英語教育リレーコラム
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子どもを惹きつける授業のスパイス──1回5分のカードゲームで単語の定着──

福田美也子(神戸市立魚崎小学校)


1.はじめに 〜英語活動の実践から考えたこと〜

 多くの小学校で、時間数に差はあるものの、英語活動が盛んに行われるようになった。私も勤務校で英語活動に多少なりとも取り組んで3年が過ぎ、4年目に入った。勤務校に転勤してきてから、3年間ずっと6年生の担任または、6年生に関わってきたので、中学生となった卒業生に出会ったときに、英語について聞いてみる。その結果、担任する学級で取り組み続けたフラッシュカード5分とビンゴゲーム5分をやっていた卒業生が、一番小学校でやった英語のことを覚えていてくれて、中学校に入ってからも英語に取り組みやすかったと言う子が多かった。反面、専科的に一時期、週1〜2回程度授業をした児童たちは、「おもしろかったけどあまり覚えていない」という感想が多く聞かれた。

■英語活動の取り組み

年度 活動する学級 期間 内容
2003 担任する学級
(6年生1クラス)
毎日
10分
終わりの会で英単語をフラッシュカードで5分練習。一日のどこかで5分、時間を見つけ単語でビンゴゲームをほぼ毎日。
2004 5、6年生全学級
10クラス
3学期
各クラス
10時間
5、6年生で3学期のみ一部専科制で授業をした。私は英語を担当し、ゲーム、歌中心に週1〜2時間授業。
2005 3〜6年生全学級
22クラス
前期後期に分け、
各クラス
10〜20時間程度
ゲーム、歌、絵本作りなどの授業を担任と私とのT-Tで行った。外国人講師も各クラス3時間程度一緒に活動した。T-Tといっても、実際にはほぼ私が授業をすすめていた。担任の関わりが課題となった。
2006
(予定)
3〜6年生全学級
23クラス
本年度私が担任するのは3年生。
後期
各クラス
10〜15時間程度
歌、ゲーム、タスク的活動、国際理解的活動などを各担任が行う予定。カリキュラムを学年独自で作成する。外国人講師が各クラス5〜6時間程度一緒に活動する予定。

 

2.単語を中心に

 英語活動と言えば、歌とゲームというパターンがあるように思う。たいていは楽しい時間を児童たちは過ごし、英語という言語への興味、関心も大なり、小なりわいてくる。それだけでもある意味十分なのではないかと私は思ってしまうのだが、「定着」ということを考えると年間何十時間かの授業では忘れていく確率の方がかなり高い。そこで単語だけでも毎日やるというのはかなり取り組みやすいのではないかと考えた。実際、中学生になっても単語だけでも知っていれば、文の内容をある程度理解できることもあるし、英会話となると単語をつなげただけでもある程度通じるものである。もちろんそれでよしということではないが、単語を知っているということが英語を学習する上でかなり役に立つことは確かである。教える側の担任も英語活動をするに当たって、英語には自信があるわけではないが、だからと言って間違ったことを教えるわけにはいかないと、かなり気負う面があると思われる。しかし、単語だけとなると毎日といえども、時間的にも精神的にもかなり気楽に取り組めるのではないかと思う。児童の精神的発達を考慮すれば、簡単な単語や会話などは小学生で習得する方が合っているように私は思っている。小中の連携を考えても単語をたくさん知っているということは無駄にはならないだろう。

 

3.おすすめ気軽で楽しい単語の定着

(1) ビンゴゲーム 

 ビンゴは一般的に英語学習でよく使われるゲームだが、英語に抵抗を感じている子でも偶然一番にビンゴになって大喜びという場面もよく見られ、私は気に入ってよくやっている。しかし、やりすぎると飽きてくるということも考えられるので、いろいろ変形させてビンゴをする。いろいろなビンゴゲームのパターンを紹介したい。

[その1] “うらないビンゴ”

