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三省堂高校英語教育 2002年春号
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■特集■ 新しい英語教育
学習者の力に応じて…

玉川大学
池田 智(いけだ さとる)

●トランスナショナリティ、そして第二言語運用「潜在能力」の育成
 友人家族の例だけで判断することは危険だが、第二言語を運用言語として習得する場合、必然性はもとより学習者の性格がどうも大切らしい。また、それだけではなく、民族性としての「トランスナショナリティ」も関係しているかもしれない。

 「トランスナショナリティ」とは「国境や民族を越えて生きていく力」のことである。「トランスナショナリティ」と関係すると思われる英語教育の記事が、年明け三日の『朝日新聞』朝刊の一面に掲載された。

 「豊かさを勝ち取るには英語だ」、「英語にこだわるのは中国の国力を高めたいからです。英語を身につけ、巨大なアメリカ市場を、一時期の日本製品のように中国製品で埋め尽くすのです」と中国では一億を越す人々が英語を学んでいる背景が紹介されている。また、英語専門学校の副校長が「英語はパワフルな道具です。英語が使えなければアメリカとリンクできない。グローバル経済の果実を、もぎとれないのです」と語っている。同じ欄に、幼児から英語に親しませるために「2年以上英米語圏で暮らし、英語を母語なみに話せる人をシッターとして派遣する」ベビーシッター業が韓国の首都ソウルにあることも紹介されている。こうした英語教育熱は海外への進出を考えてのことである。

 日本でも国際社会の一員として胸を張って進出しなければならないと言われた1970年代に英語教育論争が盛んに行われた。なかでも「平泉・渡部論争」が世間の注目を浴びた。当時、国際文化交流特別委員会の副委員長にあった平泉 渉氏が「英語は受験用の『必要悪』で、生徒の学習意欲がなくなる。高等学校の外国語学習は志望者に対してのみ行うべきで、英語の実際的能力を持つべき国民は、およそ5%でよい」という趣旨の考えを披瀝した。これに対し、現上智大学名誉教授の渡部昇一氏が「学校教育における英語教育は、英語運用の潜在能力を養うべきで、顕在的側面は学校教育とは切り離して行うべきである」との考えを示した。

 それからほぼ30年たった現在、平泉氏の考えとは裏腹に外国語科が必修科目となったが、現在の日本に中国や韓国と同じような経済的な面での必然性はもとより、「華僑」や「韓僑」などに代表されるような海外進出の気性があるだろうか? 中国や韓国の人たちには、どうも「トランスナショナリティ」が備わっているように思える。こうした民族には自らが向かう土地のことばを習得しようとするパワーが備わっている。「ピジン」という形態の言語が生まれたのも、その証の一つである。「ピジン」を一つの言語体系として受け入れる度量がなければ「トランスナショナリティ」は生まれてこない。とすれば、日本人に「トランスナショナリティ」を期待することは無理だろう。それだけに、渡部氏が言う英語運用の「潜在能力」育成の重要性がわかる気がする。氏もかつてドイツに留学されたようだが、私も39歳のときに留学した。運用言語としての英語を現地の人のようには習得できなかったが、それまで積み上げていた英語力でなんとか2年数か月の留学生活を無事終えることができたし、その後、ほとんど毎年アメリカに出かけるが不都合なことはない。「潜在能力」の一部が必然性によって「顕在能力」化されたのだと思っている。

●新しい英語教育
 個人の資質や性格を無視して、生徒全員が英語を必修科目として履修しなければならなず、しかも口頭で使う必然性のない環境で学習しなければならないとするなら、渡部氏が言う「英語運用の潜在能力」を、ある条件が与えられたらいつでも「顕在化」できるようにすることが新しい英語教育と言えるのではないだろうか?

 新学習指導要領においては「実践的コミュニケーション能力の育成」が全面に謳われている。これまでの学習指導要領では、「聞く」「話す」「読む」「書く」という4技能領域がそれぞれ分けた示し方がされていたが、「実践的コミュニケーション能力の育成」を重視するために、これが改められ4つの領域相互の有機的な関連を図ったコミュニケーション活動として示された。また、4技能を有機的に関連させるために、「言語の使用場面」と「言語の働き」とが具体的に例示されたことも大きな変更点である。私が関わっているテキストでも、この2つが各レッスンに明示され、言語材料にも authenticity を持たせている。これはスキル(skill)、つまり平泉氏がほぼ30年前に指摘した「英語の実際的能力」、あるいは渡部氏が言う「英語運用能力の顕在的側面」を育成することである。これこそ、新しい世紀に入った英語教育に求められていることであろう。

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●英語力が不十分な生徒のための教科書編集
●日本に長年暮らしたアメリカ人家族
  ●話しことばとしての外国語習得への必然性と性格


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