る尺度に Readability があります。Word というソフトウエアに組み込まれているものもあります。Readability
は一種の公式ですから、客観的に測れるもの(文の平均的な長さ、文章を構成する語彙数など)で構成されています。しかし、Readability
にはいろいろ種類がありますので、自分の使っている Readability の特性を理解しておくことが大切です。また、同じ Readability
の文章であっても、書かれている題材に関する背景知識の多少によって、感じる難しさに差があります。全く同じ文章であっても、個々の生徒によって感じる難しさが異なります。
このように英文を読んで感じる難しさには、文章の Readability に起因する難易度と学習者個人の背景知識や英語力(読解力)に起因する難易度がありますので、両者の関係は相対的なものとしてとらえることが必要です。したがって、文章の難易度によって、生徒は読解における取り組み方を変える必要があります。かつて流行語にもなったトップダウン方式の読解法は、トップダウン方式を会得していても文章が難しすぎれば使えません。読解力の優れている生徒でも、文章が難しくなればボトムアップ方式に切り替えないと内容を読み取ることができません。もっと難しくなれば、“お手上げ”になります。授業で取り上げる英文も、個々の生徒にとっては上記のような相対性があることを念頭において指導することが大切です。
(2)もっと語彙指導の研究を!
コーパス(corpus)言語学の発達によって、外国語教育における語彙指導に有益な情報が提供され、読解指導と語彙の関係についても多様な取り組みが可能になりました。試験問題の解答に現れた学習者の反応を蓄積することによって、例えば日本の高校生の語彙の偏りや欠落している重要語の種類などがチェックできるようになっております。
また、リーディングにおいてはもちろんのこと、他のスキルにおいても語彙の重要性が以前にも増して明確になってきております。“○○に出る単”などに任せきりにするのでなく、身近な生徒の語彙力を客観的に把握して、生徒の実態に合った教材を選択することがますます重要になってきております。
『ORBIT Reading』では語彙の重要性に鑑み、楽しく語彙学習ができるように Take
a Rest というページを 1〜3 の各ステージに設けています。また巻末の Word List A には固有名詞、Word List
B には中学必修語彙・既習語扱いの語彙・新出語彙を3段階で表示して、復習や定期試験などの目安として利用できるように配慮してあります。
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