こんにちは! 私の担当では音読に焦点をあて,ともすればワンパターンに陥りがちな活動から抜け出すためのヒントを紹介します。以下,「音声と意味とのつながり」を意識させる活動例から,中学生が楽しく取り組めるものを2つほど見てみましょう。 One-word音読 音読の有効性は昔から伝えられ,教室や自宅での学習法として奨励されています。でも,生徒の多くが英文に込められた意味を反映せずに,単に文字を音声化しているのではないかと思わされることが多々あります。音読が「儀式・形式的」では,それこそ意味がありません。 音声と意味とのつながりを意識させるための万人に効く手法などあるはずがないと思っていましたが,ところがどっこい,シンプルで,なおかつインパクトをもたらすやり方があるのです。そのひとつが「One-word音読」。まずは例1を音読してください。 (例1) 授業でこれを展開する場合,いろいろな手順があると思いますが,私は学習の早い段階で,次のように投げ込みます。 1. 悪い見本音読提示 1では,level tone(平板調)で,それも「日本語なまり」で,単調に読んでみて聞かせます(1人2役,ALTがいる時には手伝ってもらって)。2ではとりあえずのtry。3の段階では,「何か足りないね?」「面白くないね」などと,感想を述べます。そこから「そうだね。音の上げ下げのことは何ていう? Intonation! 音が上がったり下がったり,強くなったり弱くなったりするだけで,僕たちは何かをつかむね」「それじゃ,セリフの後に矢印で上げ下げを書いてみよう」などと注意喚起し,本文に自由に記号を書き込ませます。4では意味を反映したモデルを提示します。そして5で再度try! もう一度やらせると,2の時とは大違い! 意味が音声で具現化されます。 この段階で終わってもいいのですが,さらにつかませるために7では適当な文脈などを設定し,8で「なりきり音読」をさせます。「HeとSheじゃ面白くないから,誰かをあてはめよう! 2人は新婚。場所は2人の新居。パーティーに行く前にbabysitterの問題発生。夫は2階,新妻は1階だよ。そういう感じで山田くん,君だったらどんな声を使う?(ここで必ずおどけてやってくれる山田くん。山田くんみたいな生徒はどこにでもいますね!)さあ,みんなでやってみよう!」と指示。ここまで来ると教室はもうお祭り騒ぎです。みんな完全に音読で遊んでいます。 もう一例。手順は省きますが,ここでは「森の中でキノコ狩りをしている敏感なSidとおとぼけJoeがクマさんに出会った!」という文脈を与えます。 (例2) 生徒は早速,声の表情をあてはめはじめます。「ささやき声」「びびり声」「叫び声」などが登場します。そしてセリフを意識して音読するにつれて,生徒は自然と意味を音声で表現することの大切さに気づいていきます。 One-word音読は特殊な手法ではありません。教科書のレッスンをもとに,簡単に作成できます。それこそ「Yes.
No. Yes. No.」だけでもいけます。さらに,生徒に作成させて使ってみるという手もあります。そういえば,例2の最後に,Joe: Sid?
Sid? Sid? というセリフを加えたのも生徒たちでした(ちょっと怖いendingですが…)。 ト書き音読 2つ目のお奨めが「ト書き音読」です。One-word音読と同じく,生徒が持つinnate capabilitiesが頼りです。ここでは台本・脚本のト書きの発想を借用します。ト書きには,作者や脚本家が,俳優,声優などに使ってほしい「声の表情」が記載されています。 (例3) 例3からわかるように,直接話法に顕著で,声を修飾する動詞,形容詞,副詞など(vocal qualifier: VQと呼ばれます)が引用符内の声を示してくれます。生徒にはまずこうしたVQをつかませ,「ささやくように」とか「半狂乱に叫んで」などと書き込みを入れさせます。また明示的なVQがない場合,文脈,状況,人間関係など,声に影響を与えそうな要因を次のような手順で考えさせ,探させるのです。 1. 発問「どんな声になるかな? ペアで考えて,本文に書き込んでみよう」
上記の手順で,ト書き音読活動に入ります。少し国語の授業を彷彿させるところもあるかもしれませんが,VQ発見のための話し合いだけでも,音声への意識は高まるようです(蛇足ですが,コミュニケーション志向になった90年代の教科書からは,本文のVQが極端に少なくなった気がしています)。そして,慣れて,音声への意識がしっかりつけば,ト書き音読からは卒業です。 まとめ 2つの活動しか紹介できませんでしたが,いずれもヒトのDNAに組み込まれている感情を理解し,表出できる能力に関係しているのではと考えています。そしてそういう力を英語でも発揮できるということこそ,実践的コミュニケーション能力に不可欠ではないでしょうか。ぜひお試しください! 夏休み明けには「生徒の声が変わった!」というみなさんの声をぜひとも聞きたいものです。それでは,“Catch you later,”said the author softly.
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