■特集■ 新しい英語教育
拓殖大学
北出 亮(きたで りょう)
3.新教科書における「新しい英語教育」の展開と紹介
(1)オーラル上達に必要なこと
同じ指導要領に基づいて教科書を作っても、作者の教育理念により内容は大きく異なるので、まず、オーラルを指導しやすいテキストを選び、そのテキストを効果的に使いこなすことが大切です。オーラルの教科書の選び方としては、生徒が理解しやすく、教師も生徒も楽しく教え学べるものが望まれます。レベルの高いものや学習量が多すぎるものは教師と生徒に負担になります。
指導法は、楽しく行うとともに生徒にチャレンジ精神と達成感を持たせ、英語を話す喜びを培うことができるものが良いと思います。また、生徒が自ら学ぶ姿勢を育めるものが好ましいでしょう。オーラル上達に不可欠なことはなんと言っても基礎・基本を徹底的にマスターすることです。
(2) オーラルの基礎・基本とは何なのか
日常使われる最小限必要な文型・文法を実際に口に出して話すことがオーラルの基礎・基本です。ちなみに、考古学者で、十数か国語を身に付け、驚異的な語学力の持ち主として知られたシュリーマンは、大きな声で音読すること、毎日1回は授業を受けること、興味あることについて作文を書き、それを直すことなどが上達の秘訣であると自伝『古代への情熱』の中で述べています。この先人の知恵にもあるように、オーラルで大切なのは実際に声を出して話すことです。
(3) その基礎・基本を身に付けさせる学習法
繰り返し口に出して話す方法が最も効果的な学習方法です。ただ繰り返すのではなく、段階を追って学習すべきです。何度も口に出すことにより体で覚えますが、楽しい雰囲気で行うことが大切です。そこで、ゲーム的で
authentic な要素のある言語活動を使用すると学習効果が高まります。 また、単に繰り返すだけでなく、部分から全体に、易から難へと指導を変えていきますが、ペアやグループによる言語活動が最も望ましい学習法と言えます。
(4) 想定される授業とその展開
たとえば、まず、日常会話の基本表現の提示から文型・文法の確認、音声練習が第一段階です。次に単語や基本表現の聞き取りが第二段階で、第三段階は基本表現を話す練習です。さらに仕上げは
Interview--- Presentation, Role Play, Pair Work などの活動で実際に試してみるのです。このように段階を追って学んでいけば決して難しいものではありません。同じ基本表現を段階ごとに何度も口頭練習すれば自然に覚えてしまいます。
(5) 最終的なオーラルの到達目標
従来のように学習した知識量を到達目標とするのではありません。最小限度の望ましい到達度としては、まずは指導要領の2つの目標、つまり「日常生活の身近な話題について、英語を聞いたり話したりして、情報や考えなどを理解し、伝える基礎的な能力を養う」こと。間違いを恐れないで「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」ことになります。
4.まとめ
現在編集中のオーラル・コミュニケーションの新教科書では、以上に述べてきた「新しい英語教育」の実践のために、次のような力を身に付けることをめざしています。
オーラルの基本的能力、つまり、日常生活で最小限度必要なことが聞き取れ話せる英語が身に付きます。会話だけでなく、読む力、書く力、発音、文法、マナーや英語文化など会話に関連した領域の英語を有機的、総合的に学べます。また、心理的には失敗を恐れない積極性が養われ、グループ活動、ペア活動を通して協調性が養われます。その他、プレゼンテーションを体験することにより、恥ずかしがらず人前で話す力、勇気が身に付きます。いずれも日本人の国民レベルで
必要と思われる会話力が楽しく身に付きます。
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