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三省堂高校英語教育 2005年夏号
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特集 読解力

読解力を高めるために

慶應義塾大学 霜崎 實

3. 精読と速読

 ところで、読解力の養成にとって、精読と速読のいずれが重要なのだろうか。高校英語教育では、通常、速読よりも精読が重要視されているが、これは訳読式の必然的結果でもある。学習者の心理としても、訳読によって理解を確かめないと不安な状態に置かれることになり、その不安を取り除くためには有効な方法でもある。しかし、ここで注意したいのは、英文を日本語に転換するだけで、英文を理解したという錯覚に陥る危険性があるということである。「翻訳者は反逆者」(Traduttore, traditore)という言葉があるが、翻訳した途端に、原文のもつ何かが失われる。理解の便宜として訳読することは許容されるべきだが、それを目的化することは本末転倒である。

 上級レベルの学習者に対しては速読も含めて、さまざまな読解の技法を導入するとよい。前節では音読の重要性を強調したが、速読とは相性が悪い。一般的に、スキミング、スキャニングなど、速読の技法は、黙読を前提としたものである。速読の場合、ある程度まとまった分量の英文をグローバルに把握することを目的としたもので、語彙、表現、文構造の理解などはその前提となるものである。英文のレベルが高すぎるとスムーズに英文の流れに乗ることはできないし、その結果グローバルな理解には繋がらない。速読によって、学習者が英文を読む楽しみを味わい、自らが進んで英語での読書経験を求めるための手助けをすることができれば、速読教育の目的の大半は到達できたと考えてよい。

 筆者の個人的な経験では、高校生のときに、本屋で入手した日英語の対訳本が速読に向けての第一歩だったように記憶している。『ベンジャミン・フランクリン自叙伝』やら『アンデルセン童話』など、興味深く読んだものもあれば、途中で挫折したものもあるが、英文の流れに沿って、日本語を介在させることなく、意味が構築されていく経験をすることは、愉快な経験であった。何が学習者にとって興味のあるものかは、個人差があるだろうが、平易な英語で書き直されたシリーズなども活用できるだろう。最後に、精読と速読との関係について付言しておくならば、そもそも優劣をつけるようなものではなく、リーディングの目的に応じて選択すべきだ、ということである。

4. 学習指導要領から見たリーディングの扱い

 中学校での英語教育では、英語の基礎を構築することが主眼となり、目標として設定されている読解力もきわめて限定的なものである。一方、高等学校では、「英語を読んで、情報や書き手の意向などを理解する能力を更に伸ばすとともに、この能力を活用して積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」(『高等学校学習指導要領』)ことが目標とされている。言語活動としては、「文章を読んで、必要な情報を得たり、概要や要点をまとめたりする」、「書き手の意向などを理解し、それについて自分の考えなどをまとめたり、伝えたりする」、「物語文などを読んで、その感想などを話したり、書いたりする」、「文章の内容や自分の解釈が聞き手に伝わるように音読する」など、読解とコミュニケーション活動との連携が強調されている。さらに、「未知の語の意味を推測したり、背景となる知識を活用したりしながら読むこと」、「文章の中でポイントとなる語句や文、段落の構成や展開などに注意して読むこと」、「目的や状況に応じて、速読や精読など、適切な読み方をすること」に配慮して指導を行うことが明記されている。つまり、単に読んで理解するのではなく、さまざまなリーディング・スキルを利用しながら、戦略的に読むことが要求されているのである。自律的な読者(autonomous reader)となるための基礎をつくることが高校における読解指導の目標とすれば、教科書を通じて、生の英語(authentic English)への橋渡しを念頭において指導をしていく必要がある。

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