2.新学習指導要領におけるリーディング
第二次世界大戦後だけでも延べ7回の改定が行われてきた学習指導要領ですが、目標が達成されてこなかった歴史を見る思いがして、胸が痛みます。その背景としては教育の行政・現場双方に責任の一端はあると思いますが、ここでは執筆の目的からそれるので他の機会に譲ります。しかし、“きちんと読んでいるのは指導主事など一部の人だけである”とか“勤務校が研究指定校になったり、公開発表会を行ったりする場合だけ読む”などという不謹慎な発言を耳にすると、ここで学習指導要領の要点に触れないわけにはまいりません。
(1) 改善の基本方針
新学習指導要領の基になった「改善の基本方針」で最初に述べられていることは、「外国語による実践的コミュニケーション能力の育成にかかわる指導を一層充実する」ということです。その理由は、これからの国際社会に生きる日本人として、世界の人々と協調し、国際交流などを積極的に行っていけるような資質・能力の基礎を養ったり、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度と、視野を広げ異文化を理解し尊重する態度を育成することが必要だからです。
(2) 改善の具体的事項
「英語を読んで情報や書き手の意図などを場面や目的に応じて素早くとらえたり的確に把握するなど、文字によるコミュニケーション能力を高めるような指導を行うことをねらいとして内容を構成する。」これが改善の具体的事項です。コミュニケーションというと“音声によるコミュニケーション”だけを想起する人は、今ではさすがに少ないと思いますが、文字によるコミュニケーションには具体的にどんなものがあるのかと問われると、英語教員のすべてが的確に答えられるとは限らないし、自分の授業で実践していると自信を持って言える教師はきわめて少ないのではないでしょうか? 来年度からの供給に向けて現在編集中の『ORBIT
English Reading』では「改善の具体的事項」を生き生きとした教材の中で実現することに努力しました。
3.『ORBIT English Reading』の特徴
(1)段階的難易度に配慮した教科書構成
『ORBIT Reading』は初版刊行以来、幸いにもコンスタントに採用されておりますが、多感な年代の高校生に感動を与えると同時に、日本や外国の社会及び文化について考えさせる中身の濃い教材を心がけてまいりました。中身の陳腐な教材は文字によるコミュニケーションに値しないし、生徒の興味や関心を引きつけることはできないからです。
また、『ORBIT Reading』では1冊の教科書の配列に内容のバランスとともに難易度のバランスにも留意して全体を4ステージ構成とし、はじめの方は約150語程度の短く平易な教材でスタートし、少しずつ長いものへ挑戦させて読む力を養成するように構成しております。
(2)Reading Strategies
中身の濃い教材が難しいとは限りません。むしろ平易な英語で中身の濃いメッセージを送るのが文字によるコミュニケーションの真骨頂であると考えています。外国語学習は、どのスキルであれ、限られた授業時数の中で一定の効果を上げることが求められます。周囲が英語という学習環境で行われる
ESL(English as a Second Language)とは、その点で大きく異なります。そのため『ORBIT Reading』では、教科書の4箇所に延べ17の
Reading Strategies を配しております。それぞれ具体例を伴った解説を読むことによって、生徒は文章展開の形や約束事を知り、それを教科書の文章を通して実際に確認することができます。その一助に
Stage 1 と Stage 2 の各課の本文末尾に Strategy Check! を設けて、その課の文章を読むときに必要な重要なストラテジーを実践できるようになっています。
(3)文字による多様なコミュニケーション
文字によるコミュニケーションは、いわゆる“横の物を縦にすること”ではありません。「生徒が情報や考えなどの受け手や送り手になるように具体的な言語の使用場面を設定して行う活動」で、「リーディング」では次の4つの活動が求められています。
ア まとまりのある文章を読んで、必要な情報を得たり、概要や要点をまとめたりする。 イ まとまりのある文章を読んで、書き手の意向などを理解し、それについて自分の考えをまとめたり、伝えたりする。
ウ 物語文などを読んで、その感想を聞いたり、書いたりする。 エ 文章の内容や自分の解釈が聞き手に伝わるように音読する。 以上の活動を『ORBIT
Reading』はどのように教材化しているかを次に説明します。
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