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自己表現活動では、学年が進行するにつれ、各個人が表現したいと思うトピックも多岐にわたり、それに応じて使用する語彙も広がりを見せる。教科書で提示される語彙や、教師が必要に応じて作成するハンドアウトの語彙だけでは、生徒の要求に十分に応えることができなくなる。そこで、各個人の学習をサポートするツールとして、辞書の持つ役割が大きくなる。 辞書指導をいつから行うか
中学生用の英和辞典には、見出し語の隣に、IPAによる(またはそれに準ずる)発音記号と近似カタカナ発音、品詞の表示、語義、そしてその用例などが、丁寧に記載されている。早い時期から辞書を使わせたいと思っても、いきなり発音記号を扱うわけにはいかない。ある程度アルファベットに慣れてからでないと、発音記号に触れても混乱を起こすことになる(もちろん、辞書に慣れ親しむために単語の早引き競争などを行うというのであれば、早い時期に辞書を導入することは可能である)。辞書を使いこなすことを視野に入れ、辞書指導をいつ頃から導入するのが効果的かを考えたとき、中学1年生の3学期、あるいは中学2年生の1学期が、多方面に辞書を活用するのに適切な時期ではないかと思っている。 辞書指導をどうすすめるか―英和辞典を用いたDictionary Work 公立・国立中学校の生徒を対象に、Dictionary Workとして筆者が実際に使用してきたworksheetの一部を、以下に別の画面で紹介する。抜粋ではあるが、指導例として参考にされたい。 学習者にとって本当に必要な辞書を求めて―和英辞典
中学1年生、2年生、3年生を対象に、スキット、チャット、スピーチ、英文日記等の実践を行ってきた。活動終了後には、「英語で表現したかったけれど、うまく表現できなかったこと」があれば日本語で書いてもらい、提出してもらった。その後、ALTの協力を得て、日本語を英語に直す作業を行い、生徒にフィードバックしてきた。
生徒から寄せられた文を集め、それに対応する英語と併せて、コーパスツールを用いて上下パラレルに表示することもできる。例えば、「英検」という語について示してみると、次の画面のようになる (*2) 。
「和英辞典」が学習者のニーズを踏まえて編集されているとはいうものの、スペースが限られているため、中学生のニーズに応えて特定の語に手厚く十分なスペースを割くことは難しい。しかし、各教師が生徒のニーズに応えられるコーパスを所有し、生徒にも利用できる(電子)辞書等の環境が整えば、自分の必要とする表現が辞書に見つからないということは減るであろうし、適切な表現が見つからずに言いたいことが言えないという生徒のフラストレーションも減るだろう。
おわりに 生徒が自分で辞書を引き、あいまいな知識を確かめていく過程は、語彙の習得に役立つばかりでなく、自立した学習者を育てていく上でも大切なことであると思っている。各個人の学習をサポートするツールとして、辞書とその使い方の指導についてさらに工夫を重ねたいと思う。
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