高等学校の新しい学習指導要領では,選択教科「英語表現」に「与えられた話題について,即興で話す。また,聞き手や目的に応じて簡潔に話す。」とある。中学校から高校への接続を考える際に,中学校においても高校で育成する表現力の基礎を養っていくことを念頭においておくことが必要だ。 書いて発表するスピーチから即興で表現するスピーチへ中学校におけるスピーチは,教科書の中でこれまでも取り扱われてきた。例えば,“My Dream”, “My Future Job”というテーマで自分の将来なりたい職業について発表したり,日本文化を紹介するために “How to make ohashi”など,修学旅行で体験した箸づくりを伝えるスピーチ等である。 こうしたスピーチは即興で聞き手に伝えるのではなく,まずは原稿を書くことから始める。生徒は,教科書で紹介されている文や教師に与えられたモデル文からスピーチの書き方を学んで,Introduction, Body, Conclusionの論理的文章構成を使ったり,時系列に従って文章を書く。その後,ペアワークやグループワークを通して文章を推敲し,できるだけ間違いのない文章にしていく。そして,暗唱してクラスメートの前で発表する。しっかりしたスピーチ指導をする場合は,発表後の評価まで含めると少なくとも10時間は必要である。
しかし,用意した文章を暗記してスピーチをするだけでは,将来グローバルに活躍する日本人を創り出すことにつながらないだろう。即興で表現するスピーチへの移行が必要である。 即興で表現させるための指導人前で即興で話すということは,ある程度の訓練(ここではあえてこの言葉を使いたい)が必要である。しかも最初から長い文を表現させることは難しい。中学校1年生のある程度言語材料を獲得したあたりから,論理的思考を意識しながら3文くらいの文を発表させる指導を継続的に行うことが必要であろう。NEW CROWNではいろいろな場面で「話すこと」に関わる練習問題が与えられている。まずは,その1つ1つにしっかり取り組ませることが可能である。
また,学習のまとめとして,ピクチャーカードを使って,学習した内容について発表させる機会を多く与えたい。その際,キーワードになる内容語を与えること,また,話し始めから話の終わりまで等の表現を生徒に示し,習熟させておくとよい。例えば中学校3年生では,以下のような表現が考えられる。
こうした表現を自由に使うことができるようにしておくことが,論理的文章構成を育成することにつながる。トピック・センテンスをメッセージとし,それを支える理由をfirst, …, second, …, finally,
…などを使って表現,その中で接続詞を使って,さらに豊かに自分の考えを聞き手に伝えることができるようになる。また,教師や友だちから,What do you think about this?
の問いかけを与え続けることによって,自分の考えをまとめたり,表現したりすることを日常化させ,「スピーチする」に加えて,「即興で話す」という中学校でのスピーキング活動の出口を創り出すことができるのではないかと考える。
津田 雅子 (つだ まさこ)
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