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三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2005年 夏号 読解力を高めるために(1)

三省堂高校英語教育 2005年夏号
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特集 読解力

読解力を高めるために

慶應義塾大学 霜崎 實

1. はじめに

 本稿では、コミュニケーション志向の英語教育の枠組みのなかで、効果的な読解力の養成の方法について考えてみたい。

 そもそも読解のためには、どのような知識が必要なのだろうか。語彙、慣用表現や連語、文構造などの言語知識は勿論のこと、言語の背景にある文化についての知識など、言語外の知識も必要となる。それでは、こうした知識を習得すれば読解力が身につくのか、というと必ずしもそうではない。「知っていること」が、すなわち「使えること」にならない、という厄介な問題が存在しているのである。言語知識の習得を前提としつつ、それを無意識に運用するための「自動化」が必要となる。音声学の知識を豊富に蓄えていたとしても、それは必ずしも正確な発音習慣には直結しない。読解についてもまた然りである。とりわけ日英語のように語順が全く異なる言語の場合、文の流れに沿って意味内容を汲み取るためには、上で述べた「自動化」が必要となるが、そのためにはどのような訓練方法がありうるのか、また読解力の養成に向けて教科書をどのように活用したらよいのか――こうした問題が本稿での課題である。

2. 音読の効用

 一般的に、母語の場合、文章を音読する機会はめったにない。しかし、外国語としての英語学習において、音読がきわめて効果的な学習方法であることは、強調しても強調しすぎることはない。意味を汲み取りながら音読をすることは、初級・中級レベルの学習者にとって容易ではないために、音読を問題視する向きもあるが、にもかかわらず音読が効果的な学習方法であることは、多くの英語の達人の指摘するところである。

 同時通訳の草分けでもある国弘正雄氏は、「只管朗読」(ただひたすら音読すること)の重要性を強調されているが、筆者も全く同感である。極論すれば、はじめから意味を理解しようとする必要はない。ただ、音読することが重要なのである。母語話者のモデル・リーディングを聞きながら反復して音読することで、次第に英語の音声イメージが出来上がり、スムーズな読みが可能となる。自分の発音をモニターすることで、英文のもつ独特のリズムやイントネーションに対する感受性が高まることになる。いわば、英文の流れを体感することが重要なのである。そのような流れの中に身を浸すことによって、次第に日本語とは異なる流れを自然なものとして受け入れることができるようになる。

 ただし、ここで終わってしまってはならない。最終的には、音読であれ、黙読であれ、いわゆる「読み」と「理解」の過程が同期する、いわゆる「直読直解」を目指して訓練を積む必要がある。ところで、「直読直解」に到達するための中間地点においては、少なくとも部分的には「訳読式」授業も許容されるべきだと筆者は考えている。問題のある構文について分析と解説が加えられることで、当該の英文の理解が確かなものとなるからである。ただし、英文を日本語に翻訳することに終始していたのでは、「直読直解」のための読解力を養成することはできない。授業では、例えば関係代名詞を英語の語順に逆らって訳し上げることもあるだろうが、これは、「日本語のフィルター」を通しての理解である。「直読直解」を目指して読解力を高めるためには、日本語の介在を極小化し、英語から直接意味を汲み取ることが必要不可欠である。

 音読の過程は、いわば脳の中に新しい回路を作る過程だとも言えよう。漢字を覚えるとき何度も反復して同じ漢字を書くことで、あたかも漢字と意味が何らかの関係性によって結び付けられているように感じるようになる。反復によって、新しい回路ができたのである。同様に、日本語を介在させることなく英文を理解するためには、音読を反復することにより、新しい回路を作りだすことが必要なのである。

 言語学習理論において、「意識的な学習」(conscious learning)と「無意識的な学習」 (unconscious learning)が区別されることがある。前者は、分析などによる認知的な理解を伴う学習であり、意識的な努力が要求される。後者は、「暗黙知」とでも言うべきもので、分析などによる認知的な理解を超えたところで生ずる学習である。母語話者は正規の学校教育の始まる前の幼児期において、きわめて複雑な言語をいとも簡単に習得しているようにみえる。「意識的な学習を伴わない言語習得」が存在していることは確かなようである。一方、中学生になってから外国語として英語学習を始める場合、状況は全く異なる。英語の語彙や構造を知識として習得したとしても、それだけでは自由に話すこともできないし、「直読直解」もままならない。いわば、意識的な学習のみでは、母語話者のもつような言語運用能力の獲得には繋がらない、ということである。換言すれば、学習者は、教えられていないことを習得しなければならない、ともいえる。

 話を音読に戻そう。英文を意識的な学習により分析的に理解した後で、今度は、同じ英文を反復して音読することが肝要である。ひたすら音読することで、無意識的な学習が促され、次第に英文の流れと意味の構築の順序が一致してくることになるのである。勿論、このことは一朝一夕でなるものではなく、音読を習慣的に継続することにより、はじめて可能になるものである。比較的簡単な英文から始めれば、音読と意味理解の過程を同期させることは、それほど難しくはないはずである。そして、このような「成功体験」を経験することにより、次第に「直読直解」に近づくわけであるが、これはまさに無意識的学習によって可能になるものである。

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