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心に残るあの名作レッスン The Bus Boycott 公民権運動のきっかけ「バス・ボイコット」を伝えたVISTAの人気題材

小山 誠(国士舘高等学校)

The Bus Boycott(平成15年度版三省堂高等学校英語教科書VISTA English SeriesT Lesson 12)
 「50年ほど前、アラバマ州モントゴメリー市で、1人の黒人女性がバスに乗っていて白人に席を譲ろうとしなかった。当時、黒人は白人に席を譲らなければならなかったが、どうしても譲ろうとはしなかった。その女性がローザ・パークスである。パークスは法律を犯したかどで逮捕された。その逮捕がきっかけでモントゴメリー市の黒人は団結した。」(教科書本文冒頭より)

 公民権運動のきっかけともなったアメリカ南部アラバマ州モントゴメリー市での「バス・ボイコット」という出来事を、ローザ・パークスの勇気ある行動とそれを支えた厖大な数の人々の強い決意の両面から考える、VISTAのなかでも特に人気の高いレッスンである。(編集部)

Time flies?!

 Time flies! こう言って授業が終われるときは、とても充実している。生徒も私も集中して、いや熱中して取り組めたときである。長い間教員をやっていると、腹時計みたいなものができてきて、時計を見なくてもチャイムの鳴るタイミングはわかってしまう。だからこそ、Time flies! の気持ちで終われる授業は貴重なのである。毎回それを期待しつつ、教材研究をして授業に臨むのだが、チラチラと時計に視線をむける生徒達、つられるように時計を気にしてしまう自分がいる。そんなことも少ないわけではない。

素晴らしい訳との出会い

 そんな日々を繰り返す中、アラバマ州モントゴメリー市でローザ・パークスが果たした役割について発表形態の設定で書かれた、”The Bus Boycott” という題材を学習した時のこと。まず、本文のCDを3回聞かせた。このときには教科書本文を見ながら聞かせ、ポーズの部分にスラッシュを書き込ませる。少しでもポーズがあったと思ったら迷わずスラッシュを入れるように指導し、集中して本文を聞くようにさせる。次に本文をノートに写させる。本文のスラッシュを入れたところまでを1かたまりと考え、その1かたまりをまとめて写させて、単語の綴りも意識させる。それから訳をつけていくのだが、私が単語・語句の意味を言うのを生徒は教科書に書き込んでいき「だれが何をする」ということだけを確認させる。つまり頭の中だけで直訳をつくっていく。それからメインの作業に入り、ノートに意訳を書かせていく。ここでのポイントを再度生徒に伝える。@発表形態の設定なので、そういう言葉使いの日本語にする。A代名詞は使わず、具体的な言葉にする。B書かれていなくても意味があっていれば日本語をどんどん足していき、同時にくどい日本語はどんどん省略していく。C自分自身が読んで意味のわかる日本語にする。以上の方法で本文を読解すると理解が深まり、本当に素晴らしい訳に出会うことがある。

 このレッスンに次のような文がある。

On the boycott day, all the buses were almost empty! Eighteen black taxi companies carried black people for the bus fare, 10 cents. Some people drove their own cars and gave others a ride. Some used horses. Many people walked!
(平成15年度版三省堂高等学校英語教科書VISTA English SeriesT Lesson 12 The Bus Boycottより)

 この中のSome people drove their own cars and gave others a ride. Some used horses. Many people walked! という文は、通常は「自分の車を運転してほかの人を乗せてやる人もいました。馬を利用した人もいました。歩いた人も大勢いたのです!」と訳されるもので、Some people = Some black peopleと考えたりもするのだが、1人の生徒が「そうしたのは黒人だけなのかしら?白人はその中にいたの、いなかったの?」と熱く質問した。私を含めてそれこそ“何人かの”生徒がハッとした。この生徒はけっして英語が得意なわけでなく、むしろ苦手としている子である。しかしこの質問をしたこの生徒の気持ちは題材の中に入っていたのだとわかった。私はこう答えた。「もっと想像してみよう。この状況で考えると、どうだと思う?」しばらくしてその生徒は次のような意訳を発言した。「差別に反対する人達が、バスを使わず、自家用車や馬、そして何より歩くことで立ち向かった。」と。「こういうことですよね!」その生徒は自信たっぷりに答えた。この訳に私は感動を覚えた。たしかにこの生徒の気持ちは題材の舞台、アラバマ州モントゴメリー市にあったのだ。

おわりに・・・

 このように私の教える生徒には英語を苦手にしている子は多いが、できあがった日本語訳は、趣旨は同じでも生徒それぞれのオリジナルの文体で書かれていて、全てが素晴らしいノートになっている。

 英語の得手不得手にかかわらず、真剣に考えられる題材こそが、本当の題材だと思う。今後もその様な教科書をお願いしつつ、このような場を与えていただいたことに心から感謝!

 たくさん、書かせていただきました。Time flies!!

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小山 誠 (こやま まこと)

1989年〜90年 ニュージーランドPapanui High Schoolにて日本語の授業担当
1991年〜92年 駒澤大学高等学校にて英語講師
1993年〜    国士舘高等学校定時制課程専任教諭として現在に至る

英語教育リレーコラム第9回
心に残るあの名作レッスン
「Grown-ups Never UnderstandからNot So Long Agoへ CROWNシリーズを通した出会い」 仲井 美喜子 (2007年7月23日更新)
「Life in Alaska 写真家・星野道夫さんのアラスカとの出会いをたどる」 山内 悟 (2007年6月11日更新)
「The Bus Boycott 公民権運動のきっかけ「バス・ボイコット」を伝えたVISTAの人気題材」 小山 誠 (2007年5月7日更新)
「Language―Life Of A People 母語の持つ意味を問いかけたNEW CROWNの定番題材」 後関 正明 (2007年4月11日更新)
 

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