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三省堂高校英語教育 2005年夏号
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特集 読解力

読解力を高めるために

慶應義塾大学 霜崎 實

5. 具体的な指導例

 ここで、読解の指導法について、『CROWN English Reading』を例にとって解説をしておきたい。全体は3部から構成され、それぞれ4つのレッスンと、Short StoryおよびRapid Readingからなる。テーマは、ことば・比較文化・芸術・環境・スポーツ・経済・科学・歴史・建築・教育と情報など多岐に渡るが、構成上は、各レッスンとも同一である。ここでは日本語と英語の表現傾向の相違点を扱ったLesson 1:Saying the Same Thing in Different Waysを例として取り上げる。

 本文に入る前に、Pre-readingとして、Facts about English and Japanese, Take a Moment to Think, Vocabulary Checkがある。Facts about...は、その課で扱うテーマについての基本情報をまとめたものである。課の表題を読み、Facts about...にざっと目を通すことで、何がテーマとして扱われるのかを容易に想像することができる仕組みである。次に、Take a Moment to Thinkでは英文の質問をいくつか用意したが、これらは知識の有無を問うものではなく、学習者の背景知識を活性化させることを意図したものである。Vocabulary Checkは、新出語について文脈から意味を想像して答えさせる形式で提示した。以上のPre-reading活動は、予習のための宿題として課しておくのもよい。授業では、その課がどのようなテーマを扱っているものなのか、生徒に問いかけることから始める。次に、Take a Moment to Thinkを利用して、小グループごとに意見交換をさせたうえで、各グループから生徒を指名し意見を言わせるのもよい。

 次に本文に入る。基本的には、精読と速読を組み合わせながら本文の理解を確認していく方法が推奨される。必要に応じて訳読を導入しつつも、トピック・センテンスに注意しながらパラグラフ単位での理解を確認することも重要である。本文全体についての理解を確認するためには、Comprehension Questionsを活用していただきたい。内容把握問題(チェックマークCheck)は、本文の重要なポイントの理解を確認することを目的としたもので、正誤問題(TF)は、本文をスキャニングしつつ、細部にわたる情報についての正誤を問うものである。

 次にCommunication Activityに進む。英語によるディスカッションを念頭に複数の質問を用意したが、選択的に扱ってもよい。宿題で自分の考えを英文でまとめさせ、それをもとに授業でのディスカッションに結び付けたい。その際に、有用な表現(Key Words & Phrases)、および機能表現(Functional Expressions)が参考になる。こうしたコミュニケーション活動は、学習者の言語知識を内在化させ、結果として読解力養成にも繋がるものであるから、積極的に取り組んでいただきたい。

 Making Sense of Itは、本文をグローバルに把握するためのヒントとして用意したものである。換言すれば、瑣末な事実の理解に偏りがちな読解教育を、より大局的な理解へと転換させることを意図したものと言える。その課のTopicは何か、Main Ideaは何か、Organizationはどのようなものなのか、Examplesとして何が提示されていたのか、こうした点について振り返りつつ、さらにEvaluationでは本文の内容を別の角度から検討するためのヒントを提示した。Oral Interpretationでは本文の中から重要だと思われる一節を指定し、音読の指示を与えた。

 連語や慣用表現を扱うUseful Expressionsでは、本文での用法に加えて、別の例文を挙げた。連語や慣用表現を学ぶことは、読解力の養成に必要な言語基盤をより強固なものにするだけではなく表現力の向上にも繋がる。また、これらの表現は、和文英訳のクイズとしても応用可能である。  最後に、見開き2頁のClipboardがある。左頁のClipboardでは楽しんで取り組める課題を用意したが、グループ・ディスカッションにも活用できよう。右頁はOption(発展的教材)としての位置づけで、authenticな英文への導入となっている。第1課では、Edwin Reischauer氏の著書(The Japanese)から、日本語が明晰性と論理性を欠く言語であるという説に対する反論を取り上げた。高校英語教育の目標のひとつは、学習者が自らの興味関心に従って、読みたいと思う英文を選択し、積極的に読書経験を進める自律的な読者となるための援助をすることであろうが、そのために、ここで扱っているようなauthenticな英文が、よい橋渡しの役割を果たすことを期待したい。

6. おわりに

 以上、駆け足ながら、『CROWN English Reading』を使って読解指導をする場合の留意点について述べてきたが、最後に強調しておきたいのは、音読による精読と速読による多読をうまい具合にバランスをとりながら読解指導をする必要がある、ということである。前者は読解力の基礎を形成するために、そして後者は読解力のさらなる発展にとってきわめて効果的である。多読について一言付け加えれば、言語材料を教科書の範囲に限定する必要は毛頭ない、ということである。例えば、インターネットを活用すれば、学習者が容易に入手することのできる言語材料は飛躍的に増大する。そのような材料をいかに取捨選択し、読解力の向上に役立てていくのか、という問題も避けては通れない重要な問題であるが、これはまたの機会に譲りたい。

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