三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2004年 夏号 『CROWN English Reading』の目指すもの(1) | ||||||||||||||||
はじめに CROWN Readingが刊行される運びとなり、英語T、U、Writingとともに、CROWN English Seriesが完結することになった。今回のCROWN Readingは、サイズも一回り大型となり、レイアウトの斬新さ、カラーページの多さはもちろんのこと、題材の多様性、構成の新しさ、リーディングへのアプローチ、どれをとっても従来の英語教科書とは、まったく印象を異にする教科書が出来上がった。教科書に進化があるとすれば、CROWN Readingは、将来の英語リーディング教育を見据えて大きな進化を遂げた教科書といっても過言ではない。本稿では、CROWN Readingの目指すものとは何か、その特徴はどこにあるのか、その特徴を最大限に授業で活かすためにはどのようなことに注意すべきか、などについて考えるところを述べてみたい。 チャレンジングなリーディング CROWN Readingの第一の特徴は、「チャレンジング」である、という点である。英語T、Uは、あくまでも英語の基礎の範囲を超えるものではなく、これを完璧に習得したとしても、現実の世界で使用されている生の英語を読みこなすには、必ずしも十分ではないと率直に認めざるをえない。学習者が英語の読み手として独り立ちし、「自律的な読み手」(autonomous reader)となるためには、英語運用能力のさらなる飛躍が必要である。英語T、Uを前提とし、それを土台としてスムーズな発展ができるよう考慮しつつも、さらなる飛躍を可能にすべくさまざまな工夫を組み込んだのが今回のCROWN Readingである。学習者は、リーディングの醍醐味を満喫することのできる題材がふんだんに盛り込まれたこの教科書を手に取ることで大きなチャレンジを感ずるであろうし、この教科書が提示する多くのハードルをひとつずつクリアすることで、英語の読み手としての能力を一段と向上させることになるだろう。 CROWN Readingは学習者のみならず、先生方にとってもチャレンジングなものであるかもしれない。この教科書はきわめて多様性に富んだテーマを扱っており、その幅は従来のリーディング教科書とはまったく比較にならないほどである。また、レッスン構成についても、かなりユニークな構成になっているので、CROWN Readingを最大限に活かすためには、十分な教材研究が必要となる。先生方にとっても、チャレンジングである所以である。 題材重視のリーディング リーディング教科書のエッセンスとは何か、と問われたならば、筆者としては、即座に題材の良し悪しにあるとお答えする。これに比べると、練習問題の工夫、魅力的なイラストや写真、レイアウトの美しさなどは瑣末的な事柄である。これらが教科書の使い易さを決める重要な要因であることを認めるに吝かではないが、題材が魅力的なものでないならば、いわば不釣合いな額縁におさまったつまらぬ絵画のようなものである。貧弱な額縁は絵画の本質的な価値を損なうものではないが、絵画が駄作ならばどんな高価な額縁で飾り立ててもその価値を高めることはない。 そこで、題材の選択にあたっては、最大限の時間と精力を費やしたが、その結果として、本課本文12編を編集・執筆した。ここでは詳述できないが、マグリットの絵画論、イチローとのインタビュー、グラミン銀行設立の物語、福澤諭吉の西洋文明との邂逅、建築家安藤忠雄の生き方、最先端技術ナノテクが切り開く未来の可能性など、どれもユニークで興味深いテーマを扱ったものである。 もちろん題材の良し悪しの最終的な判断は、この教科書を活用してくださる先生方と生徒の皆さんに委ねざるをえない。編者としては、学習者の知的好奇心に訴えるべく、多様性のあるテーマをふんだんに盛り込んだつもりである。 |
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