◆手順◆

  1. カードを4×4で16枚机の上に並べさせる。黒板には下図のような枠だけチョークでかく。
  2. 袋や封筒の中にはいっている、カード(児童と同じもの)の中から1枚ずつとって発音する。
    教師が単語を発音したら、児童はリピートする。
    とり出したカードは黒板の左上から右に順番においていく(教師用には裏にマグネットをつけてておく)。児童は机の上で、発音された単語と同じカードを裏返す。
    ※多くの児童は自分で聞きとって裏返せると思うので、黒板に貼るタイミングは少し、遅めにする。わからなかった児童も黒板に貼られたたカードを見て後から裏返すことができる。
  3. ビンゴになったら手を挙げる。
  4. 4枚の時点でビンゴになったら “Super lucky!!!” 、8枚なら “Very lucky!!” 、12枚なら“Lucky!” というように、本日の運勢を占う。12枚カードを引いた時点(つまり “Lucky!” まで)で終了とする。

板書例の図
●黒板にこのように枠をかくとよい。

=留意点=

  • 最初にフラッシュカードにして単語の練習をしておくとよい。
  • カードは絵と単語が書いたものを16枚〜25枚貼り合わせB4くらいの大きさで印刷して配る。各自ハサミで切りとり、ゼムクリップなどで留めて道具箱などにしまっておく。
  • ビンゴで使わなくなったら自分で色をぬるなどし、ホッチキスでとめ、オリジナル単語カードとして保管していく。

 

[その2] “ビンゴマラソン”

◆手順◆

  1. その1の“ビンゴゲーム”と同様に4×4でビンゴをする。ただし、占いの “Lucky!” などの吹き出しは不要。ビンゴになったら手を挙げる。
  2. 黒板に早くビンゴになった児童5名まで英語で名前を書く。この時点でビンゴゲームは終了。
    5番目に複数の児童が手を挙げていたら、その児童たちの名前も書く。
    板書例の図
    ●黒板にこのように書くとよい。
  3. 終了後すぐ、黒板に名前を書かれた児童のビンゴマラソンカードにスタンプを押す。
    ※スタンプの代わりにシールでもよいが、スタンプの方が早くてお手軽。 
  4. ビンゴマラソンカードがスタンプでいっぱいになったら英語で書かれた賞状を渡す。
    ※ビンゴマラソンカードはスタンプシート(10〜20個くらいスタンプが押せる枠のあるもの)を印刷し、児童全員に渡しておく。このスタンプシートがあると児童の意欲はかなり持続する(賛否両論あると思うが、シールなどのおまけをつけるとなおさらである)。

[その3] “変形ビンゴ”

◆手順◆

  1. 16枚のカードの中からその都度、5枚、8枚などと教師が決め、机の上に横一列に並べさせる。
  2. 指導者が発音したカードがあったら、そのカードをわきによける。
    ※カードの数が少ない方がビンゴになりにくい。
  3. 机の上にならべたカードがすべてなくなったら、ビンゴ。
生徒の机の上のカード 板書例の図
●児童はこのように机の上にカードを並べ、
発音されたカードがあれば、よけていく。
●教師は黒板にこのように枠だけかいて、
発音したカードを置いていくとよい。

 

(2) カードを用いたその他のゲーム

 ビンゴではないが、同じカードを使って、カルタ、キーワードゲーム、メモリーゲームができる。ときどき違う種類のゲームをすると飽きない。

[その4] “カルタ”

◆手順◆

  1. 1回戦はとなりの児童とカルタをする。
  2. 2回戦はとなりのペアで勝った者、負けた者どうしでする。
  3. 2回連続で勝った児童を全員立たせ、教師とじゃんけんゲームをする。じゃんけんゲームで勝ち残った児童2人を選ぶ。
  4. 黒板には児童がやったカルタのカードと同じカード(教師用としてカードのうらにマグネットをつけたもの)を貼っておく。勝ち残った2人の児童を黒板の前に立たせる。みんなでやったカルタを今度は勝ち残った2人に黒板のカルタでハエたたきを使ってとらせる。2人のうちより多くカードをとった勝者がToday's Championとなる。
    ※チャンピオンにはビンゴマラソンのスタンプを1つ押してやってもよい。

