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三省堂 英語ホーム > 高等学校英語 > 『三省堂高校英語教育』 > 2002年 春号 オーラル・コミュニケーションIがめざすもの(2)

三省堂高校英語教育 2002年春号
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■特集■ 新しい英語教育
オーラル・コミュニケーション・がめざすもの

拓殖大学
北出 亮(きたで りょう)

2.新しいオーラル教育のあり方
(1) 日常生活で最小限必要なことが話せる英語
 昨年9月のニューヨークでのテロ以後、米国の CNN テレビで毎日アフガン関連のニュースを見ていて感じたのは、戦争の悲惨さとともに、インタビューしたパキスタンの政府高官や普通の市民、反タリバンの軍人達が英語を自在に話していたことです。日本だったらどうであろうか、と考えてしまいました。

 さて、年が明け、1月22日に東京でアフガニスタン復興支援会議が開かれました。中心となった緒方貞子日本政府代表とアフガン暫定行政機構のカルザイ議長の見事な英語のスピーチと議事進行により、会議は大成功に終わりました。その裏には英語による様々な根回しや話し合いがあったと思われますが、正に「英語は国を助け、自らも助ける最大の武器なり」と感じました。

 もちろん、オーラル・コミュニケーションTの英語は、このような高度なレベルではありません。我々がめざすのは、日常生活で最小限必要とされることがらについて英語で意志が通じることなのです。たとえば、初対面や日常の挨拶ができ、道案内ができ、買い物は必要な物が買え、天気や趣味・旅行などの普通の話題にも参加できる会話の基本レベルをめざしています。これらはいずれも指導要領の目的に添っており、これこそ国民がめざすレベルの英語と言えるのではないでしょうか。この基本ができてこそ、最終的には世界で活躍するのに必要な能力を身に付けることが可能になるのです。

(2) 理解でき楽しく学べる英語
 勉強で最も効果が上がるのは、内容が理解できて楽しく学べることです。内容がわからずミスを指摘されたり、叱られたりしたのでは楽しくありません。理解できるためには、まず、その内容と指導法が平易でなくてはなりません。 また、やさしいだけでは生徒がすぐに飽きてしまうので、ゆっくりと難易度を上げながら、ゲーム感覚で学ばせることも必要です。そして最も大切なことは、常に生徒に自信を持たせることなのです。元々英語は外国語なので、英語が苦手な生徒は英単語1つわからないだけで不安になり、自信を失いがちになるからです。したがって、やさしくてわかりやすく、楽しく自信が持てる指導法が望まれます。

 このような条件を満たすには、伝統的な「教師が話し、生徒は聞く」の縦の関係だけでなく、生徒対生徒の横の関係も含んだ指導法が考えられます。たとえば、ゲーム的要素のある実践的なペア活動やグループ活動などを用いた指導法は最もふさわしいと言えるでしょう。

(3) 教える英語から自ら学ぶ英語
 昔教わった英会話に、英国人の厳格な教師がいて、生徒1人ずつ順番に一言一句正確にリピートさせ、間違えたら徹底的に直し、質問に答えられないと正解するまで先に進ませない授業を受けましたが、クラス全員が緊張と恐ろしさでピリピリしていました。

 このような指導法は現在ではもう見受けられないと思いますが、これからの英語教育は、教師が全て教え込むのではなく、生徒が自ら学べるようなシステム、つまりある程度教えたら自助努力する教育システムが好ましいでしょう。それに加えて、生徒の自己学習をサポートする効果的な方法として、コンピュータを使った様々な学習支援システムの研究が進められ、実現しつつあります。したがって教師の役割も英語の知識を教えることから、学習者の潜在的能力を引き出すアドバイザー的な役割も必要になってくると思われます。

(4) 積極的態度を育てる英語
 指導要領は、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」ことをオーラルの目標としています。積極的とは、相手の話すことを理解しようとすることであり、自分が話したいことを伝えようとする姿勢を意味します。また、質問されたら素早く答えたり、行動したりなどの何らかの適切な反応をすることを意味します。

 しかし、このような積極的な態度をとるのは、日本人にとってなかなか難しいようです。たとえば、かつての国際会議における日本人は、3つのS、即ち、Sleep, Smile, Silence の態度をとることでよく知られていました。Sleep は寝ていて相手の話を聞いていないこと、Smile は相手の言っていることが理解できず微笑みでごまかしていること、Silence は何も発言しないことで、いずれも積極的態度とは言えません。この理由として、日本は欧米のようにはっきりと物を言ったり、自己を主張することを好まない文化があり、他人より目立つことを恐れ、発言することに遠慮があります。わからないときでも「察」することが良しとされてきました。長年このような「遠慮と察しの文化」で育ってきたので、積極的な態度を取るにはかなりの勇気が必要なのです。つまり、いくら英会話の知識を持っていても、積極的に「話そう」「聞こう」「答えよう」という気持ちがなければコミュニケーションは成り立ちません。

 そこで、この積極的態度を育てる方法として最も期待されているのがアクティビティ中心の指導法です。たとえば、基本表現を学んだ後で気軽に生徒同士でペアやグループを組み、楽しみながら練習すれば恥ずかしさや遠慮が取れ、次第に積極的な態度が生まれるので効果的な指導法と言われています。

(5) 英語による授業
 序文で述べた「私的懇談会」の報告案では、日本人に必要とされる英語力を養う方法として、「英語を使用した英語の授業を一般化すべきである」と提言しています。文法や訳読の授業では指導が難しいと思われますが、オーラル・コミュニケーションのような言語活動中心の授業は英語使用に適しています。それは、指示表現、説明表現は英語でパターン化できるからです。教師の方も不慣れなので最初から全て英語で行う必要はありません。30%、50%、80%、100% と年間を通して、英語使用率を上げていけばよいでしょう。教師が英語を自ら使うことにより英語を聞く・話す環境が生まれ、生徒も自然に話すことになるのです。

 現在の日本では、教員の意識を含め、英語を使って授業する教科書や指導法などの環境が十分整ってはいませんが、これからは英語による授業の割合を増やして諸外国のように一般化する必要があると思われます。

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3.新教科書における「新しい英語教育」の展開と紹介  4.まとめ
1.今、英語教育に何が求められているのか


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