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三省堂高校英語教育 2002年春号
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■特集■ 新しい英語教育
今から始める英語教育改革への一歩

富山大学教育学部教授(元文部省教科調査官)
新里眞男(にいさと まさお)

5.継続的な前進のために
 以上の一歩を出すことができたら、あとは質と量でコミュニケーション活動を増やすことが考えられる。大切なのはあまりコミュニケーション活動の定義を細かく分けないことである。言葉を使う場面と言葉の機能を考えて、なるべく多様で豊かな活動を行おうという意識を持つことが大切なのである。最近では「タスク活動」とか「タスク」というような用語が使われ、コミュニケーション活動を様々なレベルで分けて工夫しようとしているが、それらにあまりとらわれることはない。また、かつては教室で行われる活動は教室外の活動をシミュレーションするしかないということで、全て擬似的コミュニケーション活動にしかならないといわれたが、それも当たらない。授業でも直接授業内容に関係ない場面で英語を使ったり(つまり、いわゆる「教室英語」という発想は古い。)、HR の時間に学校生活に関するアナウンスメントを英語でやったり(ALT が常駐しているところではよく行われている)、英語新聞を作って教室に貼ったり、ホームページを作成してインターネット上にアップしたり、海外の姉妹校とメールの交換をしたりするというような実際の英語使用の場面を設けることを積極的に行うということである。

6.文法はどうするのかという疑問
 ここまで述べてくると、そんなことをやっていて文法の能力が身に付くのかと言い出す人がいよう。「文法の能力」で何を意味するかが問題だが、単なる文法用語を知っていることや機械的な書き換えができるというレベルでなく、英文法の規則を使って正しい英文を生み出すことができる、それも、かなりの fluency で行うことができるというようなことを意味するのであれば、大切な能力であると言える。

 実は、新学習指導要領では文法をそのようなもの、つまり、コミュニケーション活動を行うために必要なものと考えている。だから、科目によっては「指導上の配慮事項」として、「コミュニケーションに必要となる基本的な文型や文法事項などを理解し、実際に活用する」ことを求めているのである。

 先生方は実践的コミュニケーション能力を育成するということと文法指導とは相容れないと考えているようだが、新学習指導要領の考え方はそうではない。むしろバランスを取ることの大切さを述べながら、まだまだ文法事項を中心とする言語材料の知識や習熟に重点が置かれがちなことを考慮し、さらに、究極的にはメッセージの授受ができなければ、言語材料の知識を増やしたり習熟したりする意味がないこともあって、コミュニケーション活動を重視する姿勢を示しているのである。文型文法事項は教えなければならない。それらは大切なものである。しかし、なぜ大切かというと、それは、コミュニケーション能力の一部として必要だからである。この関係を理解していただきたい。だからこそ、先の学習指導要領の引用にあるように、「コミュニケーション活動に必要となる基本的な文型や文法事項」という言い方をしているのである。

 個人的にも、英語を30年以上勉強してきて言えることは、やはり、実際に英語を使って自分の言いたいことを言ってみる、書いてみる、人とコミュニケーションをしてみるという過程を経ることで、英語の能力が身に付いていくということである。ホンの数年で大学受験に対応した能力を付ける必要がある教育と、30年間ずっと英語の勉強を続ける人間とでは、勉強の仕方は違うという意見もあろう。しかし、授業で何度もドリルを繰り返し、暗記をしようと思っても覚えられないことが、自分で実際に1回でも使ってみることで覚えてしまうということは、高校生でも経験することだろう。確かに、それでも忘れてしまうのが人間としての限界だが、それに負けないほど豊かな英語の使用場面をたっぷり用意することが求められているのではないだろうか。一回のドリルやタスク活動で英語が定着するというのは、非現実的である。コミュニケーションそのものの楽しさを味わいながら、一歩ずつ熟達していくというのが妥当なところだと思う。

 新学習指導要領による指導が始まるまでにまだ1年ある。それまでは今のままで良いと考えないでいただきたい。上で述べたような「一歩」でもかなり重荷に感じる先生方は、半歩でも良いから、前へ進み出してはいかがだろう。一緒にがんばっていきたい。 

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3.どちらに向かえばよいのか 4.はじめの一歩はどう踏み出すのか
1.そろそろ改革の一歩を 2.とりあえず正直に


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