[その5] “キーワードゲーム”

◆手順◆

  1. 4〜6人程度のグループで行う。カルタのようにカードを机の上にランダムに並べる。
  2. キーワードのカードを決めておいて、そのカードの単語が発音されたときだけカードをとる。それ以外のときは、指導者の発音をリピートするだけ。
  3. 手をたたきながらリズムにのってすると楽しい。リズムは2回手をたたき、単語を言う、の繰り返し。ただし、キーワードが発音されたときは、手はたたかずに、とにかくそのカードをとる。
    例)
     T: This time, the keyword is ‘steak’. Are you ready? Let's start.
     T: ‘Cake’.
     C: ‘Cake’.(2回手をたたく)
     T: ‘Egg’.
     C: ‘Egg’.(2回手をたたく)
     T: ‘Steak’.
     C:(リピートしない、手もたたかない、とにかく、ステーキ((steak))のカードをとる。)

  4. キーワードをかえて、何回か繰り返す。とったカードはその都度、もとの場所に戻して、個人ではキープしない。グループの中で一番たくさんキーワードのカードをとった児童が勝ち。
    ※グループチャンピオンにビンゴマラソンのスタンプを1つ押してやってもよい。

[その6] “メモリーゲーム”

◆手順◆

  1. 教師が4〜8枚程度のカードを続けて読む。
    ※カードの枚数が多くなるほど覚えるのが難しくなる。
  2. 児童たちはただ聞く。
  3. 教師がすべてのカードを言い終わったら、児童たちは読まれた順番通りに、机の上に自分のカードを並べる。
  4. 答え合わせをする。教師が発音した順番にカードを黒板に発音しながら並べて貼っていく。最後の数枚は少し、間を置いて発表すると児童の緊張感が増して盛り上がる。
    板書例の図
    ●このように枠だけかいて、何枚発音するか提示する。答え合わせのときには、この枠の中に正解のカードを貼っていく。

    ※覚えるカードの枚数は4枚程度から始める。「これ以上は無理だよね」などとつぶやきながらやると、児童は「まだまだ覚えられる」とどんどん挑戦していく。枚数が多くなったら個人では難しいのでグループで取り組ませるとよい。クイズ番組の感覚で楽しく取り組む。聞いている間の静寂と聞き終わったあとのつぶやきと正解を聞くときの緊張感とでシンプルだが、excitingな活動となる。

 

4.最後に

 紹介したどの活動も、単語で遊びながら、その意味や発音を理解することを目的とし、同じ1セットずつのカードで実践できる。1回の活動時間をなるべく短くする。短くていいから継続的にすることがポイントである。毎日は無理でも週に1回でも続けることで児童はけっこう覚える。カードは定期的に変更するが、前に使ったカードを繰り返し使うこともできる。動物、食べ物、文房具など分類してカードを集めて貼り合わせて印刷、配布すれば誰でも気軽にできる。カードは単語カードとなって残っていく。教師は単語の発音練習だけは集中してやっておくとよい。コミュニケーション中心の英語活動が活発に行われる中で、果たしてこれが英語活動と呼べるかどうかわからないが、私の実践の中では、単語だけではあるが、一番「定着」を達成できたものであったので紹介させていただいた。

福田 美也子 (ふくだ みやこ)

 兵庫県神戸市内の公立中学校2校で英語教師として勤務し、現在、兵庫県神戸市立魚崎小学校教諭。学級担任をしながら、英語活動に取り組んで4年目。勤務校では、本年度、学校全体で学級担任が取り組む英語活動が本格化する予定。

英語教育リレーコラム第7回
高等学校の英語教育への提言
「1回5分のカードゲームで単語の定着」 福田 美也子 (2006年7月10日更新)
「義務教育修了記念に英字新聞を作ろう!」 石川 真知子 (2006年8月2日更新)
「『映画で学ぶ英語』の授業」 貫井 洋 (2006年9月12日更新)

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