2.「新学習指導要領」とのすり合わせ
こうした奥行きのある内容を各レッスンとも『VISTAT・U』の編集方針のひとつ「英文をできるかぎり基礎的な文法項目に基づき、できる限り最小限に留めた言語材料で表す」ためには、急流に架けられた一本橋をわたるような努力が必要であった。しかも文部科学省の検定に合格するためには、「新学習指導要領」に謳われている事項を積極的に取り込んでいかなければならない。かと言って、これまでの『VISTAT・U』の編集伝統を根こそぎにしたくはないという葛藤との闘いもあった。「英語T」に関する限り「新学習指導要領」に謳われた事柄で最も大きな変化が表された点は、「言語活動」の条件として「生徒が情報や考えなどの受け手や送り手になるように具体的な言語の使用場面を設定して、次のようなコミュニケーション活動を行う」というふうに「言語の使用場面」を明らかにした上でいわゆる四技能の育成を図ることが指示された。そのため、『VISTAT・U』では「言語活動」に示されたアからエまでは、次のように取り扱った。
ア 「英語を聞いて、情報や話し手の意向などを理解したり、概要や要点をとらえたりする」については、もっぱら
Listening Comprehension で統一してある Practice! の 1 や、Practice! 1 と同様に聴くことに徹し、その内容を理解する
Listen!、聴き、実際に練習して基本的表現を身につけることに徹する Key Expressions!、与えられている対話例を利用し、空欄を自由に補いながら学習者同士が対話をする
Talk!、実際の場面を想定して学習者ないしは学習者同士がロール・プレイをすることに徹する Communicate! で統一してある
Enjoy Communication! に全面的に取り入れた。
イ 「英語を読んで、情報や書き手の意向などを理解したり、概要や要点をとらえたりする」については本文理解は勿論のこと各レッスンの特に「英語T」の
Part 1 では Quiz と Part 2 および「英語U」では Check Your Understanding! の提示の仕方でご理解いただけると確信している。
ウ 「聞いたり読んだりして得た情報や自分の考えなどについて、話し合ったり意見の交換をしたりする」および、
エ 「聞いたり読んだりして得た情報や自分の考えなどについて、整理して書く」については、「英語T」、「英語U」とも各レッスンの
Practice 4 で集中的に学習できるように工夫した。
また「言語活動の取り扱い」の「ア 指導上の配慮事項……言語活動に示すコミュニケーション活動を効果的に行うために、必要に応じて、次のような指導をするように配慮するものとする」については、どのレッスンにも共通なことだが、傍注に掲載した新語の紹介、本文のネイティヴ・スピーカーによる発音練習、Say
It! での各課の発音上重要と思われる項目のネイティヴ・スピーカーによる発音練習はもとより、ENJOY READING ALOUD!
“The Tale of Peter Rabbit” では、おそらく日本で検定教科書に取り上げることは初めての試みだと言えるかもしれない「物語を誰かに読んであげる読み方」の練習でクローズ・アップしている。
同様に「言語活動の取り扱い」の「イ 言語の使用場面と働き」に関しては、次に紹介する教師用指導用資料の第1分冊『解説と指導』において各レッスンとも「言語の使用場面」と「言語の働き」を具体的に記している。
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