三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2002年 春号 オーラル・コミュニケーションIがめざすもの(2) | ||||||||||||||||
■特集■ 新しい英語教育 拓殖大学 2.新しいオーラル教育のあり方 さて、年が明け、1月22日に東京でアフガニスタン復興支援会議が開かれました。中心となった緒方貞子日本政府代表とアフガン暫定行政機構のカルザイ議長の見事な英語のスピーチと議事進行により、会議は大成功に終わりました。その裏には英語による様々な根回しや話し合いがあったと思われますが、正に「英語は国を助け、自らも助ける最大の武器なり」と感じました。 もちろん、オーラル・コミュニケーションTの英語は、このような高度なレベルではありません。我々がめざすのは、日常生活で最小限必要とされることがらについて英語で意志が通じることなのです。たとえば、初対面や日常の挨拶ができ、道案内ができ、買い物は必要な物が買え、天気や趣味・旅行などの普通の話題にも参加できる会話の基本レベルをめざしています。これらはいずれも指導要領の目的に添っており、これこそ国民がめざすレベルの英語と言えるのではないでしょうか。この基本ができてこそ、最終的には世界で活躍するのに必要な能力を身に付けることが可能になるのです。 (2) 理解でき楽しく学べる英語 このような条件を満たすには、伝統的な「教師が話し、生徒は聞く」の縦の関係だけでなく、生徒対生徒の横の関係も含んだ指導法が考えられます。たとえば、ゲーム的要素のある実践的なペア活動やグループ活動などを用いた指導法は最もふさわしいと言えるでしょう。 (3) 教える英語から自ら学ぶ英語 このような指導法は現在ではもう見受けられないと思いますが、これからの英語教育は、教師が全て教え込むのではなく、生徒が自ら学べるようなシステム、つまりある程度教えたら自助努力する教育システムが好ましいでしょう。それに加えて、生徒の自己学習をサポートする効果的な方法として、コンピュータを使った様々な学習支援システムの研究が進められ、実現しつつあります。したがって教師の役割も英語の知識を教えることから、学習者の潜在的能力を引き出すアドバイザー的な役割も必要になってくると思われます。 (4) 積極的態度を育てる英語 しかし、このような積極的な態度をとるのは、日本人にとってなかなか難しいようです。たとえば、かつての国際会議における日本人は、3つのS、即ち、Sleep, Smile, Silence の態度をとることでよく知られていました。Sleep は寝ていて相手の話を聞いていないこと、Smile は相手の言っていることが理解できず微笑みでごまかしていること、Silence は何も発言しないことで、いずれも積極的態度とは言えません。この理由として、日本は欧米のようにはっきりと物を言ったり、自己を主張することを好まない文化があり、他人より目立つことを恐れ、発言することに遠慮があります。わからないときでも「察」することが良しとされてきました。長年このような「遠慮と察しの文化」で育ってきたので、積極的な態度を取るにはかなりの勇気が必要なのです。つまり、いくら英会話の知識を持っていても、積極的に「話そう」「聞こう」「答えよう」という気持ちがなければコミュニケーションは成り立ちません。 そこで、この積極的態度を育てる方法として最も期待されているのがアクティビティ中心の指導法です。たとえば、基本表現を学んだ後で気軽に生徒同士でペアやグループを組み、楽しみながら練習すれば恥ずかしさや遠慮が取れ、次第に積極的な態度が生まれるので効果的な指導法と言われています。 (5) 英語による授業 現在の日本では、教員の意識を含め、英語を使って授業する教科書や指導法などの環境が十分整ってはいませんが、これからは英語による授業の割合を増やして諸外国のように一般化する必要があると思われます。 |
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