前回のコラムでは,成績が中位の生徒の指導に関してお話ししました。その後,具体的にどんな指導が適切かという問い合わせがいくつか寄せられました。先生方はそれぞれ生徒の実態に合わせて工夫されて授業を進めていらっしゃると思いますが,小生の経験談を聞かせてほしいというご要望がありましたので,少しお話ししたいと思います。 前回のコラムでは,成績が中位の生徒は,おおむね次のような3グループに分けられるというお話をしました。 (1)努力を重ねまじめに勉強し,中位にいる生徒 そして,様々な個性をもった生徒がいる中で個々に英語を勉強する動機を持ってもらうことが大事だと言いました。 私もいろいろな生徒を担任してきましたが,今回お話しするA君は(3)に属する生徒でした。私は,夏休み前の個人面談で,休み中の勉強計画などについて彼とじっくり話し合いました。また,そのことを通知表にも書き,保護者の協力もお願いしました。しかしながら,夏休みはほとんど勉強をしなかったようです(進学塾の夏期講習に参加したようですが,参加しただけで予習も復習もしなかったようです。一方,母親は,息子が毎日せっせと通うのでしっかり勉強していると思い込んでいたようでした)。さて2学期。相変わらず中位をうろうろしているうちに三者面談を迎えました。母親は,息子の想定外の気力のなさに,ついに涙を流したのです。母親の涙を横目で見たA君は相当ショックを受けました。それからというもの,A君は期末テストに向けて授業を受ける態度も変わり,死にもの狂いで勉強したのです。私も彼に「勉強法」を授けるという形でサポートしました。 私が課した勉強法は,複雑なものではなく「期末テストの範囲の本文を,本課はもちろん言語活動のものまで,もれなく暗記せよ」というものでした。A君本人は,最初はできないと言いましたが,中間テストの範囲の本文も暗記させました。言語材料のつながりを重視したからです。平成18年度版NEW CROWN 3 の教科書で言えば,Lesson 5 "Places to Go, Things to Do"(文法項目:後置修飾)とLesson 6 "I Have a Dream"(文法項目:関係代名詞)およびDO IT TALKの本文を暗記させたわけです。43ページから60ページまでの全本文です。その範囲の本文を「読めて」「書ける」まで勉強しなさいと言ったわけです。その暗記も,しどろもどろのうろ覚えでなく,立て板に水のごとく暗誦できるまで完璧を期したのです。暗記は,生徒に余計な負担をかけるし無味乾燥で意味がないと言う方もいらっしゃるようです。しかしながら,たとえNEW CROWN 3 のLesson 5やLesson 6のようにかなり長い本文でも,題材がしっかりしたものであれば,生徒は内容に惹かれて覚えるものです。そして,後置修飾や関係代名詞などについては,理屈抜きにして英文そのものを覚えていく過程が大切だと思っています。それらの文法説明は,英文を覚えてすらすら言えるようになってから少しだけ加えれば十分なのです。文法の説明を長々とすることで,かえって生徒に余計な負担を課すことにもなりかねません。 ところで,A君にとっては,それまでの説教や指導は馬の耳に念仏だったようですが,三者面談での母親の涙と担任の迫力(?)ある説教で眼が覚めたようで,期末テストの成績は見違えるほどに上昇しました。そして,英語が起爆剤になって他教科の成績も徐々に上がっていきました。 私は,どの生徒にも「伸びしろ」があると思っています。モチベーションがなかったり,やる気になったとしても,勉強の仕方がわからなかったりなどの理由で成績が伸びないこともあると思います。教師は,生徒にモチベーションを与えられるように工夫し,やる気が出ればすかさずその生徒の様子に気付き,勉強法を授けるなどの手当てをすることも大切だと思います。先生方はどうお考えでしょうか。 後関 正明 (ごせき まさあき) 先生
東京都墨田区立中学校で教諭,校長を長年務める。その後,東京都滝野川女子学園中・高校で教鞭をとる。現在,NPO法人「ILEC言語教育文化研究所」常務理事。2003年より國學院大学で教職課程履修の学生を教えている。 ご質問がございましたらニュークラウン指導相談ダイヤル(03-3230-9235 受付時間 月・火・木曜日 10:00 〜 16:00)へどうぞ。 メールの場合は「問い合わせフォーム」へ |
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